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医療介護CBニュース 6月11日(土)18時0分配信
東日本大震災の発生から6月11日で3か月を迎えた。被災地では、がれきの撤去やライフラインの復旧が進むに連れ、地域医療の提供体制も復興しつつある。しかし、すべての被災地の医療が、順調に再生しているわけではない。甚大な被害を被った宮城県沿岸部では、南部と北部とで、医療提供体制の復興の格差が際立っている。
■医療救護26チーム、県北沿岸部で活動継続
東日本大震災発生後、宮城県内の被災地には日本赤十字などから最大で120余りの医療救護チームが派遣され、救護所で活動したり、避難所で巡回診察したりしてきた。医療救護チームは、地域の医療提供体制が復興し始めた段階で撤収するのが普通だ。実際、宮城県内で活動するチームは6日現在、26まで減少した。
ところが、県医療整備課によると、これら26チームはすべて、石巻市や気仙沼市など県北部の沿岸部で活動している。その背景を同課の遠藤圭主幹は次のように説明する。
「同じ沿岸部でも、名取市や岩沼市など南部には、津波の被害を受けなかった地域に多くの病院や診療所があり、地域医療の提供体制を復興する上で重要な“足がかり”となりました。一方、石巻市より北の地域には病院や診療所がもともと少なかった上、ほとんどが津波によって大きな被害を受けました。その結果、北部では医療提供体制の復興が遅れているのです」
石巻赤十字病院の医師で県災害医療コーディネーターの石井正氏によると、県北沿岸部には、常駐する医師が震災の影響でいなくなってしまった地域すらあるという。
「石巻市雄勝地区には、石巻市立雄勝病院と民間診療所がありましたが、いずれも津波で壊滅。再開のめどは立っていません。隣接する北上地区では医師1人が震災後も活動を続けていましたが、4月下旬に過労で倒れてしまった」
雄勝地区や北上地区の医療体制は、医療救護チームの巡回によって維持されているのが現状という。医療救護チームによる支援がなければ、8000人ほどの人口を抱える雄勝・北上地区は、ほぼ完全な無医地区になってしまうのだ。
「そのためこれらの地区では、震災発生から3か月が過ぎた今でも、医療救護チームに頼らざるを得ないのです」(遠藤主幹)
そうはいっても、医療救護チームの支援にいつまでも頼り続けるわけにはいかない。医療救護チームの医師らも、それぞれが地元の医療機関を抱えているからだ。なにより地域住民の生活を安定させるためにも、一刻も早く地域医療の提供体制を回復させなければならない。
■「仮設診療所の設置を」高まる声、課題は医師の確保
県内の関係者の間には、「石巻市などでは、地域医療の提供体制が復興のめどが立つまでの間、仮設診療所を設置して地域の医療ニーズに応えるべきだ」との声が上がっている。ただ、仮設診療所を設置するにしてにも、課題は少なくない。中でも最大のハードルが、診療所で働く医師の確保だ。
県では、仮設診療所で働く医師について、「津波で診療所を失った方など、地元の医師にお願いしたいと考えています。場合によっては県外からの確保にも視野を広げなければならないかもしれませんが、本格的な地域医療の復興に繋げるためにも、できるだけ地元の医療関係者にお願いしたいところです」(遠藤主幹)としている。
とはいえ、仮設診療所での勤務に前向きな医師は決して多くないようだ。県医師会が6月6日に実施した聞き取り調査によれば、県沿岸部の郡市医師会(仙台市医師会を除く)に所属し、津波と地震で病院や診療所に大きな被害を受けた137人のうち、「仮設診療所や新規の診療所で働きたい」と考える医師は3人にとどまった。
それでも、県医師会の佐藤和宏常任理事は「仮設診療所での勤務がどのようなものかが明確になれば、地元の仮設で勤務したいと考える医師ももっと増えるはず。多くの医師は、今まで活動してきた地域で働きたいと考えていますから」と期待している。
仮にそうだとしても、課題はなお残る。石巻市雄勝地区のように、地元の医師がほとんどいなくなってしまった場所もあるからだ。
石巻市医師会の新妻博事務局長は、こうした地域の仮設診療所については、思い切って県外などからも人材を募るべきだと主張する。
「雄勝に仮設診療所を置くとなると、おそらくわれわれにも派遣が打診されるでしょうが、対応するのはなかなか難しい。雄勝の医療再生に協力したいという気持ちはありますが、まずは足元の医療の復興に力を注がねばなりません。そもそも、診療所を津波で失った人に、石巻よりも大きな津波で破壊された雄勝に出向いてくれとは、とても言えません。医師もまた、津波の被災者なのですから」
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