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河北新報 1月29日(日)6時10分配信
メカジキやメバチマグロなどを水揚げする宮城県気仙沼市の近海マグロはえ縄船の船主らが新年度、全国でも例のない「集団操業」に挑戦する。13隻を4グループに分け、出港から水揚げまでを一体的に行う。これまで競争相手だった船主らがタッグを組むことで経営の立て直しを図り、東日本大震災で打撃を受けた地元水産業の復興を目指す。
計画によると、気仙沼港所属の近海マグロはえ縄船13隻が3、4隻ずつグループを組み、船団ごとに出港。各グループ長の指示を受けながら、漁場探索や水揚げを一体的に行う。管理部門は市内に置き、衛星通信で各船と操業位置や漁獲状況などの情報を共有する。
1航海の操業日数は、従来の約40日より4日ほど短くする。鮮度のいい魚を水揚げし、餌などの積み荷の軽量化で燃料費削減も図る。操業経費などを補助する国の「がんばる漁業復興支援事業」を活用する。2014年度までの3年間でノウハウを蓄積し、15年度の本格実施につなげる。
13隻(船主12人)は水揚げ高をめぐり、しのぎを削ってきたライバル同士。他船に先んじて好漁場を探し、漁獲量を競い合ってきた。
しかし、1989年に65隻あった近海マグロはえ縄船は、資源の減少や燃油の高騰などで、20年後の2009年には20隻にまで減少した。さらに東日本大震災で2隻が被災し、現在は15隻となっている。
震災では魚市場や周辺の加工場も壊滅的な被害を受け、多くの船が漁に出られずに係留されている。「これ以上競争を続ければ体力が持たず、多くの船が共倒れになるだけだ」という危機感が、13隻のグループ化へ背中を押した。残る2隻は別の補助事業を受けるため加わらない。
10年ほど前に約30人の日本人船員を抱えていた「新栄水産」(気仙沼市)は、減船により半減した。鈴木一朗社長は「業界は展望が描けず、衰退に拍車が掛かっている。まずは集団操業で経営を立て直し、後継者を育成できる漁船漁業を確立したい」と語る。
水産物の安定確保は、気仙沼市魚市場にとっても生命線。運営する気仙沼漁協の熊谷浩幸魚市場部長は「140億円あった近海マグロはえ縄漁の水揚げ額は近年、50億円台に落ち込んでいる。産地としてはギリギリの数字で、これ以上減らさないための起爆剤になってほしい」と歓迎する。
グループ化の実証事業を担う気仙沼遠洋漁協の斎藤徹夫組合長は「一匹おおかみ的なやり方は限界に来ている。手を携えて漁船の減少を食い止め、震災で傷付いた業界の再生につなげたい」と話している。
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