漁業

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毎日新聞 5月2日(水)11時55分配信
 食品の放射性セシウムの基準値が1キロ当たり500ベクレルから同100ベクレルになってから1日で1カ月−−。基準の厳格化によって、県沖での漁の水揚げを自粛するケースが相次いでいる。復興に向けて歩み始めた漁業者にとって、東京電力福島第1原発事故による放射性物質の影響がじわじわ広がっていることが、新基準値でより鮮明になった。【宇多川はるか、須藤唯哉】
 「津波はひどかったが、今年の方が2倍も3倍も苦しい。放射能問題さえ無ければ」
 福島原発から約100キロの牡鹿半島・小渕浜(石巻市)。4月末、高さ数メートルのがれきの山が残る浜の作業場で、漁師の須田賢一さん(59)がうめいた。「春告げ魚」とも呼ばれるメロウド(イカナゴ)はいまが最盛期だ。1月の検査では100ベクレルは下回ったが、放射能汚染を懸念し、県漁協所属の漁師たちは出漁の自粛を選んだ。
 須田さんは津波で自宅が全壊、漁場も港も大被害を受けながら、漁を続けようと奔走してきただけに暗たんとした思いだ。「いつまで(自粛が)続くのか。他の魚種も自粛せざるをえなくなるのでは……」。現在はパートでメカブの仕分け作業などをして生活費を工面している。「ここで漁を続けたい。考えずに働くしかない」
 ◇林産物でも
 新基準値に合わせ、県は昨年まで週20検体だった水産物の放射能検査の対象を3月から週100検体に増やした。その結果、海産物では3月末から4月にかけて、最高値でスズキ360ベクレル▽マダラ130ベクレル▽ヒガンフグ146ベクレル▽ヒラメ400ベクレル−−を検出した計4種の水揚げが海域を指定して自粛された。
 県内の各魚市場は、検査機器を増やして検査対象を広げ、基準値を超える魚の流通阻止を図っている。それでも「『宮城の魚』というだけで敬遠されるケースが特に西日本で多い」(市場関係者)のが現状だという。
 石巻魚市場の須能邦雄社長は「自粛や検査など誠実に対応していると消費者に訴えるしかない」と語る。
 影響の広がりを受け、県漁協は4月、放射性物質が検出された海産物の買い取りなどの賠償を東電に要請。要請文では、昨年4月に東電が放射性物質で汚染された水約1万トンを海に放出したことを「暴挙だ」と指摘した。
 要請に対し東電は、「原発事故前の市場価格の8割前後」などの条件で賠償額を支払う方針。新基準値を上回っていないものの水揚げ自粛を余儀なくされているメロウド(イカナゴ)の賠償にも応じる姿勢を示している。
 海産物だけではない。林産物では、露地栽培の原木シイタケの新基準値超が相次ぎ、出荷自粛は県北部を含む15市町に及んだ。
 県食産業振興課は「とにかく検体点数を増やし、新基準値超が流通しないよう洗い出していくしかない」としている。
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 ■出荷自粛の農林水産物(1日現在)
<品目>   <地域>
スズキ    金華山以南
イワナ    大倉ダム堤より上流の大倉川、横川
ヤマメ    阿武隈川
ウグイ    阿武隈川
ヒガンフグ  仙台湾南部海域
ヒラメ    仙台湾南部海域
マダラ    仙台湾海域
原木ムキタケ 栗原市
原木シイタケ 白石市、角田市、丸森町、蔵王町、村田町、気仙沼市、南三陸町、栗原市、石巻市、大崎市、東松島市、登米市、仙台市、名取市、加美町
草ソテツ   栗原市、大崎市、加美町
タケノコ   丸森町、白石市

5月2日朝刊

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