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戦後の工業化の過程では重工業を中心にした工業地帯の集積が生まれ、その分散を進めるなかで新産業都市やテクノポリスなどの拠点都市として関連産業は著しく発展した。その産業集積には、企業のみならず、技術や人材を供給する大学、自治体の支援、そして便利で良好な生活空間などが一体となって相乗効果を発揮する地域社会の形成を目指していた。工業化が進むにつれて、人口の都市への集中が起こり、都市の消費を支える中心商店街など商業集積は大型店出店への反対運動の引きがねとなった。
日本は太平洋ベルト地帯から産業分散と、大都市と地方との格差が生じるのと同じにして、商店街と大型店との対立となった。しかし、産業構造が高度化し、生活スタイルや消費行動が変化するようになると、大型店と商店街の共存共栄という認識が高まってゆく。また、先端技術分野では異業種の企業が連携して、空間的に集積し、ネットワーク型の連携をとっている例がIT分野などにみられ、しばしば「産業クラスター」と呼ばれるようになった。
米国では、IT産業をめぐっては、いわゆるシリコンフィーバーと呼ばれ、ベンチャー企業の活発な活動が見られたが、早い技術革新にあわせて先陣争いを繰り広げる需給のミスマッチが起因となり、その結果、先発の優位性だけでなく後発の優位性にもメリットがあり、例えば、研究開発のコストを節約できるなどリスクを回避できるので市場に参入するチャンスが生まれる。また、国際化にともない技術革新のスピードにあわせるために、企業は応用研究に重点をおいて、基礎研究がおろそかになりやすい。このため、日本では企業は基礎研究を大学に求め、産学連携を強め、基礎研究と応用研究をうまく連携して製品化するプロセスもあるが、最新の技術で開発された製品が市場競争を通じて生き残ることが難しく技術の事業化をめぐって「ダーウィンの海」と呼ばれる現象が問題になっている。
企業は開発にともなうリスクは図りしれない。それがベンチャー企業であればなおさらである。死の谷やダーウィンの海の存在が指摘されている。
企業の設立にいたっては、会社法施行や証券市場の整備の観点からいえば、合同会社は社員が1名でもいれば成立してしまう規制緩和は、企業の開業率は高くなるが、はたして、企業の質は向上するのだろうか?さまざま課題があるなかで、例えば、企業融資にともなう資金の貸付けを猶予したぐらいでは企業の質を改善することにはならないだろう。合同会社は米国のLLCを参考に会社法による創設されたが、設立手続きが株式会社よりも簡素なため、創業やベンチャー企業などの活用に期待しているのだろうが、出資側のメインバンクは貸付け融資を猶予するなら、さらなる貸し渋りとなりうるし、ベンチャーなど中小には効果は期待できない。現在の中小の貸付けにともなう回収率は40%ほどで、そもそも、融資を受けられるのは、優良企業だけである。まだ、体力がある企業に猶予され恩恵を受けたとしても経済に与える影響は少ないと考える。
融資に関する別の見方をすれば、平成15年度税制改正により、上場株式等の譲渡益・配当に係る7%(住民税とあわせて10%)軽減税率、「証券優遇税制」が導入されていたが、同制度は「金持ち優遇」という批判があったこともあって、平成20年末をもって廃止された(なお、平成22年末まで経過措置が図られている)同制度の廃止により、株式市場への影響は大きい。IPOを目指す企業にとっては逆風といえる。
政策にともない合理化を図るのもわかる。株券の電子化など会社法や証券等の簡素化でカネの流れを循環させたいのなら、まずやらなければならないのは循環できる経済の構築ではないだろうか?上述のように、過去、3大都市圏への富と人口の集中は結局のところ失敗に終わっいる。また、1983年に法制化された半導体関連の先端技術産業の誘致と地域産業への先端技術の移転・新製品開発・地域企業の自立化を目指し、産学住が調和したテクノポリスづくりは国家財政の逼迫したことが起因となり失敗となった。繰り返すが、今回の革新にもいえることで、そのことが懸念材料とされている。財政基盤の脆弱が原因で政策が失敗に終わらぬよう危惧してゆかなければならない。何度もいうが、繰り返すことだけは避けて頂きたい。
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