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企業が設立される理由はさまざまであるが、会社法の施行や証券市場の整備によって創業やIPOが容易になったことが経済の活性化要因のひとつである。会社法により、最低資本制度が廃止され、株式会社は資本金1 円でも設立可能であり、取締役会設置会社を除き、1名で足りる。なお、取締役会は3名以上の取締役(のすべて)で構成されるため、取締役会設置会社では3名以上の取締役が必要となる。しかし、制度が整備されたとはいえ、創業した企業を発展させ、持続的成長を図ることは容易ではない。零細企業を脱してIPOが可能な企業への成長を目指す場合、創業してから安定成長の軌道に乗るまでに克服しなければならないいくつかの壁がある。
組織は、規模の拡大に伴い効率性を確保するために官僚制組織を選択するが、やがて官僚制の逆機能という障害に直面する。これを克服するためには組織構造の動態化を図る必要があり、組織の活性化を図っていくことで、さらなる存続と成長を実現してゆく。
言い換えれば、自律的に発展を続ける企業への脱皮には大きな壁が2つ存続する。創業から間もなく直面する壁は、企業が自立するためにキャッシュフロー・マネジメントに留意して自己資本比率を高めるとともに、資金調達先への依存度を調整する。また、創業時に支援を受けた投資家等から紹介を受けた得意先への依存を改めながら、新規顧客の開拓を活発に進める。これらを克服して従業員が増え、会社としての形態が整ってくると、熱気を維持し組織の活力を高めることを課題として自覚するようになる。ただ、組織が強力なリーダーシップを得ることで、組織内の諸活動は、明確な目標に向けて統合されてゆくが、リーダーの個人的特性による従業員のモラル確保が中心となり、組織の拡大にしたがって、強力なリーダーシップだけでは組織は次第に有効に機能しなくなる。そのため、リーダーは制御・調整を行える機構を作り出す必要がある。それを有効かつ能率的に管理するために、官僚制的な専門スタッフの導入が必要となる。しかし、さらに組織の規模が拡大し、第2の大きな壁である。複雑になると、官僚制の逆効果が発生する。組織は多数の部門に分割され、今までの利点を確保しつつ、プロジェクトチームなどによって、柔軟性を得ようとする。
国においても政権交代した直後は創業から間もなく直面する壁といったところだろう。まさしく環境の不確実性が高まるときで処理するべき情報量が増加してしまい情報量の増加量を減らすか、あるいは処理能力を高めるか選択しないと「絵に描いた餅」になってしまう。だからといって短期的な業績志向型にしてしまうとせっかくのプロジェクトチームの役割である制御・調整の機構が機能しなくなる。
例えば、八ッ場ダム問題で中止とする情報(ムダだとする数値的)量を住民に提示した上で民主的な選出方法を議論すべきだった。また、中小企業向け融資や住宅ローンの返済を猶予することも、ただ、猶予することでマニフェスト(公約)を実行したとするなら短期的な業績志向型にすぎない。あくまでも、中小企業の経営や資金繰りの実態調査し、もし、現状把握ができていないのならタスクフォース(特命チーム)の設置をし、情報処理能力を高める必要がある。でなければ、その見返りを銀行がかぶることになる。直接的ではないが、業績改善命令が出された銀行に再度、公的資金注入をしなければならない事態もあり得る。
さらにいえば、JALの再建で再生タスクフォースが設置されたが、中心メンバーは旧産業再生機構出身者で、JALや国土交通省とのしがらみをなくしたことでJALの企業年金給付額も経営再建計画に盛り込まれることとなったことはよしとしよう。今後、法的整理や新旧分離、一時的な国有化などによる再建が注目される。しかし、そのことで廃止対象となっている国内線の空港の経営はどうなるのだろうか?これらすべての問題は一つひとつ連鎖することから「計画におけるグレシャムの法則」ではないが、非定型意思決定がマニフェストを優先することで後回しとなり、将来の計画案が事実上消滅してしまわないように経営再建を実施して頂きたい。
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