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【昔から事故だらけの原発 1976年〜の事故】
チェルノブイリ10年 汚染の大地に「沈黙の春」 10年前のチェルノブイリ原発事故で「汚染大地」となり、ほぼ無人化した原発から30キロ圏内で、ネズミやシカなど野生動物が増えている。しかし、動物によっては免疫力や繁殖力が低下するなど、放射能の影響が不気昧に広がっている。原発のあるウクライナや隣国ベラルーシでの研究で、こんな実態が明らかになってきた。(ウィーン=竹内 敬二)
ウクライナのシュマルハウゼン動物学研究所によると、1986年4月の事故直後にはネズミが大発生、翌年秋には、1ヘクタールに2500匹と事故前の50倍もいた村もあった。穀物が置き去りにされたためだ。ネズミなどをねらうタカやトビなども多く飛来したが、ネズミは数が増えすぎ、穀物も底をついたため激減。いまは事故前の1.5−2倍に落ち着いている。
住民が疎開して生息地が広がり、狩猟もなくなったので、大型獣も増えた。いまは事故前に比べてイノシシは8−10倍、シカも5−6倍になった。オオカミも増え、ヤマネコなど希少種も確認されている。鳥類も春と秋の渡りの季節には大量に立ち寄るなど、確実に増えた。 こうした野生動物に放射能が蓄積、濃縮されていると、ベラルーシの動物学研究所のグループが先週、ウィーンで開かれた国際会議で報告した。 自然界の食物連鎖で動物性プランクトンに蓄積された放射能は1キロ当たり最高3400ベクレルだったが、魚類では同3万1000ベクレル。食物連鎖の上位にいるイノシシでは同40万ベクレル以上で、食用にする場合の基準の300倍を超す。キツネやシカも高いという。 シュマルハウゼン動物学研究所のガイツェンコさんらがカモなどのヒナを調べたら、87年には飛べるまで生きたのは約15%だった。90年には約30%になり、それ以後も回復しているが、まだ事故前の60−80%よりは低い。 卵の殻に蓄積された放射性ストロンチウムが原因らしい。放射能は分裂中の細胞をとくに傷つける。ストロンチウムの化学的性質はカルシウムと似ているので、殻の中に蓄積、濃縮されやすく、細胞が分裂・成長を続ける間、影響を与え続けたとみられる。 60年代以降、殺虫剤などの塩素が鳥の細胞や卵の殻に蓄積、繁殖力を低下させることが問題になった。「沈黙の春」といわれた、この現象と似ている。 ネズミは増えたが、一度に産む子供はふつう6−8匹なのに30キロ圏内では4匹ほど。体も15%ほど小さめで、皮膚の免疫力は被ばく量が多いほど落ちていた。 ガイツェンコさんは「30キロ圏内は動物の楽園になったようにみえるが、深刻な事態が進行している」と言う。 (朝日新聞 1996/04/17)
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