だべり場

プリキュアおじさんの住処

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 授業が終わり、放課後。部活が休みで暇を持て余している僕は校舎内をうろうろしていた。本当は家に帰りたいのだが、さっき校内でココロとはぐれてしまって帰るに帰れないのだ。ちなみにココロ偏怠学園に入学し、僕と同じクラスだ。
「こ、ここは…」
 僕はとある教室の前で立ち止まった。ここは……まさか……び、美術室……。
 大きく深呼吸。軽く体操して体をほぐす。注意深く辺りに人の気配がないか探り、耳をそばだてて教室内に部員がいないことを確認する。物音は人一人分しか確認できない。体力良し、視界良し、コンディション良し。大いなる覚悟を胸に、僕は美術室のドアを音もなく慎重に開く。忍者のように足音を消し、息をひそめて室内をゆっくりと歩く。奥の方に一つの人影が見える。それが僕の求めるものだ。気配を殺して、相手に悟られないように。美術室の角にいる人物の肩を触る。
「よ、よお。萌音……ぇ?」
 あれ?と僕は思った。そこにいた人物は僕の予想していた浮世萌音その人ではなかったからだ。萌音ならば肩を触った時に人間の地肌の感触がするはずだが、この肩は服を着ているようだ。おかしいな、と思い顔を近づけ人影を確認する。
「ひ、ひぇ…!」
 禿た頭に白く豊かな髭、普段は糸目の人物、それは禿山禿太郎だった。
「き、清!何故美術室にっ!?」
「いや、それはこっちの台詞…」
「美術部は今日は休みだぞ!そもそも美術部じゃないだろ清は!さ、さあ帰れ!」
「いや校長…あんたこそなんのために美術部にいるんですか?あんたも美術部顧問じゃないでしょう」
「わ、わしは萌音ちゃんの素晴らしい絵画を鑑賞させて頂いて……ハッ!?」
 慌てて口を噤む禿校長。萌音の描く絵はどれも決まって萌音自身の全裸を描いた肖像画だ。つまり、校長は萌音の全裸絵を見てムラムラしていたということになるのだろう。
「あんたねぇ…」
「ち、違うぞ清!わしはただ芸術鑑賞に興じていただけだ!うちの美術部は全国レベルなんだぞ!だから偶にこうやって部活が休みの日に忍び込んで目を肥やしていたというわけだ!」
「でも萌音の絵は…」
「人の裸体だって立派な芸術だ!わからんか!この素晴らしい色使い!まるで実物のような胸や肩、恥骨、太もも脹脛!触ればその感触までも味わえそうな見事な絵画!これぞ芸術!ああ芸術!」
「まあ、その意見には僕も大いに賛成ですが、あれ?校長、その手に握っているものは?カメラですよね?最新型のデジタルカメラですよね?ええ?」
「如何にも!生徒たちの芸術をこうして写真に収めておるのじゃよ」
「へえ、ちょっと僕にも見せてくださいよ」
 僕は力づくで校長の手からデジタルカメラを奪い取った。そして今までどんな写真が撮られたのか確認してみる。プレビュー機能だ。
「ちょ!バカ清!やめんか!プライバシーの侵害じゃ!」
 必死に僕からデジタルカメラを奪い取ろうとしてくる校長だったが、僕のほうが背が高いので無駄なあがきとなっている。
「どれどれ…ふむ、萌音の絵ですね……む?萌音の絵ですか…また萌音の絵……む!!?こ、これは…」
 そこには女子更衣室の中を激写した写真が、それからも女子生徒の写真ばかりが続き、中には巧みにスカートの中を写したものや、体操服で体育の授業を受けている女子の写真など、果ては女子便所内を写した写真まであった。
「これはどういうことですか、校長?」
「あ、はわわわ…!!わ、わしは知らん!そんな写真を撮った覚えはないぞ!知らないったら知らないからな!わしはもう帰る!!」
 校長は僕の脇をすり抜けて美術室から逃げ出した。僕は追いかける。カメラをポケットに詰め込んで、部活で鍛えた体が風を斬って校長に迫っていく。しかし、意外なことに校長も僕に負けてはいなかった。結構足が速い。
「だ、誰か校長を捕まえろー!!」
「わしは悪くねぇ!誰にもばれてなかったんだ!わしは悪くねぇ!」
「今僕にばれたんだろうが!」
「くそぅ!!全部全部清、貴様のせいだっー!」
 僕と校長の足の速さはおよそ同等、拮抗状態だ。いたちごっこ。まったく距離が縮まらない。そんな時、前方に伊藤美咲と長門雨の姿が見えた。一か八か、僕は伊藤美咲と長門雨に校長の捕縛を頼むことにした。
「伊藤!長門!そこの禿校長を捕まえてくれー!!」
「え?」
 僕の声に無言でうなずいた伊藤と長門は手際よく校長をひっとらえた。
「ありがとう、伊藤、長門」
「どういたしまして。それにしてもどうして校長先生と鬼ごっこしてたの?」
「いやあ、それには深いワケがあるんだよ」
 適当に誤魔化して伊藤と長門にはこれ以上関与しないでもらうことにした。少し疑問を感じながらも二人とも素直にこの場から去ってくれた。
 僕は長門に両手両足を縛られている校長には目もくれず、携帯電話を取り出して、迷わず警察に電話した。
『はい、こちら柄呂市警察です。どうしました?』
 野太い声の男が電話に出た。僕はその人に校長を逮捕してくれるように頼んだ。
 数分後、学園にパトカーが来て、校長は連れ去られていった。その時に証拠として一緒にあのデジタルカメラも警察官に渡しておいた。校長は泣き喚いたが、ガチムチな警察官・山口に睨みつけられると失禁しながら気絶し、黙った。メンタル弱すぎだろ。
 兎も角、痴漢で校長は逮捕された。これでこの学園に一時の平穏が訪れたのだ。
 さて、明日の朝のニュースが楽しみだ。

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