読聴見聞録

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 『特捜部Q −檻の中の女−』 ユッシ・エーズラ・オールスン

 本屋で本を選ぶ場合、好きな作家というのもあるし、ネットなどの評判というのももちろんある。全く聞いたことのない作家だと、あらすじとか解説はやはり参考にはなるが、長年読書を続けていると、手にした瞬間にビビッと来る本というのがある。この本もそんな1冊。
このところ続々と紹介の進む北欧ミステリの一冊だが、デンマークの作品というのはちょっと珍しい。

主人公のカールは極めて有能な刑事だが、あまりの強引さで煙たがられ、未解決事件を解決するために新設された捜査部Qの主任に配属させられる。事実上の左遷である。完全にやる気を無くしたカールだが、とりあえず取り掛かった女性議員の失踪事件を捜査するうちに、刑事魂に徐々に火がついていくというストーリーであるあの不滅の名作マイクル・Z・リューインの『刑事の誇り』を期待して読み始めたのだが、実際に読んでみると予想とはかなり異なるタイプの作品だった。
物語はカールの捜査の描写と、誘拐された女性議員の描写が平行して進むのだが、議員が理由もわからないままに5年間も監禁され続け、毎年気圧を上げられるという異様な状況に置かれており、その犯人の圧倒的とも言える異常な悪意が読者に迫るという、むしろサイコサスペンスと言っていい作品でもある。ちょっと今までにない変わったスタイルの警察小説である。
 捜査側は議員は死んだものと考えて捜査をしているため、決して急いでいないのだが、実際には風前の灯として生きているという点がミソ。これがサスペンスを生み出している。また、なんといっても人物描写が活き活きとしている。特に捜査部Qの助手として配属された謎のシリア人 (^^;)アサドが実にいい味を出している。また、絶望的な状況の中、最後まで凛と生き抜こうとする女性議員の姿も胸をうつ。
正直言って、欠点も目に付く。例えば主人公のカールの造形が弱い。パウダーやフロストなど比べると、個性というものがもう一つなのである。また、美貌の心理学者モーナの存在もあまりに唐突で、明らかにストーリーから浮き上がっている。真犯人の正体も物語の半分位でほぼ目処はつくだろう。
ただ、それでも非常に読ませる作品なのは間違いない。ほとんどだれる所もなく、最後まで緊迫感が持続している点は見事。あまりにも凄惨で悲惨な事件なのだが、それでもこのラストシーンには胸が熱くなる。近年紹介された北欧ミステリの中でも最も期待できる作家なのは間違いなさそうだ
このシリーズは既に4作発表されていて、特に3作目の評価が高いそうだが、ぜひとも翻訳されることを願いたい。
今年の収穫の1作。

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