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「大手の企業の公益通報(内部告発)のヘルプラインの外部受付窓口として企業の顧問弁護士がなっているケースが多い。ヘルプラインの外部受付窓口は顧問弁護士では拙いのか」という相談を記者から受けた。以下が私のおおよその回答だ。
外部の弁護士が公益通報の外部窓口になっていることは企業の公益通報(内部告発)を受け付ける制度としてより透明度が高まる制度設計であることは間違いがない。その会社が内部告発に積極的な企業イメージにプラスになるからだ。ただその弁護士が顧問弁護士となるとその透明性がそれだけ減殺される。
弁護士は公益通報(内部告発)者の通報を受け付けたときに通報者の秘密を守る義務がある。『私の氏名が判らないように絶対にお願いしたい』と要請されるケースが多い。日本の企業の中には内部告発=裏切りなどの意識が強く、告発者の氏名が判ると職場でイロイロな不利益取り扱いを受ける危険性を感じているからだ。他方で、顧問弁護士は企業に対して忠実義務を負っている。企業の顧問弁護士としての忠実義務を果すなら通報者の秘密を開示せざるを得ず、反対に、通報者の秘密を守るなら企業への顧問弁護士としての忠実義務に違反する。
企業が顧問弁護士を外部受付窓口にする理由が判らないわけでもない。
顧問弁護士だとまず気心がしれていて、企業の内部実態もよく知っているし何より費用も安くてすむからだ。中小企業や中小の地方自治体の場合は費用面でやむを得ないだろう。
その代わり、外部受付の弁護士に就任する場合には、公益通報に関する相談については、企業への顧問弁護士としての忠実義務を一部免除するなどの特約を結ぶ必要があると思われる。
少しでも従業員が安心して顧問弁護士に通報し、1日でも早く違法・不正行為が解消できるならそれにこしたことがないからだ。
大手企業は別だろう。もし従業員からの公益通報がその顧問弁護士にあり、顧問弁護士とコンプライアンス室の担当者が真摯に調べたが判明しなかったようなケースがよくある話だ。ところが実はあとで行政機関やマスコミにより事件真相が解明されたときなどの場合には、公益通報の受付窓口からして隠蔽体質企業だと批判されることになる。このような場合は費用をケチッタことが大きなマイナスになることは明らかだ。
今までは顧問弁護士で外部の弁護士を外部窓口にしていたことが透明性を高める点で良かったかも知れない。しかし公益通報者保護法が施行されると、公益通報(内部告発)隠蔽体質は社会から厳しく批判されることが予想される。ヘルプラインの制度設計からしてより一層の透明性が要求される時代に入ったことは確実である。
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