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公益通報者の保護のダブルスタンダードとはどのような意味か、私のブログ(公益通報3)を読んで相談があった。解説は不親切だったのでこの際に詳細に説明をする。
公益通報者保護法、は本法律に定義された通報対象事実を一定の通報先に通報した場合を公益通報として定義している(法2条)。しかし、国民の生命、身体、財産等の利益に関わる法令の規定や社会的に有用な公益通報は本法律中において定義されている公益通報に限定されない。社会的に有用な公益通報は本法律で定義されているより何倍、何十倍も多くみられる。このことをめぐる争いは、本法律の立法過程において鋭く対立した。その結果、本法律の基本的枠組が、本法律で保護する公益通報と一般法理で保護される公益通報というダブルスタンダードの枠組になった。
公益の為になる通報にはこの法律で定めていない公益通報もあるので、本法律に定められていない公益通報者に対しても一般の解雇権の濫用法理でも救済される道があることを明確にした(法6条)。
その結果、公益通報者を保護する為には、本法によって直接保護する場合と一般法理で保護する場合とのダブルスタンダードの基本枠組を作った。このようなダブルスタンダードの基本枠組になったのは、本法律は公益通報対象事実を政令に定めた犯罪事実と限定したことにより、本法律の政令で定められない犯罪事実等も多数存在すること等が立法過程において指摘されたことにある。又外部通報への制限なども現在の判例水準よりも狭くなると指摘された。
そのために本法律で定めた外部通報以外も一般法理で保護されるというダブルスタンダードの仕組になった次第だ。
この点は国会審議の過程でも明らかにされた。
『この第6条2項の規定の趣旨でありますけれども3条に規定する通報の要件に該当しない通報であってもその労働基準法18条の2に基づき解雇が権利を濫用したものとして無効となる場合にはその適用を排除するものではないと、その旨確認的に規定させていただいたものでございます。・・・この法条の対象とならない通報であっても一般法理に基づいて個々の事案ごとに通報の公益性などに応じて通報者の保護が図られる趣旨というのを、これでもって十分に明確になっているというふうに私どもは考えております。…そういうふうに判断してこの規定を置かせていただいております』(参議院 2004年6月10日 岡崎トミ子議員に対する政府参考人・永谷安賢・答弁)
このような国会審議をふまえて衆議院や参議院でこれを明確にする為に次のごとき附帯決議がされた。
衆議院の附帯決議
「本法の保護の対象とならない通報については、従来どおり一般法理か適用されるものがあって、いやしくも本法の制定により反対解釈がなされてはならないとの趣旨、および本法によって通報者の保護が拡充、強化されるものであるとの趣旨を周知徹底すること」
参議院の附帯決議
「本法の立法趣旨が通報者の利益の保護を拡充強化しようとするものであること、および本法による保護対象に含まれない通報については従来どおり一般法理が適用されるものであることを労働者、事業者等に周知徹底すること」
従って、公益通報者を保護するかどうかの判断には
1 まず、この法律で保護されている公益通報かどうかを検討し、
2 次に、本法律で定められた以外の公益通報の場合でも具体的事案に即して一般法理から救済されるかどうか検討する必要性がある。
3 よって、本法律の具体的条文に該当しない通報であるからと言って、保護されないと軽率に判断することは誤りになる。
これが公益通報のダブルスタンダードと言われる所以だ。それにしてもややこしい法律が出来たものだ。
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