弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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名古屋高裁自衛隊違憲判決を「蛇足判決」とか「傍論判決」などと誤った批判をする人がいる。
これらの人達は本来の判決書のあり方を知らない人達である。

本来の判決書の形式、スタイルに関して論評する。

この判決について、原告側が勝訴、画期的判決と評価している
自衛隊の行為が憲法違反と認定されたからである。
http://www.news-pj.net/siryou/pdf/iraku-nagoyabengodan_20080417.pdf

他方、政府も勝訴したという。
原告達の請求は、
1 自衛隊をイラク、イラク周辺に派遣する行為を差し止める。
2 自衛隊をイラク、イラク周辺に派遣したことは憲法違反であることの確認する
3 国は原告達に金1万円を払え

であったが、その原告達の請求はすべて却下又は棄却されたからである。

今、はやりの「ねじれ現象」判決になっている。

日本において、裁判で訴えることができるのは、国の違法・違憲行為により、原告が何らかの救済されるべき被害を受けている場合にしか訴訟ができないという伝統的な解釈がある。

≪本件の違憲確認請求はある事実行為が抽象的に違法であることの確認を求めるもので、現在の権利や法律関係に関するといえず請求は確認の利益を欠き不適法で却下≫

 ≪本件の差し止め請求は防衛大臣による行政権の行使の取り消し変更またはその発動を求める請求を含む。このような行政権の行使に対し、私人が民事上の請求権を有すると解することはできず、訴えは不適法却下≫。

 ≪控訴人らの切実な思いには平和憲法下の国民として共感すべき部分が多く含まれるが、本件派遣によって具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められない。損害賠償請求で認められる程度の被侵害利益がいまだ生じているとはいえず、本件損害賠償請求は認められない≫

国の行為が憲法に違反するというのに、国が勝訴する判決は国民の常識に合致しない。

この根本は、我が国には、国の違法・違憲行為を、直接被害を受けた国民以外の国民が直接、「差し止め」「違法確認」を求める訴訟類型がなく、国家賠償という損害賠償という訴訟形式を取らざるを得ないからである。

その結果、国家の行為を差し止めする訴訟や違法行為確認の利益はなく、却下になる。他方国家賠償請求は、原告に損害がないから棄却となる。

直接被害を受けていなくても、訴訟ができる制度がある。

地方自治法の住民訴訟がその典型である。しかし国の違法行為を差し止めや違法確認を求める訴訟類型は、認められていない。

もし、地方自治法のような、訴訟類型が、国にもあれば、上記原告の請求の1、2は認められ、政府は完全敗訴になったことは明白。

国の違憲行為や中央官僚の無駄使いの是正を求める「国民代表訴訟制度」を立法化すべき時期にきた。

なお、一部政治家や、知ったかぶりの評論家などが、名古屋高裁判決に関して「蛇足判決」とか「判決の傍論で述べただけ」という批判をしているが、これは間違い。

名古屋高裁判決における自衛隊違憲の理由は「蛇足」どころでなく「本来判決すべき事項」であり「判決の傍論」でなく「判決の本論」である

金1万円の国家賠償の請求は適法な訴訟類型。

適法な訴訟が出された以上、裁判官はその原告の請求に応じて判決をしなければならない。このような事件の判決の普通の論理展開は次の通りとなる

1 自衛隊の行為が違法・違憲かどうかまず判断する。自衛隊の行為が違法・違憲でなければ、次の損害の有無の判断するまでもなく、「その余の論点を判断するまでもなく」原告の請求を棄却する

2 違法・違憲であれば、その自衛隊の行為によって原告達が損害を受けたかどうか判断する。損害がなければ、請求を棄却する

3 従って損害の有無を判断する以上、普通は自衛隊の行為が違憲と認定されたから、損害の有無の判断になったはず。自衛隊の行為が違法・違憲かどうかはともかく、損害の有無だけを判断するやり方は、普通はあり得ないはず。

名古屋高裁の判決は、国民の裁判を受ける権利を正しく受け止めた結果である。

今までのイラク訴訟の判決は上記1を判断しないで、2の損害がないから「その余の論点を判断するまもなく」棄却するという上記3の論理構成をとった。

これは国民が求めた請求をまともに判断するのでなく、「逃げた・ごまかし判決」である。

昭和20年代から40年代ごろまでの判決の多くは、名古屋高裁判決のスタイルをとっていた。国民が納得する判決を裁判官も心がけてきたからである

いつ頃か忘れたが、最高裁事務総局の官僚裁判官達から、判決の構成は、「原告の請求原因」「被告の認否」「被告の抗弁」「被告の抗弁に対する原告の認否」「被告の抗弁に対する原告の再抗弁」「再抗弁に対する認否」という事実整理の順序で判決理由を書く必要がないという論法が展開された。

表向きは「重要争点整理判決」とか「無駄な理由は書く必要がない」とか「結論に左右されない理由は不要」などという「省力判決」のすすめであった。

その結果、本当は国民が一番求めている内容について判断を放棄し、国民を負かす争点だけ拾いあげ、切り捨てる判決が出回った。

他方で、国民の要請する内容で判決する判決を「蛇足判決」とか「傍論判決」とか批判、揶揄する論調が増えた。

名古屋高裁の判決こそ、結論が良いから誉めるのではなく、判決理由スタイル面においても、正当な判決であることを評価したい。

(転載・転送・引用全て自由)

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閉じる コメント(13)

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解りやすいです。裁判に限らず、論理的思考は、大事ですよね。若者に最も欠けている部分であり、今後の日本を考えると心配です。
「ねじれ」は流行語ですね。

2008/4/21(月) 午前 10:32 FCB10MESSI 返信する

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「kunihisa_mohri 」さん。「nra13567 ] さん
蛇足とは言う必要のない場合を言う。法律的に却下判決の場合は実態審理に入らない。そこで自衛隊違憲というと蛇足になる。しかし
国家賠償請求は適式な訴訟。実態審理に入る以上、自衛隊の違憲性について判決書に指摘するのは、当然。蛇足判決とか言う人達は、この点を誤解しているか又は知っていて、誤魔化しているだけ。

2008/4/21(月) 午前 11:35 [ abc*de*6 ] 返信する

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航空自衛隊部隊が多国籍軍兵士をバグダットに輸送している事に日本国憲法第9条に違反する活動を「含んでいる」と言っているだけ。あたかも自衛隊イラク派遣すべてが違憲であるかのように誤魔化しているのはあなたたちですよ。

2008/4/23(水) 午前 4:19 [ buc*u*uch* ] 返信する

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自衛隊イラク派遣についての違憲の確認と派遣の差し止め、損害賠償を求めた原告の訴えを原告全面敗訴の判決を下した。〜原告の訴えはすべて棄却の全面敗訴です。「原告側が勝訴、画期的判決と評価している」とする左翼弁護団の論評は詭弁もはなはだしい誤魔化しです。

2008/4/23(水) 午前 4:26 [ buc*u*uch* ] 返信する

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もっと言えば、自衛隊イラク派兵差止訴訟の会、弁護団の声明文「自衛隊の活動、特に航空自
衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国の武力行使と一体化したも
のであり,イラク特措法2条2項,同3項,かつ憲法9条1項に違反する」は判決文の捏造改竄に等しい。正確には「他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ず、武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、日本国憲法第9条に違反する活動を含んでいる」です。そんな誤魔化しやっているから国民から信用されないし、「プロ市民」って罵倒されるんですよ。

2008/4/23(水) 午前 4:45 [ buc*u*uch* ] 返信する

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buchubuchiさんの主張の内容が理解できない。自衛隊派兵の一部は合憲ともいっているし、それでは武力行使の評価を受けるとも言っている。
この人は自分自身が”ねじれ”ている。
自衛隊は館そのものが違憲と判断したのでそれで良い。

2008/5/1(木) 午前 9:09 [ そりゃないよ ] 返信する

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>今までのイラク訴訟の判決は上記1を判断しないで、2の損害がないから「その余の論点を判断するまもなく」棄却するという上記3の論理構成をとった。これは国民が求めた請求をまともに判断するのでなく、「逃げた・ごまかし判決」である。
・そうでしょうか?まずは原告の適格性、次は損害の有無でしょう。損害がないのに訴訟を起こす必要はありませんから。
それとこの文章には「国民」という語が多用されていますが、これではあたかも原告が国民の代表者のように錯覚してしまいます。少なくとも被告が国の場合、逆なのではないのでしょうか?民主国家において、国は国民の代表です。損害賠償金は全国民の税金から支出されます。一部の国民(原告)が他の全国民(被告)からお金を取ろうとしているわけですから、実質勝訴!と喜んでいる原告以外の国民は何か勘違いしているように思えます。

2008/7/29(火) 午後 3:00 [ tar**hiro*i ] 返信する

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そもそも主文と理由が結び付かない判決はあり得ません。

>名古屋高裁の判決こそ、結論が良いから誉めるのではなく、判決理由スタイル面においても、正当な判決であることを評価したい。
・これ本心ですか?もし「イラク派遣は100%合憲、でも国は原告に損害賠償金を支払え」という逆のねじれ判決で、敗訴した国が上訴せず確定したとしても同様に論じますか?裁判所は原告の政治的主張をする場ではありませんよ。

2008/7/29(火) 午後 3:01 [ tar**hiro*i ] 返信する

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【tar**hiro*i 】さん。この名古屋高裁判決は主文と理由に齟齬がないでしょう。

≫「イラク派遣は100%合憲、でも国は原告に損害賠償金を支払え」という貴方が言われている意味は理解できませんが、もしそのような論理構成をとって、判決する必要があれば、それはそれで、当事者の裁判を求める権利を尊重したことになるのでは。

「裁判は原告の政治的主張をする場でない」という点も誤解がありますね。生のママの政治的主張では裁判官は判決でききないでしょう。

法的に構成された主張であれば、裁判所は判決をする義務があるのです。
名古屋高裁での原告らはナマのままの政治的意見は弁護士がいる以上、そんなバカな主張はしていないはず。法的にキチント論理構成をしていると思いますよ。

私は、このブログでは自衛隊の違憲論を論じていない。判決スタイルを論じているのです。国会では、このような場合でも、国家機関の「公的な解釈になる」と政府は答弁していますよ。
知らないのは、そのような報道をしない、マスコミです。
それに踊らされている国民が一部にはいますがね。

2008/7/31(木) 午後 10:04 [ abc*de*6 ] 返信する

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民事訴訟なのですから違憲なのでしたらクリーンハンドの原則に
基づき国が敗訴するのでは?
違憲の行為を勝訴させる法的論理が理解できませんが?
憲法98条からも逸脱しているように思います。
勝訴した以上、主文は自衛隊合憲、傍論は違憲、だからネジレ
と表現するのでは?

2009/7/15(水) 午後 9:58 [ wil**eesejp ] 返信する

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転載させていただきました。

2010/5/2(日) 午後 5:30 東急不動産だまし売り 返信する

一般人じゃない、頭が良いはず(?)の弁護士の肩書きを使ってブログ記事を書くならば、誤解されやすいようなタイトルはお止め下さい。
『自衛隊違憲判決は...』という題は、自衛隊の存在を違憲扱いした文章が書かれていると勘違いする者が多く、また、弁護士の肩書きで自衛隊違憲判決は..等と記載してれば、『自衛隊は違憲なんだ』と誤解する者も出る。それらを踏まえず悪意があるタイトルと判断。自衛隊イラク派遣は...等で記載すれば良いものの。
ねじれがどうのこうのと仰るが、元々、法を通して議論すれば殆んど屁理屈大会になる。こじつけと屁理屈の横行で、刑が緩くなったりもする。
イラク派遣は、国際支援や国際情勢を考えた政治判断であり、それについて反対するのは何らかの思想。
イラク派遣が違法と判決が出れば、政治側が反論し批判するのは当然で、正当だと判決が出れば、思想側が吠えて批判するのも当然。
裁判所がイラク派遣を不当だと判断したからと、裁判官が政治・国際情勢も全て理解し、その政治判断が妥当かどうか考えられる者でも無い限り正当な判決という証明にもならない。思想よりな判決で終わっただけ。

2011/4/6(水) 午前 5:58 [ 独眼竜 ] 返信する

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転載が自由とあるので、この記事を転載させて頂きます。

自衛隊が電波兵器から電波を発射して、国民を攻撃しているので、その差し止め、及び、損害賠償を検討しています。

自衛隊が電波兵器を所持している事実、自衛隊が被害者に電波を発射している事実、被害者がその電波を照射されている事実をどのように立証するか考えています。

2013/2/6(水) 午前 1:58 [ patentcom ] 返信する

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