弁護士阪口徳雄の自由発言

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株主と会社

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【米企業、政治献金の開示拡充 大統領選】日経新聞10/28(11:38)

 【シカゴ=毛利靖子】プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、イーベイなど米大手企業が相次いで政治献金に関する情報開示の強化に乗り出した。金融危機に伴う環境悪化で公的支援を期待した献金活動が活発化。米大統領選が約1週間後に迫り献金額が過去最高の水準に膨らむ中、年金基金など機関投資家が企業の献金先や資金使途への監視を強めていることが背景にある。

 P&Gや石油・天然ガス開発のデボン・エナジーは機関投資家との間で政治献金をする場合は金額、目的を事前に取締役会が点検、詳細を公表することで合意した。ネット競売大手のイーベイは6月末までに献金した議員や政治団体の名前と金額の一覧を公表し、毎年情報を更新することを機関投資家に約束した
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≪日本の企業も政治献金をHPに公開すべき≫

その為には、国民の年金を運用する機関投資家はアメリカのように企業に要求するべきだ。日本において、年金を運用する機関投資家が、このような要求をしないことは、受託責任の放棄に等しい。

アメリカの年金基金を運用する機関投資家は、企業のガバナンスに関して発言をする。その手段は、株主権の行使であったり、他方では企業に直接改善を要求したりである。

ガバナンスの基本は、会社の事業計画や経営活動についての情報開示が根本である。
企業の政治献金の公開もそのガバナンスの一環として機関投資家が要求したのであろう。

これに比べ、日本の年金積立金などを運用している機関投資家達は、直接、短期に、運用益につながらないと思われるガバナンスには、全く発言をしないし、株主権も行使しない。

ソニーの役員の報酬開示請求を求める株主提案には、外国の機関投資家が賛成してくれているが、日本の機関投資家達が賛成したという話を聞かない。

まして、企業がどのような政党、政治団体に献金しているかというような、テーマーには、全く動かないどころか、拒絶反応すらある。

日本において、国民年金などの積立金を株式などに運用しているのは、世界最大の公的年金運用機関であると言われ「年金積立金管理運用独立行政法人」である。

「国民年金法」などにおいて、保険料の積立金がこの法人に運用を任すことが法的に決められている(注参照)

運用のシステムはこの独立法人が直接運用するのでなく、民間の機関投資家に委託して、運用させている。

平成19年度は5兆84百億円の運用損である。この様子では、世界的な同時不況下の急激な株価下落では、平成20年度はもっと巨額の運用損がでる可能性があるだろう
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h20_p01.pdf

もちろん彼らが言うように年金積立金の運用については、長期的な視点から安全かつ効率的に行うこととされており、運用実績の年金財政に与える影響についても、長期的な観点から評価することが重要であること言うまでもない。
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri02iinkai213.pdf

長期的な視点を言うならば、年金積立金管理運用独立行政法人は、株式の運用においても、投資する企業の行動が、どれだけ株主に情報開示されているかの長期的な視点を導入し、その情報開示の進んだ企業に投資を振り向ける方向での、運用指針を作るべきである。

情報開示の内容は、役員の報酬の個別開示もそうだが、上記アメリカのように、政治献金をどれだけ、どの政党に、どのような目的で支出したかを明らかにするような株式運用指針である。

特に、運用資金は、この独立法人が、勝手に集めた金ではなく、20歳から60歳の国民から強制的に拠出させた金の積立金である以上、年金の投資先は特定の政党を支援する企業に投資するなどして「運用」するべきではない。

政治資金規正法において企業の献金が合法的に認められている日本においては、少なくも、政党に献金をしているかどうか、もししているとすれば、いくら献金をしているか、などの企業の嫌がる情報でもどこまで、情報開示をしているかに関する指針を作り、情報開示の進んだ企業に投資を振り向ける方向での指針を作るべきある。

国民の年金の運用を寄託される「年金積立金管理運用独立行政法人」の役員は法律で次のような義務があると定められている。

第十一条 管理運用法人の役員及び職員は、年金積立金が厚生年金保険及び国民年金の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、慎重かつ細心の注意を払い、全力を挙げてその職務を遂行しなければならない。

2 理事長及び理事は、第十八条第一号に掲げる業務(以下「管理運用業務」という。)に関する職務の執行に際しては、委任を受けて他人のために資産の管理及び運用を行う者であってその職務に関して一般に認められている専門的な知見に基づき慎重な判断を行うものが同様の状況の下で払う注意に相当する注意(第二十二条において「慎重な専門家の注意」という。)を払わなければならない。

3 理事長及び理事は、管理運用業務について、この法律、厚生年金保険法若しくは国民年金法、これらの法律に基づく命令若しくは通則法若しくはこの法律に基づいてする厚生労働大臣の処分又は管理運用法人が定める業務方法書その他の規則を遵守し、管理運用法人のため忠実にその職務を遂行しなければならない。

と定められている。

同法人は「公的年金積立金運用の基本的な考え方について」の中で株式の運用に関する原則を次の通り定めている。

≪株式は、株式会社が資金調達のために出資者(株主)に対して発行する有価証券であり、株式への投資は、株式会社の経済活動の成果を享受するものとも言え、全体としては経済の成長と大きな関わりがあります。債券と比較すると、株式の場合、債券のような元本保証はなく、相対的にリスクは高いものの、長期的には、株式全体の収益率は債券の収益率を上回るものとされています。

また、公的年金制度がわが国の経済に立脚するものであることを考慮すれば、年金積立金として公的に集められた資金の一定割合が、株式市場を通じて民間の企業活動に還元される形でわが国の経済活動に寄与するとともに、運用収益の形で公的年金制度が経済成長等の果実を享受することは望ましいことと考えられます。

なお、株式投資を行うことに伴い、公的年金積立金という資金の性格に鑑み、個々の企業経営への影響に十分に配慮しつつ、長期的な株主等の利益の最大化を目指す観点から、運用受託機関を通じた株主議決権の行使といった株主としての権利と義務を適切に果たしていくことは、受託者責任の観点からも必要なことと考えられます≫
http://www.gpif.go.jp/kanri/kihon/kihon03_03.html

この最後にいう「受託者責任」の「委託者」は国民年金の掛け金を払う国民である。
「委託者」の全体の気持ち=年金の公的性格を尊重すれば、特定の政党に献金をする企業などに投資をするべきではない。

それに対する運用指針などを作らず、慢然と民間の機関投資家に運用させているとすれば、この役員達が上記の法の趣旨に反することになる。

今、日本の経団連は、財界の利益になるかどうかいう視点から自民党、民主党の政策を採点し、その採点の多寡により献金額を決めている。

政権交代などになる可能性がある時に、一方の自民党ばかりに巨額の企業献金をする企業実態を無視し、漫然と年金を運用するやり方は、およそ長期的な視点の欠落である。

株主オンブズマンが、アメリカの年金運用団体であるカルパースの活動を9年前に調査したことがあった。
http://kabuombu.sakura.ne.jp/archives/soukai-usa.htm#calpers

その中で日本の年金運用機関である、機関投資家達が受託者責任を果たしていないというコメントを書いた。

【我が国の機関投資家は、投資先企業に対して関心を示していない。株主総会の議決権の行使についても白紙委任が一般である。しかし、機関投資家の役員らは、自らの運用資金は委託者(銀行であるならば預金者、保険会社ならば契約者、国等の年金事業財団ならばその従業員等)から受託していることを忘れている。

彼等は委託者に対して誠実な権利行使を怠っている。(=株主の持ち合いのため)今後、我が国においては委託者の立場から受託者に対する責任を追及する道を探ることが必要である】

(注)国民年金法76条

第75条 積立金の運用は、積立金が国民年金の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら国民年金の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、国民年金事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。

第76条 積立金の運用は、厚生労働大臣が、前条の目的に沿つた運用に基づく納付金の納付を目的として、年金積立金管理運用独立行政法人に対し、積立金を寄託することにより行うものとする。

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