弁護士阪口徳雄の自由発言

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【吉本興業のTOB差止め裁判】

昨日(10/19)、吉本興業の個人株主19名が公開買付会社(クオンタム)吉本興業、吉本経営陣を相手にTOB(実質はMOB)の差止め裁判を大阪地裁に提訴した。

本件スキームはおそらく、吉本の現経営者が公開会社クオンタムの出井社長と相談の結果であろうと思われる。このスキームの内容。http://www.yoshimoto.co.jp/src/about_ir.html

TOBを、誰が、どの企業に、どのようににしかけるかは、公開買付会社の自由だ。

問題はTOBを仕掛ける公開買付会社の役員に、買収される側の企業の役員が残る約束となると、これは純然たるTOBではなく、MBO(マネジメント・バイ・アウト)に近い。吉本のケースはこのMBO的TOB。

しかも今回のTOB(実質はMBO)「全部取得条項付種類株式」制度(会社法108条1項7号、2項7号、171条〜173条)を利用して個人株主の同意なく、株主地位を剥奪して、スクイズアウトする方法がとられている。

会社法の法制審段階では、「全部取得条項付種類株式」制度を利用するには「債務超過の要件」「100%減資」などの制限目的があったという。しかし、会社法が制定された時はドサクサに、その目的規定が削除された。 その結果、株式の強制取得が可能となった。

普通の取得条項付の株式だと全員の同意が要求される(法110条、111条1項)。

しかし種類株式にすると「株主の買取請求権」や「裁判所に対して取得価格の決定の申立」ができる(法172条1項)権利を付与した位で、多数で剥奪できるという会社法の規定がソモソモおかしい。

株主は何時、いくらで、その会社の株を売るか、又は配当・株主優待に期待して持ち続けるかは株主の自由。

それを吉本のような優良企業において、しかも、MBO的TOBを実施して、売りたくない株主の地位を一株当たり1350円で強制的に「収用」するやり方は長い目で見れば、株式市場全体にとってマイナス。

はじめから、吉本の会社の定款などで、上場に際して、経営者は『吉本を買いたい企業がでると、役員達はその公開買付会社に残るが、あなた方、一般株主は強制的に一定の価格で買収される場合があるのでわが社の株を買う場合は要注意して下さい』とする旨の予告をしておくべきだ。

会社法が改正・施行されてから3年経過した。この間に『『吉本を買いたい企業がでると、役員達はその公開買付会社に残るが、反対株主は強制的に一定の価格で買収される場合がある』旨、公開買付け会社に買収されることを、事前に株主総会で決議しておくべきだった。

TOBが実施された後の株主総会で勝手に資本の多数論理で決められても、それは事後的な決議であるから、気がついた時は既に遅く、少数株主は排除される。

一般的に法人の構成員が多数決で他の構成員を排除できる規定は「除名」以外にない。組織の秩序を乱すなどの違法、不当行為を行った者が排除される。

株式会社は資本の論理が働くから、議決は多数で議決できても誰も文句は言わない。
しかし、他人の地位、権利、財産権を勝手に多数で奪う論理は普通の法人ではあり得ない。

株式会社では資本の多数論理が通用するにしても、強制的に他人の株主の地位を奪える場合は、真にその会社にとってやむを得ない場合に制限すべきである。

大手テレビ会社やファンド、ソニーの元社長らが儲けるために吉本の個人株主の権利をはく奪することは許すべきではない。これではハゲタカファンド、資本、儲けだけを追及する経営者が株式市場に跋扈することになる。長い目で見れば、株式市場にマイナス。

小泉、竹中時代の市場主義、資本の論理時代の会社法の改正というより改悪。

MBO的TOBが「全部取得条項付種類株式」制度を利用できる場合は「当該企業の再生、再建等のやむを得ない相当の理由」がある場合にのみ、限定されるべきものである。

無限定に会社法の形式的要件を満たせば少数株主の地位を剥奪できると解することは許されない。

これが弁護団の根本的問題提起。

しかも買収する1株あたり1350円という価格も安すぎる。
この価格が安い点及び不透明な点は訴状に詳細に記載した。

この訴状は相当長いので、原告株主団が近いうちにHPを作るので、そこにアップされるだろう。

なお、この訴状の『はじめに』この裁判の目的が記載されている。

1(1) 吉本興業株式会社は、関西から笑いの文化を生み出した企業であり、上場後、これらの笑いの文化が好きな庶民達によって育ってきた企業である。

その笑いの文化を愛し育ててきた多数の個人株主から、その株主の地位を、大手メジャーのテレビ会社やファンドに言わば「身売り」するのが、今回の「TOB」の姿である。

このスキームを計画し、大手テレビ会社などに持ちかけたのは吉本の経営者たちである。彼らはその後も買収会社の役員として残り、1億円の範囲内で報酬が約束された、いわば形を変えた「MBO」(マネジメント・バイ・アウト)でもある。

(2) 吉本の役員らは、2005年に吉本の子会社でコンテンツ配信会社である株式会社「ファンダンゴ」を上場させ、巨額のカネが入るや1年半後に非上場にし、再度、吉本の子会社にした。

この結果、吉本関連の企業のカネの流れはより不透明になった。今回のTOBによる上場廃止によって、吉本のカネの流れはより一層不透明となる。

(3) 最大の問題は、現経営者らがテレビ会社やファンドと提携し、「TOB」に賛同しない株主から、1株あたり1350円のカネでその地位を一方的に剥奪しようとしている点である。

このような吉本のような笑いの文化を愛し、好んできた個人株主の地位を、カネを払えばよいのだろうと、全部取得条項付種類株式制度などを乱用して、一方的に剥奪しようと計画した現経営者らの行為が許されるのかどうかを問う裁判である。

2 同時に、この裁判は、上場企業の役員達がファンドなどの公開買付会社と共謀し、当該企業の既発行の少数株主の地位を剥奪することが許されるかどうかを問う裁判である。吉本に限らず、MBO(マネジメント・バイ・アウト)のあり方を問う裁判でもある。

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