弁護士阪口徳雄の自由発言

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  本日(4/15)午後大阪地裁に吉本興業の株主総会無効確認、取消訟状を出した。昨年にTOBの差止訴訟を提訴した。
   吉本興業のTOB差止裁判(株主と会社57)
   に次いで第2弾の裁判である。
  差止裁判は提訴時期が遅く、裁判が開始する前にTOBが成立し、裁判が開始した第1回の期日後にの1月末の臨時株主総会で、少数株主をスクイズアウトする株主総会も成立した。差止訴訟は訴えの利益がなくなった。そこで原告及び弁護団がこのような臨時株主総会の決議が無効であり、又は取消されるべきとして吉本的TOB=MBOは不当であるとして提訴した。


 (1) 被告会社の役員らは、大手メジャーのテレビ会社やファンドに働きかけ、「訴外クオンタム」をして被告会社の株式の公開買い付け(本件TOBという)を企画した。本件TOB成立後「訴外クオンタム」の出井伸之氏は同社の単なる平取締役になり、1億円の範囲内で報酬が約束されていた役員らは、現実に、訴外クオンタムの代表取締役、取締役にそれどれ就任した。本件TOBはきわめて巧妙に仕組まれた「MBO」(マネジメント・バイ・アウト)でもある。
 (2) 被告会社の役員らは、2005年に被告会社の子会社でコンテンツ配信会社である株式会社「ファンダンゴ」を上場させ、巨額のカネが入るや1年半後に非上場にし、再度、被告会社の子会社にする等、吉本関連の企業のカネの流れを不透明にさせた。
今回のTOB=MBOの成立は本件株主総会決議によって一般株主を排除することにより、上記被告会社の経営者らの狙いを完成させる。
 (3) 今回のTOB=MBOは、100年に一度というほど不況による株価が著しく低下した時期を悪用して、1株あたり金1350円の著しく低い金額でその株主地位を一方的に剥奪するものである。
2 この裁判は、上場企業の役員達がファンドなどと連携して公開買付会社を実質上組織又は連携し、当該企業の既発行の少数株主の地位を剥奪することの総会決議の無効・取消という訴訟手段によりTOB=MBOのあり方を問う裁判でもある。


  吉本興業の臨時総会決議が無効である理由の要旨の一部の概略は次の通り。
(1) 「全部取得条項付種類株式」制度(会社法108条1項7号)の法令違反
  イ.会社法108条本文は、
「株式会社は次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行できる」と定め、
同7号において、
「当該種類の株式について当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること」と定めている。
     ロ.会社法の定める「全部取得条項付種類株式」は、その利用される場面等に関して、限定文言がない。
旧商法の下においては、会社が株主全員からその有する株式を取得しようとする場合には、旧商法第213条第1項により減資の規定に従った株式の消却が行われていた。そして、この場合には解釈上株主全員の同意が必要とされてきた。しかし、株主全員の同意なくしては株式の消却ができないとすると、いわゆる100%減資が円滑に行うことができず、会社の任意の再生手続において迅速性に欠けるとして、経済界から100%減資を再生手続または更生手続外で行えるようにしたいとの要望があり、これに沿うかたちで「全部取得条項付種類株式」制度の導入が検討されたものである。
このような経緯から、当初、全部取得条項付種類株式は会社が破産原因である債務超過の場合にのみ認めるという案が検討された。その後、「債務超過」という文言は「正当な理由のある場合」という文言に変更され、立法化の過程においてこの文言も削除された。もっとも、立法者としても全部取得条項付種類株式を無制限に認める趣旨で上記の文言を削除したわけではない。それどころか、平成16年11月17日に開かれた第31回法制審議会会社法(現代化関係)部会におけるやり取りでは、全部取得条項付種類株式の利用は、100%減資等正当な理由のある場合に限られるとの立法者の意向が確認されている。(略)
「そういうことで,前回の案の方がよかったのではないかと思いますけれども,どうもこれもやむを得ないので,解釈上そういうことだと,前回どおりこれは正当事由が要る,はっきり言えば100%減資ができる正当事由があるケースについてのみ適用ある規定である,そういう解釈で,ただ文言はどうもこれ以外にはなかなか難しいようでありまして,少しでも分かりやすい規定にするようになお御努力はいただきますけれども,一応御了解いただけますでしょうか。解説を書かれる方は,これはそういうことだということを,どういう経緯で入ったかということを,とにかく趣旨の誤解を与えないような解説の書き方をお願いしたいと思います。」
つまり、全部取得条項付種類株式について、条文の文言上は特段の要件が設けられていないものの、法制審議会では、特別決議による多数決で行うにつき正当理由が必要との議論が行われ、一致をみていたのである。
このような立法経緯に鑑みれば、全部取得条項付種類株式は、100%減資等正当な理由のある場合に限って利用が許されると解すべきである(商事法務No.1775藤田友敬「組織再編」55頁から65頁参照)。
「正当理由ある場合」とは、「債務超過時における100%減資等、総株主の意思に反しないことが合理的に推認しうる正当事由がある場合」である。このような正当理由なく全部取得条項付種類株式制度に関する決議は違法と解すべきである。
    ハ(略)
    ニ.全部取得条項付種類株式制度の濫用による弊害の点からも、(略)など正当事由が求められると解すべきである。
全部取得条項付種類株式制度の利用につき限定がないとすれば、株主に株式買取請求権または株式取得価格の決定の申立による救済さえ与えれば、株主の権利内容を、特別決議による多数決によって変更することが自由に認められることになる。また、本件の場合においてもそうであるように、組織再編によるシナジ−を多数株主が独占するためにも用いられ得る。多数株主の恣意による濫用という問題をこの制度は内包している。(略)
 () 株主の地位を奪われる弊害
全部取得条項付種類株式は、それが多数株主により濫用される場合には、種々の権利を発生させる株主としての地位が一方的に奪われることになる。これにより自己が意図しない時点で売却を強制させられることになり、長期的な視点から投資を行っている株主であってもその時点で投資を強制的に終了させられるという弊害が生じる。とくに多数派株主の形成が、当該会社の役員がファンドなどと結託して行うMBOの場合はその弊害が特に現れる。経営陣の不祥事などを隠ぺいするためや、経営陣と対立する株主を「合法的」に排除できるから危険性があるからである。
      () 十分な情報が開示されない弊害
(略)経営に関与しない、多くの個人株主は、取得価格の適否について判断する資料は有しておらず、会社あるいは同議案の提案を企図している者のみが、その資料を有している。株主としては、適正な判断資料や情報なしに提案の採決に臨まざるを得なくなり、また正当事由の有無についての判断さえ困難となる。MBOの場合は、本来株主側に立つべき取締役が株主地位を奪う側にたつという「利益相反性」を本質的に有する場合はその情報の非対称性は一層、ひどくなりその弊害が如実に表れる。
     ホ.反対株式の買取請求等の制度(会社法116条)、株式取得価格の決定の申立(会社法172条)が「保障」されていても、これだけでは反対株主への保護にはならない。
株式の買取請求等の制度、株式取得価格の決定の申立による「取得の価格」は、取得日における客観的価値に期待権を加算した合計金と言われている。
株式の客観的価値等の算定がきわめて多様であり、かつ、値上がりする「期待権」等も株主にとって多様であり、これを金額に換算することはおよそ不可能なことである。(略)とりわけ、当該企業の取締役が公開買付会社の役員として就任するMBOの場合には、なおさらである。
仮に、上記買取請求権等の制度で株式の客観的価値ならびに期待権が算定できるとしても、上記の反対株主が買取請求や株式取得価格の決定の申立をするには、相手方が有する情報に比べ株主の持つ情報は限られており、かつその申立等は商事非訟手続であるために、会社が有する情報が法廷に提出されない等の著しい不公平が生じる。しかも、この申立をするために費用と労力が必要とされ、少額、少数株主にとって、このような「制度」はあっても無きに等しい。実際に行使する株主は例外中の例外である。(略)この程度の保護だけでは、著しく保護に欠ける。
    ② イ.しかるに、被告会社の本件決議には、上記に述べた法108条1項7号に要求される正当事由が不存在であり、違法である。
    ロ.本件スキームは、被告会社の主要役員らが公開買付会社(訴外クオンタム)の主要役員として就任し、結局のところ、株主構成を一般株主から大手テレビ会社等に変更したにすぎないものである。いわば自己の経営方針に批判的な一般株主を排除し、自己の経営方針に賛同する株主に「再構築」する目的のために行ったMBOであり、なお一層、正当事由が希薄である。
    ハ.本件議案においては公開買付価格は1株1350円としており、これは市場評価法、類似会社比較法及びDCF法に基づき定めたとしているが、その価格は、きわめて恣意的に決定され、本件決議の違法性がこの価格に如実に示されている。
      () 「市場株価平均法」によっても、1株あたり金1350円について、
    (略)しかし、過去1ヶ月から6ヶ月という期間に限定している点で、きわめて恣意的である。この時期はリーマンショックによる100年に一度という世界同時不況により株価が急激に下落した時期である。ちなみに、日経平均株価を見ても、2008年9月から急激に下落していることが判明する。
(略)ちなみに、被告会社の株価を3年から5年の期間で見ると、1350円は著しく低い株価算定となる。リーマンショック以前でも1200円〜1500円前後の株価推移であるから、プレミアをつけての価格が1350円は著しく低い。(略)被告会社の業績はきわめて良好であり、このような長期的な投資を考えている株主からみると、上記のとおりの「市場株価平均法」なるものはきわめて超短期投資の株主を前提にしての株価算定であり、それへの「プレミア」にしかすぎない不当な評価である。
      () DCF法による株価算定について
(略)「MBOを計画する経営者は、株主に対してはその利益を図るべき善管注意義務がありながら、MBOが実施された際、あるいはその後の再上場を行う際に、自己の利益を最大化するため、対抗的公開買付を仕掛けられない範囲で、自社の株価をできる限り安値に誘導するよう作為を行うことは見やすい道理である」(平成21年9月1日大阪高裁決定、サンスター株式取得価格決定申立事件)と述べているように、本件の場合、この事業計画を意図的に操作している可能性が大である。
 以下全部(略)


MBOにおける株主を排除するやり方がどのような場合に認めら又は制限されるのかを問う裁判は初めてである。
MBOで株主地位がはく奪され、その株価が低すぎるという裁判はレックスホールデイング事件、サンスター事件で問題とされ、会社の算定が低すぎるという理由で会社が敗訴している。
今回の原告達は、吉本の経営陣のやり方に納得できず、株価が低いという不服申立ではなく、真正面から吉本的TOBの在り方を株主総会の議決の無効、取消という手段によって争うものである。株主・弁護団はトコトンMBOの在り方を争う予定

 


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閉じる コメント(4)

とても意義深い裁判だと思います。

2010/4/19(月) 午後 10:17 [ CRS ]

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[ consumer_rec ]さん
当該企業の株式市場には自由に参加させながら、ところが、あとになって種類株式制度などを利用して株式市場から今度は強制的に排除する。それはないだろうという株主の素朴な疑問からスタート。それなら、当該企業の定款に最初から「我が社は役員がファンドとグルになって、弊社の株主の株式を強制買収することがある」と予め警告しておくべきです。普通なら消費者契約法の趣旨から見ればこのようなやり方は違法そのもの。しかし組織再編の柔軟化とかの名目でMBOは昨年でも90件前後行われている。この裁判は、このようなケースが何処まで許されるのかを問います。ドッチにしても最高裁まで行くでしょうね。ご協力をお願いします。

2010/4/20(火) 午後 2:58 [ abc*de*6 ]

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このエントリーにコメントがつかないのがわかりませんでした。個人株主は株式市場をに諦め感しかないのでしょうか。私は、最近は株式を購入してませんが、それまではベンチャーを支援する意義も感じて、日本の新興市場に投資続けてきました。
それが今この状況です。悪いことを悪いと世の中に示し、新しいベンチャーを創生するためにも阪口弁護士に期待しております。

2010/5/9(日) 午前 0:44 [ CRS ]

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昨今報道を賑わせている、吉本興業と反社会的勢力の繋がりの記事を検索しているうちにこちらに辿り着きました。ファンダンゴの件は最近知りましたが、なんかもう、どうなってるのこの企業という感想しか持てません。インデックス投資をするにしてもこういう企業にお金が流れるのはつまらんです。

2019/7/20(土) 午後 1:25 [ hid*nor*_*ak*mot* ]


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