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失敗例に学ぶ『内部告発』―公益通報制度を知り、守り、活かす.
目次
プロローグ 内部告発の風景―「当事者の戸惑いと担当者の責任」
第1章 公益通報(内部告発)の理念・制度とその運用 第2章 通報者(内部告発者)の立場から―公益通報において知っておくべきこと 第3章 通報(内部告発)を受けた事業者はいかに対応すべきか―役員・担当者・弁護士の役割と責任 第4章 重要判例解説 第5章 証拠収集と外部告発の限界 第6章 諸外国の公益通報者保護制度 第7章 公益通報者保護法改正に対する提言 この本は読む価値あり。 内部告発を受けた事業者側の担当者、役員、弁護士達がどのように対処すべきかについて、失敗事例から教訓を導きだしている。どこで間違いを犯したか、失敗があったかを、その場面ごとに解説しているが故に、実に説得力がある。
読んでみて一番の失敗事例はダスキン事件であろう。
未認可添加物の混入した肉まんの通報を受け販売した役員の責任は当然として、既に、肉まんが販売完了後に知った役員、監査役達にも、それを積極的に公表して社会の信頼を回復するべき義務を怠った責任が認められている。『不作為・放置した失敗事例」である。最近ではオリンパス事件である。しかしこの本にはオリンパス失敗事例は紹介されていない。公表すべき事件を怠ったオリンパス役員達の責任の追加(株主と会社) http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/folder/1340210.html内部告発を受けると、会社のトップ達は、感情的になり、つい冷静な対応ができず「隠ぺい」に走り、通報者を処分する傾向に走りがち。
その結果、「隠蔽」したはずの事件が、マスコミに報道される。その上、裁判になる。通報者側も傷がつくが、会社側も社会的信用に大きな傷がつき、終息するのが、内部告発事件の顛末である。
これらの失敗事例の中から、著者らは、公益通報を受けた時のトップ、担当者達、弁護士らの心構えを書いている。『事業所内部に内部告発を受けた時は、内容が真実の通報であれば事業者にとって是正の機会、準備の時間的余裕を与えるものとして歓迎すべきことである。もし事実が異なるのであれば調査結果を丁寧に通報者に知らせ納得を得られるように努力すれば良い。その後外部に通報される事態になったとしても、事前準備は済んでいるので慌てることはない。報復措置あるいは報復と取られかねない措置は無用の係争やコストアップ、事業者の社会的評価の低下を招くだけである』と。
この結論はさすがである。
内部告発に通報者側、事業者側において、それどれの立場で実際に関与してきた弁護士達であるが故に言えるのであろう。
非常に専門的になるのが第5章の「内部告発に伴う証拠収集問題」の法的解釈問題の解説である。この解釈は内容は公益通報者保護法を何度読んでも回答がない部分であり、公益通報者保護法が判例に委ねた空白部分であるからである。
通報する側では、会社側の「証拠」を入手して告発しないと真実性の立証が難しくなる。その結果、会社の内部の「証拠」をコッソリ入手しくてはならない。この行為は内部告発に不可避的に生じる行為である。となり、証拠入取行為は形式的には窃盗罪になり、少なくても就業規則違反に該当する。
この本は、内部告発に伴う証拠収集行為を豊富な判例を引用して、判例がどのように考えているかを、実例を挙げて詳細に検討している。
最後に韓国の内部告発保護法を紹介している点が参考になる。
通報対象事実は公職者の「腐敗行為」であるが、通報者の通報による刑の減免、通報者に対する差別取扱行為者に1年以下の懲役、告発をした者に報奨金や、税の支出を免れるなどの場合は最高20億ウオンの支給などビックリする法律が隣の国で制定されている。
アメリカの不正請求防止法、キイタム訴訟によく似た制度である。知らなかったが故に、これを知っただけでも読んだ価値があった。
事業者が失敗しない、公益通報に関係する人達、特に相談にのる弁護士達や担当者達が失敗しない為の「教科書」であると言える。
一読をお勧めする。
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