弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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熊谷組控訴審の当日の法廷、記者会見の情景を、朝日新聞の1/12が株主側の情景を描いてくれているのでそれに関する一部を引用させてもらった。

 ■「政治とカネの問題 放棄」 11日に名古屋高裁金沢支部であった熊谷組株主代表訴訟の控訴審判決は、経営が悪化しても、受注機会を増やすために自民党に献金を続けた企業の姿勢を認め、株主側の逆転敗訴となった。株主側は「司法は政治とカネの問題を放棄した」と疑問を投げかけ、元社長側は「正当な判断」と評価した。株主側は近く最高裁に上告する方針。

【株主のコメント】
「期待かなわず」怒り/株主側 最高裁で常識訴え 「一審原告の請求を棄却する」。静かな法廷に裁判長の声が伝わると、株主側は表情をこわばらせた。株主オンブズマンのメンバーで原告の会社社長、柚岡一禎(ゆおかかずよし)さん(63)=大阪府泉南市=は直後、雪が降り続く北陸の空に心情を例え、「あんたんとした気持ちです」と唇をかんだ。 

 技術の熊谷組――。そう高い評価を受けていた同社のファンで、89年に3千株を購入。「ダム、トンネルなど日本の背骨をつくる熊谷組に思い入れがあった」という。 経営が苦境に陥っても自民党への献金を繰り返す姿勢が許せず、控訴。だが、一審後も「政治とカネ」をめぐる不透明な問題は後を絶たない。 
 裁判所近くの金沢法曹会館であった会見でも柚岡さんは「金が政権党とゼネコンをぐるぐる回る仕組みが温存されてしまった。期待はかなわなかった」と怒りをみせた。

【弁護団のコメント】
 弁護団長の松丸正弁護士は最高裁で企業献金を認めた70年の旧八幡製鉄訴訟を引き合いに、「企業献金奨励判決を踏襲するものだ」と断じた。「笛吹きに金を与える者が曲を決める」という西洋のことわざから「笛吹き」を自民党、「金を与える者」をゼネコンに例えて企業献金を批判し、「莫大(ばくだい)な献金で政策を決めることはあってはならない」と声を震わせた。 

弁護団と株主オンブズの事務局長、阪口徳雄弁護士は「日建連が巨額な統一献金をして様々な要求をすることが、賄賂(わいろ)性を帯びるか(経営判断で)考慮すべきだと主張したが、判決は一笑に付した。最高裁で社会の常識に反することを訴え、一審以上の判決を勝ち取るよう努力したい」と語った。

【被告のコメント】
 一方、熊谷太一郎(72)、松本良夫(63)の両元社長、鳥飼一俊前社長(59)の3氏は弁護士を通じて「経営判断に何ら裁量の逸脱がなかったことが認められたもので正当な判決」と評価した。熊谷組(本店・福井市)は「判決文は入手していないが、正当な経営判断が認められたと考える」と書面でコメントした。 

【醍醐教授のコメント】
《醍醐聡・東大大学院教授(会計学)の話》 金で政策を買うという企業、業界の論理を司法が認めたようなら問題だと思う。献金しないと、会社の信用を失い、受注も減ると言うなら、その業界の体質を変える必要がある。政治献金は二律背反のジレンマを抱える。効果がないなら取締役の善管注意義務違反、効果があるならわいろになる可能性がある。
そうならないよう、政治資金の寄付は企業献金をやめ、政治家が自助努力でサポーターを増やすような個人献金にすべきだろう。

日建連は政府、自民党に業界の固有要求を出していた。政府、自民党はこれを受け入れた。その構造的癒着関係を維持するのが、本件日建連献金である。1審原告は、上記日建連献金について次のような2段階の主張をしていた。

1 『日建連統一献金は業界の要求を実現するため、あるいは実現して貰ったことへの対価、あるいは今後とも日建連の要求に対して特別の配慮をお願いする献金』であると主張しそのような献金は著しく社会的に相当でなく、公序良俗に反すると主張した。

どうやら高裁でも、『業界の要求を実現するためとか業界の要求に対する特別の配慮を求める献金』は違法と考えたらしい。しかし高裁判決は『違法な趣旨ないし目的に基づくものであったことを認める証拠はない』として1審原告の主張を証拠面から切った。(判決34Pの7行目以下)

2 次に、本件献金が違法な趣旨の献金であるとの証拠が明白でない場合でも、日建連が自民党に要求していることとの関係で上記のような『違法な趣旨ないし目的に基づく献金でるかどうか』を慎重に審査すべきだ。そのような慎重な審査を行わない献金はソモソモ取締役の善管注意義務を尽くしていないと主張した。ましてそれすら調査しない献金は杜撰献金で善管注意義務違反と主張した。

高裁判決は『一審原告が種々主張する具体的な調査が行われなかったとしても、取締役の善管注意義務に違反するものではない』と原告の主張も切った(34Pの15行目)

3 以上の高裁判決だと『業界の要求を実現するためとか業界の要求に対する特別の配慮を求める献金』は違法だが、日建連から要請がある献金である以上、それが違法かどうかは何ら審査する必要がないと
いう結論になった。これでは業界献金をフリーパスにした高裁判決になる

業界は違法行為を為さずという理由にしないとゼネコン業界の献金を認めることが出来なかったのであろう。これも市民の常識と高裁裁判官の常識が乖離している点だ。

最高裁もこのような違法性の調査をする必要性がない高裁の判決論理を肯定するのか、それとも業界と政党との献金実態にメスを入れるのかが問われる訴訟になる。

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