弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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熊谷組ゼネコン政治献金事件について最高裁に上告した。1審判決と2審判決の違いについて、上告受理申立理由書(その1)のトップに以下の結論を書いた。
どちらが社会の常識に合致しているかは明白だ。最高裁裁判官が普通の社会の常識を尊重するか、それとも自民党や財界の特異な常識を尊重するか?が問われている。

1 一審の判決と高裁の判決の結論が異なった。政治献金とりわけ業界をあげての巨額の献金をどのように見るかによって結論が変わった。

一審判決は、
 『これに比し、会社が政党に対して政治資金を寄附することは、会杜が有する経済力が個々の国民を圧倒的に凌駕するのみでなく、同一産業界の会社が産業団体を結成して政治資金を寄附するときは、その影響力は個々の会社をもはるかに超えると考えられるから、それが政党に及ぼす影響力は、個々の国民による政治資金の寄附に比してはるかに甚大である。

政党の政策が会杜あるいは産業団体からの政治資金の寄附によって左右されるとすれば、政党の政治上の主義、施策を選挙において訴え、選挙における国民の選択によってその活動に信任を得るという選挙制度の意義を否定し、その根幹をも揺るがすことになりかねず、政党政治そのものへの批判にも結びつくこととなる。

従って、会杜あるいは産業団体による政治資金の寄附の規模如何によっては、国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害するおそれがあることは否定できない。

のみならず、会社あるいは産業団体の政治資金の寄附が特定の政党ないし政治団体にのみ集中するときは、当該政党のみが資金力を増大させて政治活動を強化することができ、ひいては国の政策にも決定的な影響力を及ぼすこととなって、過去に幾度となく繰り返された政界と産業界との不正常な癒着を招く温床ともなりかねない。』
という認識から、政治献金の抑制原理に結びついた。
  
他方、高裁判決は、この産業界あげての巨額の献金の実態を直視せず、政治献金を単に熊谷組個別企業の献金として矮小化し、その上、会社の社会的役割を果たすものとして積極的に評価した。
 
『政治資金の寄附は、これを客観的、抽象的に観察すれば、政党の健全な発展に協力する趣旨で行われると解されるのであり、政治資金規正法も会社による政治資金の寄附そのものを禁止することなく、一定の限度でこれを許容していることを考慮すると、特段の事情のない限りは、会社がその社会的役割を果たすためにしたものというべきである。』
  
一審原告は、熊谷組単独で自民党に献金した2000万円や3000万円の献金を問うているのではない。
  ゼネコン大手業界(日建連)は、政府、自民党に公共工事予算の増額や請負工事印紙税の免除等、業界固有の要求を出している。それを実現させるために、日建連加盟企業が一斉に4〜6億円の巨額献金をしているのである。このような献金の是非を問うているのである。

2 原判決は35年前の最高裁八幡献金事件を適用したが、本件政治献金に適用すべきでない

 八幡政治献金事件の注意義務論を素直に読む限り、「会社の規模・・・からみて・・・合理的範囲内においてその金額等を決定すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合は取締役の注意義務違反になる」としており、会社にとって分不相応な金額をしてはならないという注意義務である。

広辞苑によると、不相応とは「つりあわないこと。ふさわしくないこと。その例として身分不相応」を挙げている。最高裁判決の「会社の規模等・・・の合理的範囲内においてその金額を決定すべきであり、その範囲を越える・・・」という判旨は、会社にとって分相応かどうかという対内的基準が審査基準となっている。したがって、この基準は、法的にも社会的にも何らの問題もない場合の献金における審査基準である。
  
一審原告が主張している日建連統一献金は、熊谷組にとって分相応か不相応かという議論ではなく、日建連統一献金の持つ性質、とりわけその有害性、弊害性を審査基準として審査すべきと主張しているのである。
 
 最高裁の判例の審査基準では、日建連統一献金のごとき献金の審査基準とはなり得ない。政治献金の対外的に果たす役割(有害性やその弊害)を審査基準として定立しない以上、本件日建連統一献金の審査基準とはなり得ない。取締役の審査基準は、上記最高裁基準の前に、その政治献金の対外的社会的役割について審査したかどうかである。
  
原判決には、日建連統一献金のような巨額献金の持つ弊害性、有害性を何ら審査基準として定立していない最高裁八幡政治献金事件の審査基準を適用した違法性がある。熊谷組固有の政治献金についても同様である。

3 八幡政治献金事件を適用するのは誤りであるか、またはその審査基準は見直されるべきである

  この最高裁八幡政治献金事件の審査基準そのものが見直されるか、それとも本件事件に最高裁八幡政治献金事件の審査基準を適用したことについてその是非が問われている。日建連統一献金のような、政権政党に自らの要求をつきつけ、業界と政党との癒着の要となる巨額の献金を許すのかどうかが問われている。

熊谷組の名古屋高裁金沢支部の判決に対して、最高裁に上告した。3/14までにその理由を詳細に書く必要があった。学者の協力を頂き、弁護団で何回も議論してやっと本日完成して提出することが出来た。上告状が27P、上告受理申立がその1からその3まで合計95Pになった。
そのうちの上告受理申立理由書(その1)は私の担当だった。いずれ株主オンブズマンのHPに全文をアップする予定。以下がその理由書の目次だ。

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
 1 一審の判決と高裁の判決の結論が異なった。政治献金とりわけ業界をあげての巨額の献金をどのように見るかによって結論が変わった ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
 2 原判決は35年前の最高裁八幡献金事件を適用したが、本件政治献金に適用すべきでない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
 3 八幡政治献金事件を適用するのは誤りであるか又はその審査基準は見直されるべきである ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
第1 原判決が取締役の善管注意義務について認定した事実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
 1 本件政治献金については八幡政治献金事件の審査基準によるべきである・・・・・・・ 7
 2 日建連統一献金の実態について審査する義務がない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
 3 日建連統一献金の実態を調査しなくても経営判断原則に違反しない ・・・・・・・・・・ 8
第2 日建連統一献金の政治献金の支出における善管注意義務論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
 1 日建連統一献金とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
  (1) 日建連という業界団体から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金である ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
 (2) この献金の性格は日建連加盟企業が統一的意思のもとにする献金である ・・・ 10
  (3) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する献金である ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
(4) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する危険性のある献金である ・・・・・・・・・・・ 12
  (5) この献金実態に合致した注意義務論が要請される ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
 2 日建連統一献金に八幡政治献金最高裁判決における審査基準を適用したのは誤りである ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
(1) 原判決の注意義務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
(2) 最高裁八幡政治献金事件の射程距離は本件日建連統一献金事件に適用すべきでない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
  (3) 最高裁八幡政治献金事件の審査基準を本件日建連統一献金に適用したのは誤りである ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
 3 政権政党への巨額の政治献金については謙抑的でなければならない ・・・・・・・・・・ 15
  (1) 政治献金の一般的な特質からくる抑制である ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
  (2) 政党への政治献金は必ず弊害がある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
  (3) 与党への巨額の政治献金は政府の政策を左右する危険性、弊害があることによる抑制原理である ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
 4 以上の日建連統一献金の弊害の事実から政権政党への巨額の政治献金にあたっての取締役の注意義務の内容は次のとおり解されるべきである ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
 (1) 日建連統一献金の危険性と有害性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
  (2) 日建連統一献金の審査にあたっての注意義務の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
  (3) 注意義務の具体的内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
  (4) まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
 5 一審被告の取締役の注意義務違反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
  (1) 原判決は日建連が政府・自民党に業界固有の要求をしている事実を意識的に無視した ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
(2) 1996年(平成8年)5月29日の1176万円、5月30日の705.6万円について何ら審査していない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
(3) 1997年(平成9年)2月13日の1167万円、2月14日の700.2万円についても審査していない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
  (4) 1998年(平成10年)3月30日の1627万円についても審査していない ・・・・・・・・・ 23
(5) 1999年(平成11年)9月13日の金1627.7万円についても同様である ・・・・・・・・・ 23
(6) 2000年(平成12年)4月20日の1209万円についても同様である ・・・・・・・・・・・・・ 23
 6 原判決の善管注意義務についての法令の解釈、判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
(1) 原判決は日建連統一献金の弊害、有害性の審査義務そのものを否定した・・・・ 23
  (2) 日建連が自民党、政府に対し、種々の要求、要望を出していることは証拠上明らかである ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
  (3) 日建連の熊谷組への要請が「どのような理由で、何故その時期に、総額幾らを献金するのか」ということと分離しては存在しない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
  (4) 一審被告松本本人も審査しないことを認めている ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
  (5) まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
第3 熊谷組固有献金についての善管注意義務論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
 1 熊谷組固有献金とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
  (1) 熊谷組が直接国民政治協会から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金をいう ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
  (2) 熊谷組固有献金の特質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
(3) 原判決は八幡政治献金事件の審査基準で本件献金も判断した ・・・・・・・・・・・・・・ 29
 2 本件熊谷組固有政治献金の取締役の善管注意義務違反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
  (1) 政治献金のずさんな支出は取締役の善管注意義務に違反する ・・・・・・・・・・・・・・ 29
 (2) 会社が国民政治協会から単独で寄附要請を受けた場合の注意義務 ・・・・・・・・・・ 30
 3 一審被告の審査の実態と義務違反の事実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
  (1) 一審被告らは上記のような具体的な審査を尽くさず、国民政治協会からの要請だということのみで安易にしかもずさんに献金した ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
  (2) 原判決の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
第4 取締役の善管注意義務違反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
1 原判決が認定した注意義務論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
2 経営判断の原則の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
  (1) 原判決の解釈の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
(2) 経営判断原則とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
  (3) 原判決の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
  (4) 取締役が判断した事実だけでなく判断しなかったことも不注意な誤りになる ・・・・・ 35
  (5) 政治献金に関する経営判断をする場合にその判断の前提の事実として認識すべき事実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36

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