|
【公益通報する労働者はその企業に内部通報制度(ヘルプライン)がある場合に、ヘルプラインを利用しないで、外部通報することが許されるのか?】
『公益通報関係裁判例集』が内閣府国民生活局企画課編で商事法務から発行された。
http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/7084.pdf
冒頭の『内部通報制度(ヘルプライン)の設置と参考判例』と題して内閣府の『公益通報関係裁判判例集の作成検討会』の座長である早稲田大学 島田陽一教授の解説がある。
この解説の最後に
『外部通報と内部是正努力の関係は内部通報制度の制度設計においてもなかなか難しい問題を提起す
る。この点について論じた裁判例を見ると事例も少ないこともあって、必ずしも成熟した判断基準が形成されているとは言いがたい。しかし内部通報制度が整備されている場合には、原則としてこの制度を利用することが求めれる。つまり内部通報制度を利用しない通報行為が正当でるためには、これを利用しないことに相当な理由が求めれる場合に限定されるのである』
と結んでいる
島田教授はこの解説の中で、行政機関への通報も『外部通報』と位置付けている。
そうだとすればこの解説の【しかし内部通報制度が整備されている場合には、原則としてこの制度を利用することが求めれる。つまり内部通報制度を利用しない通報行為が正当でるためには、これを利用しないことに相当な理由が求めれる場合に限定されるのである】と断定した教授の見解は少なくとも行政機関への通報までそれを要求することは、公益通報者保護法の解釈を間違えていると思う
従来の判例では公益通報を保護する法律がなかったので、行政機関への通報も外部通報と位置づけ、企業内部で、どれだけ内部是正努力をしたか=すなわち通報の手段、方法の相当性という視点から、『内部是正努力』を判例が検討したにすぎない。
公益通報者保護法が施行される前ならともかく、本法律が施行されたあとでは、内部通報と行政機関への通報を法3条の条文を見る限り、まず『原則としてこの制度=内部通報を利用することが求めれる』ということにはならない。
確かにマスコミなどへの外部通報の場合は3条3号イ、ロ、ハ、二の要件は、内部通報制度を利用しないで通報行為が正当であるためには、これを利用しないことに相当な理由が求めれる場合に一応限定している。
(このマスコミなどへの通報の条文の問題点と、従来の判例の保護枠組みの関係=法6条の関係は今回は論じない)
しかし行政機関への通報には3条2号を素直に読む限り、3条1号の内部通報を利用することをまずすべき場合に限定をする文言は一切ない。
あるのは、通報事実の真実性に関する相違だけである。この違いは、行政機関に通報する場合にまず内部通報をすべきことを要求する内容ではない。内部通報をしないことに相当の理由を求めた条文でもない。
本法律は行政機関への通報は、内部通報(ヘルプライン)の利用を前置する法律にならなかったのである。
その限りでは、島田教授の意見が、行政機関への通報まで要求しているとすれば、明らかな誤りである
島田教授が個人的に意見を述べるのは自由である。しかし内閣府の『公益通報関係裁判判例集の作成検討会』の座長という立場での述べる以上、上記見解は誤解を招き、事業者、通報者などへの誤導となる危険性が大だ。
早急に訂正を望む
問題の法3条を引用する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第3条 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。
一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合当該労務提供先等に対する公益通報
二 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報
三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
ホ 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
|