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≪自治体の債権管理に関する質疑応答集が自治体法務NAVIで連載される。執筆者は芦屋市の青田悟朗行政経営担当課長。時期にかなった論文≫
平成21年4月28日に最高裁で自治体の債権管理に厳しい判例がでた。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37555&hanreiKbn=01
この事件は兵庫県尼崎市が談合企業に対して、不法行為に基づく損害賠償債権を行使できる資料が入手できているのに、その回収を放置していると、市長の「債権回収に怠る違法事実がある」と認定され、大阪高裁に破棄差し戻しになった事案である。
(この最高裁判決は不法行為に基づく自治体の債権回収に関する参考事例であり、今後の自治体の顧問弁護士や法務担当者にとって重要な判例であるので、詳細は別途論じる予定)
自治体の首長、担当者及び顧問弁護士が、あれこれ屁理屈をつけて引き延ばしていると、消滅時効が進行してしまい、もし回収できない事態になれば、このような債権回収を放置してきた、後の市長、担当者及び顧問弁護士の過失問題が生じ、その者らに対する監査請求がおき、その責任が問われる事態も発生しかねない。
このような、自治体の債権回収に厳しい判決がでた時に、芦屋市の青田悟朗行政経営担当課長が4月25日発行の自治体法務NAVI VOL28号に
「自治体の債権管理に関する質疑応答集」
を連載し始めた。非常に時期にかなった論文である。
最高裁判例は不法行為債権であり、この連載はおそらく確定債権が議論の内容にはなるのだろうが、自治体の債権回収に関しての基本姿勢は同じ。
同人は自治体法務NAVI VOL20から25まで,合計6回にわたって自治体の有する債権の管理について解説している。
この内容は自治体職員及び顧問弁護士にも有用であると「公債権と私債権の管理に関する論文の紹介(地方自治62)」のブログに書いた。
http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/56168317.html
今回の質疑応答もきわめて実務的に発生する問題であり、自治体の担当者などに非常に参考になる。連載が何回になるか知らないが期待したい。
どのような質問応答がなされているか、目次部分から引用する。回答はこの雑誌を読めば参考になる論文であることがよく判る。自治体の債権回収に携わる関係者にお勧めする。
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1 公債権と私債権の区分
(1)公債権と私債権では,時効の完成や債権放棄の手続きが大きく異なるが,具体的な私債権と公債権の区分はどのように行うのか。
条例の許可業者に対する施設使用指定に基づく鮮魚市場施設使用料,また,同施設の使用に伴い付随的に発生する共益費,水道使用料,電気使用料などはどうなるのか。
上水道料金,下水道使用料,集落排水使用料は?
「自治体のための債権管理マニュアル」(ぎょうせい)では,公債権は行政庁の処分によって発生し,相手方の同意を要しない,行政処分に対しては不服申立てが用意されているなどと記載されているが,具体的な適用が分からない。
(2) 債権ごとの時効期間について
上水道料金は公法上の債権(5年時効)として扱われていたが,高裁の判決により私法上の債権となり時効も2年となったと言うことも聞いている。市立病院の診療費も同様である。
具体的な例として,条例の許可業者に対する施設使用指定に基づく卸売市場施設使用料,また,同施設の使用に伴い付随的に発生する共益費,水道使用料,電気使用料など各債権の具体的な時効の年数はどうなるのか。
2 住宅使用料の督促につき不服申立てはできるのか。また,不服申立てができるとすれば教示の必要はないのか。
3 私債権の不服申立てについて
地方自治法第231条の3第7項により,私債権の審査請求・異議申立てはできないのか。
4 福祉電話料金等の時効は何年か?(市税→5年,水道料金→2年だが)
5 共益費の考え方について
電気,水道,ガス,電話料金など実費請求する場合の債権の時効期間は何年か。
6 延長保育料の時効について
延長保育料は保育料と別に考えるべき債権か,また,督促はどのように扱うのか。
7 督促の時効中断について
資料(自治体法務NAVI VOL21「自治体の有する債権の管理 第2回)の表・・・自治体の催告(督促の後)は時効中断するということになるのか? (時効中断しないという認識だったが・・・)
8 私債権の督促の効果について
私債権の督促は時効中断の効果を有するのか。
9 学校授業料の延滞金について
延滞金については,現実的に徴収することはとても困難だが。
10 財産調査の方法について
強制執行の対象としての財産特定,滞納者の財産調査の方法,着眼点
強制執行を行う前の生活実態の把握の必要性について言及されていたが,債務者の生活実態の把握につながる有効な手だてはないのか。
11 マニュアルの未整備,また,財産調査の権限がないことについて
学校授業料の徴収を担当している。複数の学校授業料の督促等について統一的なマニュアルはなく,それぞれの学校の担当者が前任者から引き継いで行っているため,方法に若干のばらつきがある。
また,財産,所得等の調査権限がないため,債務者の資産状況が把握できず,客観的事実に基づく納付交渉の支障となっている。
12 同意書の有効期限について
「同意書に有効期限(期間)があるのかどうか?」なのであるが,私債権の徴収にあたって,分納誓約させるときに,履行遅延の場合の措置として,各種財産調査に対する「同意書」の提出を求めることとする。もちろん,了解してくれた人のみになるが。
これにより,確実とまではいかないまでも,それなりの確率で各種照会に対する回答が得られるものと考えている。
徴収段階ではなく,当初の契約時点において,「同意書」の提出を求めていけば,ほぼ100%の提出が可能となるものと考えている。 そこで,有効期限(期間)があるのかということであるが,契約自体が有効であれば,一連の書類となる「同意書」は有効であるものと考えるが。
13 納付交渉について
督促状を送付した際の未納者からの問合せで,治療費は支払っており支払う必要はないとのことで確認をしたが払った実績はなかった。本人の勘違いであると思われるが,私債権の場合は裁判以外に強制力を伴わないため,払った・払っていないの水掛け論で終わってしまうことが多々ある(少額訴訟まではまだ考えていないため)。
このような場合どのような対処方法があるのか。
14 支払督促の実施時期について
未収債権について,裁判所による支払督促等を検討すべき時期はいつが適当か。
15 支払督促から訴訟,和解に移行する場合の対応について
支払督促申立を行う段階で,既に滞納者の異議申立による通常訴訟への移行を想定し,ある程度の準備をしているのか?また,実際に通常訴訟に移行したケースがあればその顛末は?
支払督促又は仮執行宣言付支払督促送達の段階で,滞納者側から分割納付等の申出があり,受諾する場合,債務名義を確定させるのか,それとも一旦取り下げるのか?
16 支払督促の実施基準について
金額的にはいくらぐらいの債権に対して支払督促申立を行うべきか?
採算ラインなどの基準は設けているのか?
悪質な滞納者に対しては金額に関係なく支払督促を行っているのか?
17 支払督促の一括申立てについて
債権が複数存在し所管も分かれている場合,支払督促申立は個別に行うのか?一括して行うのか?(一括申立の場合)納付や差押により一部回収できた場合,配当額はどのようにして決めるのか?
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