弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

≪小沢氏検察審査会の起訴議決は無効となるか≫


小沢氏、15日に国を提訴 検察審査会の議決「無効」
共同通信20101014 2004
 資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、強制起訴すべきと議決された民主党の小沢一郎元代表が、「議決内容に欠陥があり無効だ」として起訴手続き差し止めを求める国相手の行政訴訟を15日に東京地裁に起こすことが分かった。
 小沢氏の了承を得た代理人弁護士が14日、明らかにした。提訴と同時に、検察官役となる指定弁護士を東京地裁が選任しないよう求める仮差し止めも申し立てる。
 昨年5月の改正検察審査会法施行後、審査員11人中8人以上の賛成が必要となる起訴議決は、兵庫県明石市の花火大会事故や尼崎JR脱線事故、沖縄県の未公開株詐欺事件に続き4件目となったが、不服とする提訴は今回が初めてとなる。
 東京第5検察審査会が4日に公表した議決は、土地購入費約3億4千万円を本来記入しなければならない2004年分報告書に載せず、05年分に載せたなどとする告発容疑に加え、購入費には小沢氏が用意した4億円が充てられた、と認定した。
 4月に「起訴相当」とした1回目の議決で認定した「容疑内容」には、購入費の出どころは盛り込まれていなかった。
(共同) 


共同通信の記事によると、小沢氏の2010年4月の起訴議決と今回の起訴議決の内容が違うという点にあり、検察審査会法に違反し、無効という主張のように見える。
 
検察審査会の議決の取消又は無効確認ができるかどうかは、旧法の検察審査会時代に最高裁は1966年(昭和41年)1月13日検察審査会の議決に対しては行政訴訟ができない(裁判所法第3条にいう「法律上の争訟」に当たらない)と訴えを却下した。http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=66395&hanreiKbn=01
 
検察審査会法が改正され、2度目の議決の場合は起訴議決を受けた裁判所は起訴に従事する指定弁護士を指名する義務を命じられている。(法41条の9)裁判所から指定された弁護士は、検察審査会の起訴議決にかかる事件について起訴することを義務づけられている(法41条の10)
 
この議決は裁判所に指定弁護士選任を義務つけ、その指定弁護士に起訴を義務付けている以上、議決を行政処分と見、その名宛人は裁判所、指定弁護士であり、第3者に対する行政処分であるが、小沢氏はその処分により不利益取扱を受ける以上、原告適格はあるだろう。
 
行政訴訟をする以上、検察審査会の議決の取消、無効確認となろう。 
 
従って、旧法とは違い「法律上の争訟」に該当し、行政処分性もあり、原告適格もあると思われ、以前のように門前払いは簡単ではなさそうだ。
 
国の主張は、上記弁護団の主張に対して、以上の検察審査会法の規定する手続きは強制起訴という処分に至る手続(=行政機関内部の関係)だから、通常の検察官の起訴処分に関して行政訴訟ができないと同様に「法律上の争訟」に該当しない等として却下を求めるだろう。
 
国の処分の取消訴訟、無効確認訴訟などの行政事件を拡大する方向で、何件も訴訟をしている弁護士から見ると、本件でも行政訴訟ができるという小沢弁護団説には賛成だ。
 
問題は弁護団の主張するように今回の検察審査会の議決が無効かどうかである
 
検察審査会の議決は「検察官の公訴を提起しない処分の当否」について議決することになっている。
 
検察官の不起訴処分の正確な内容は公表されていないので、何とも評価できないが、第1回議決書のうち「被疑事実の要旨」記載の事実が「検察官の公訴を提起しない処分」だとすると、第2回の「別紙犯罪事実」を起訴すべきとする事実とは違うことはその通りである。
 
その違いだけで起訴議決は無効になるとは簡単には私には思えない。
 
この事件で問題となっている公訴事実(=社会的事実)は
 
    陸山会は2004年(平成16年)10月に土地を購入したこと、
    その代金として3億4264万円を支払ったこと、
    そのカネは小沢氏が立替かどうか別として小沢氏のカネでまず支払ったこと、
    そのあと間もなく小沢氏が銀行から4億円を借り、それを陸山会に貸付けしたこと、
    土地の登記は2005年(平成17年)1月であったこと、
    陸山会の2004年(平成16年)度の収支報告書には、上記のような事実が記載されずに提出されたこと
にあると思われる。
 
上記公訴事実(=社会的事実)に対して検察官は不起訴処分をしたと思われる。第1回議決記載の「被疑事実の要旨」の通り不起訴処分したとしても、上記②③④の事実の不記載も検討した上で、不起訴処分にしたと解するのは自然。
 
検察官の記載された「被疑事実の要旨」だけではなく、上記公訴事実(=社会的事実)の中にも犯罪を構成する事実がなかったとして不起訴処分をしたことになる。従って検察官の不起訴処分は記載されている事実以外の上記公訴事実(=社会的事実)も不起訴にしたと解することになる。
 
この社会的事実を検察官が不起訴にしたので、検察審査会の審査はその当否を審査できることになる。
 
第2回の審査会の議決が上記②③④の事実を起訴議決したとしても、検察官が不起訴処分にしている以上、それを審査の対象にできる以上、起訴議決しても検察審査会法に違反するとは思えない
 
検察の処分の表面的な「被疑事実の要旨」と検察審査会の議決内容の少しの違いで、起訴議決が違法となり、無効になるなら、大阪の市民団体が東京地検に背任、横領罪で告発している2.5億円の河村官房長官の食い逃げ事件などを検察が不起訴にした場合を想定すればこの不当性は明らかとなる。
 
この事件の社会的事実は、次のような事実であったとしよう。
 
    2009年9月に河村長官が2.5億円を国庫から引き出したこと、
    それを政策推進費、調査情報活動費、関係活動費名目で費消した、
    上記名目の支出の中に2億円が情報収集費(政策推進費)や会合費(調査情報対策費)があった(仮定)
 
上記社会的事実について、検察官は河村の使ったカネの2・5億円は背任、横領の犯罪については嫌疑不十分という不起訴処分をしたと仮定しよう。大阪の市民団体が検察審査会に異議の申し立てをして、第1次検察審査会が2.5億円のうち5000万円は通常の官房報償費に支出したが、残りの2億円は背任、横領で起訴議決をしたとしよう。
 
第2回検察審査会がよくよく記録を調査したところ、最初から、2億円は、自民党の為の費用を、情報収集費(政策推進費)会合費(調査情報対策費)名目で支出する為であったして、最初から国庫から2億円を騙すつもりで請求したから詐欺で起訴すべきとなった場合を想定すれば、第1回起訴議決と第2回起訴議決が違うことは明白。だからと言って、2回目の起訴議決が無効になるとすればこれはおかしい。
 
小沢議員の弁護団がどのような事実をとらまえ、無効と主張するのかは判らないが、上記のような違いを言うなら、法的には裁判所に採用されないだろう。
 
2004年から2005年3月までの収支報告書の虚偽記載、不記載の公訴事実(=社会的事実)を対象にしているときに、実は、記録を読むと2006年の社会的事実の中に、犯罪事実があった。ところが検察官見落としていたというような場合は2004年の社会的事実と2006年の社会的事実は明らかに違うのだから、もし検察審査会が起訴議決をしたような場合は無効と言えるが、小沢議員の場合はそのような違いがあるのかどうか。
 
(注)なお、以上は検察審査会の議決の手続きが違法かどうかの議論であって、強制起訴が有罪になるかどうかとは別の議論。念のため。

開く トラックバック(1)

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事