弁護士阪口徳雄の自由発言

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吉本興業株式会社への市民株主の裁判が継続している。1株あたり1350円の根拠が不明。これへの反論の準備書面を裁判所に提出した。以下、記者からの取材が結構あるので、全文をアップする。


 
平成21年(ワ)第16029号 違法行為差止等請求事件
原告 ○○○○外18名
被告 吉本興業株式会社 外3名
平成22年(ワ)第5553号 株主総会決議無効確認等請求事件
原告 ○○○○外1名
被告 吉本興業株式会社
 
面(4)
2010年(平成22年)11月10日
 
大阪地方裁判所 第4民事部 合議B係  御中
 
原告ら訴訟代理人
弁護士(代表)  阪口徳雄
 
1 本件TOB価格は著しく低廉である
  (1) 「公開買付者は、本公開買付価格を決定するにあたり、平成21年5月に第三者算定機関であるGCAサヴィアン株式会社(以下「GCAサヴィアン」という)に本公開買付価格の決定の参考とするため対象者株式の価値の評価を依頼した。そして、平成21年9月11日に取得した「株式価値算定書」の内容を参考に、対象者との協議・交渉を経て、1株当たり1350円とすることを決定した。
    GCAサヴィアンは、対象者の株式価値を算定するに際して、公開買付者より提出された対象者に係る事業計画(対象者の非公開化及びその後の施策等の影響を公開買付者が反映させたもの)等を検討のうえ、多面的に評価することが適切であると考え、市場株価平均法、類似会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュフロー法(以下「DCF法」という)を用いて対象者の株式価値を算定した。
    株式価値算定書によると、市場株価平均法では983円から1292円、類似会社比較法では924円から1218円、DCF法では1289円から1604円が対象者の1株当たり株式価値の算定結果として示されている。
    本公開買付価格である1株当たり1350円は、かかるGCAサヴィアンによる株式価値算定書の内容を参考にしながら、過去の発行者以外の者による株券等の公開買付けの事例において公開買付価格決定の際に付与されたプレミアムの実例、対象者による本公開買付けへの賛同の可否、対象者株式の市場株価の動向、本公開買付けの見通し等を総合的に勘案し、かつ、対象者との協議・交渉の結果等も踏まえ、決定した。」(甲1号証)
       この価格決定に対し、旧吉本の取締役会は賛同の意見を表明した(甲2号証)。
 (2) 本件株式の価格決定におけるGCAサヴァイアンの株式価値算定書によると、市場株価平均法、類似会社比較法、DCF法の3通りの手法を根拠として決定したと述べている(乙1号証)。
       市場株価平均法は、評価対象会社株式の実際の取引事例価格なので客観的であるが、最大の問題点は、本件のごとき実質MBOである場合には、株価算定時期を恣意的に決定できるため、株価が著しく低い時期を決定できる点にある。市場株価算定時期を過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月等ときわめて短期間に設定する等、株価を恣意的に算定できる。
     一般に、原告らのように、長期保有することを希望する一般株主の立場は、株価の上下により1ヶ月〜6ヶ月単位で売買を繰り返すようなものではない。少なくとも2年から5年程度保有し、その中で自己が納得する時期に売却をするという行動パターンから見れば、GCAサヴァイアンの1ヶ月〜6ヶ月の市場株価平均法で算定することは正しくない。
     ② 類似会社比較法は、事業、内容、企業規模、収益規模、財務内容など類似する上場会社を選定し、それらの会社の利益、純資産、配当等と比較して株価の価格を算定する方式と言われているが、この手法が妥当する領域は類似会社が3〜10社程度選定される場合であり、それが少ない場合は援用されない手法である。本件被告会社のような会社はわが国においては少なく、2社の類似の会社と比較することにどれだけの意味があるかきわめて疑わしい。したがって、GCAサヴァイアンの手法はこの点でも間違っている。
   ③ DCF法の評価の方法は、将来の各期において企業が生み出すキャッシュフローが企業価値であるという考え方を軸に、株主価値を算出する方式である。
具体的には次の手順で行われる。
      ⅰ 事業計画書の作成
      ⅱ 将来フリー・キャッシュフローの算出
      ⅲ 割引率の計算
      ⅳ 終価の計算  
      ⅴ 株主価値の計算
     まず、事業計画書は綿密な計画のもとに作成されねばならないし、それは、MBOを前提として恣意的に作成されていてはならない。この事業計画書が恣意的に作成されると、次の手順がいくら綿密にされたとしても意味がない。この事業計画書に基づき、その企業の事業の利益(営業利益)から税金を控除し、現金支出の伴わない費用である減価償却費を加算し、現金支出である設備投資を減算し、運転資本の増減額を加減する方法で、将来のフリーキャッシュを算出する。その各期のフリーキャッシュを一定の資本コストで現在価値に割り戻して企業価値を算定し、そこから債権者に属する部分として有利子負債を控除して株主価値を算定するという方法である。将来のキャッシュフローとリスク(割引率)の予想は不確定要素が多く、その数値如何によって評価額は大きく変動するので、この方式のみでの評価は危険がある。
        しかし、企業活動の最終目標はキャッシュの獲得であり、キャッシュに企業活動の全成果がおりこまれるとする考え方は一定の説得力があり、欧米などでは一般の株式売買、M&Aあるいは営業譲渡等において多用される方式である。わが国のM&Aなどではこれらの指標が多く援用されている。
        DCF法は、本件等の場合に援用される手法であるが、しかしその前提として、「貴社作成の吉本興業事業計画」(乙1号証、17頁)は、本件MBOと無関係に策定された計画でなければならない。この事業計画は、何故か7年間となっている点に疑義があるが(一般には5年が圧倒的)、取締役で利益相反する吉野伊佐男、大崎洋らが入って行った計画である。
     本件MBOが社内で1年以上前から計画されている以上、本事業計画を恣意的に決定している可能性は大であり、その恣意的に決められた事業計画をもとに算定されたDCF法ですら1株あたり1289円〜1604円であるから、恣意的に決定されていない事業計画であれば、同じDCF法で計算されていれば1株あたり2倍以上の2500円〜3000円前後と算定されているはずである。
 (3) 株式の評価方法として、評価会社の純資産を直接評価して企業価値を算定する方法があり、その代表的評価方法として純資産価額方式がある。これは評価会社の資産から負債を控除した純資産価額を求め、これを発行済の総株式数で割って1株当たりの株式価値を計算する方法であるが、上記サヴァイアンは何故かこの手法を援用していない。
       ちなみに、2009年3月期の1株当たりの純資産額が簿価で1226円であることから、「時価純資産法」で修正すると、1株当たり1350円以上となるために、意図的に除外している可能性がある。
    何故これを援用しなかったのか、その釈明を求める。
  (4) 買付株価の価格交渉を真剣に行ったとは思われない。
       吉本側の交渉主体は被告吉野、大崎らであるが、同人らはファンド側の会社の役員になる人物である以上、まともな交渉はできない。誰が誰といつどのような内容を交渉したか記録を提出すべきである。
  (5)  公正・公平なプロセスを行ったという主張も信用できない。
     MBOが既存株主においても最善の選択肢だったとは思われない。当該TOBが企業価値向上の最善策であるのか、他の対案を並べて検討すべきである。非上場化して、LOBローンを抱え込み、投資家のエクジットに応えることが腰を据えた事業変革(TOB・非上場化の目的)をすることにつながるのか(そんな資金負担を負うことなく上場維持したまま資本・業務提携する方策はなかったのか)、どのような対案と比較して合理的に結論を出したのか、会議記録等を提出すべきである。
       会長、社長、新任の当該スキーム推進担当の取締役3人、TOB関係の監査役2人は決議に参加していないと言われているが、利益相反する吉野、大崎らを除いた取締役で判断できる状態であったとも思われない。社内ではこれらの役員が実権を握っている以上、誰も逆らえない状態であり、取締役会決議を行った取締役3人、監査役2人(常勤が各1人)ではおよそまともな判断ができる体制であったとは思われない。
       第三者委員会の答申は信頼できない。1回2時間程度×6回の会合では形式的な確認しか出来ない。委員の人選も会社が行い、恣意的である。
     ④ アドバイザーの意見を聞いたと主張しているが、それだけでは信用できない。ファアネスオピニオン(株価算定):アビームM&Aコンサルティングも、上記会社が恣意的に選んだ会計であり、自己に有利な情報しか渡さない場合、適切なアドバイスができるとは思われない。
2 上記本件決議は、会社法831条1項3号の「株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき」に該当する。 

20091125日付文書提出命令申立書の補正書
 2010年(平成22年)11月10日
 
大阪地方裁判所 第4民事部 合議B係  御中
 
原告ら訴訟代理人
弁護士(代表)  阪口徳雄
 
頭書事件につき、原告らは、次のとおり、2009年11月25日付文書提出命令申立書を補正する。
 
1 文書の表示・趣旨
(1) GCAサヴァイアン株式会社作成の「株式価値算定書」ならびにその添付文書。
(2) 被告吉本興業株式会社作成の事業計画書。
2 立証趣旨
  本件株価算定の価格が著しく低廉である事実。
3 必要性
 (1) 乙1号証で提出されたGCAサヴァイアンの「株式価値算定書」は結論部分であり、それに至った理由書ならびにそれに添付した資料があるはずである。乙1号証だけでは、株価算定が適正な価格であるとは言えず、本件1350円が著しく低廉である事実を立証するために必要である。
 (2) DCF法において、事業計画書は適正に作成されていなければならないところ、恣意的に事業計画を作成しているとすれば、上記株価は正しく算定されていない。よって、本件1350円が著しく低廉である事実を立証するために必要である。
 

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