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地方財政法28条の2は削除するか又は修正すべき。ある自治体の相談にのっていると、地方財政法28条の2の古い条文にぶつかった。
最高裁の判例も最初はこの法例に違反すると違法、無効としたが、あとの判例では、実情に合わないと考え、この条文に違反しても、無効と解さない傾向にある。判例も混迷している。このような地方自治の趣旨に合致しない条文は地方財政法から削除するか又は、地方自治体の自主性に任せ、議会の議決があればOKとする条文に修正すべきであろう。
あまり市民になじみがない条文だが、自治体の担当者にとっては深刻な問題。問題提起をしたい。
第28条の2 地方公共団体は、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について、他の地方公共団体に対し、当該事務の処理に要する経費の負担を転嫁し、その他地方公共団体相互の間における経費の負担区分をみだすようなことをしてはならない。
条文も≪負担区分を乱すようなことをしてはならない≫という文言などは極めて法律用語ではない。普通なら≪乱してはならない≫となる。≪乱すようなこと≫とはおよそ法律用語とは思われない。この文言から≪乱すこと≫について、広く解するのか狭く解するべきか、極めてあいまいな用語。
この条文は地方公共団体相互間における経費の負担関係を規定した法律で、改正されたのは昭和35年当時。この条文が導入された時代は県が市町村に県の仕事を市町村に押しつけている事例が多いことから、それを阻止する目的で導入されたようだ。ところが、この問題を巡って平成の時代に入って、判例は混迷している。
(1)ミニパトカー事件
① 東京高裁(平成6年1月31日)
28条の2は地方公共団体間の財政秩序に関する原則を宣明したものであり、この規定により法定された経費の負担区分を実質的にみだすようなことはそれが直接であれ、間接であれ、いかなる形式によるものでも禁止されていると解される。たとえ任意の負担でもおなじ。そして警察の管理及び運営は都道府県の事務とされ、その経費については警察法37条において原則都道府県が支弁するとされている。よってミニパトカーの寄付することは同条に違反。
② 最高裁(平成8年04月26日)
町が県に対してミニパトカーを寄附することは、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互の間における経費の負担区分を乱すことに当たり、地方財政法二八条の二に違反する。
(2)三重県学校用地事件(平成15年11/14最高裁)
① 事件の概要
津市と被告三重県との間には、本件土地についての明確な使用貸借契約もない。すなわち、本件土地は、津市の所有に係る普通財産であるところ、津市は、契約書もないままに、被告三重県に対して、昭和49年9月20日以降、24年間の長期にわたり、契約期間の定めもなく、契約の終期も定めないままに、だらだらと無償使用させ続きている。本件土地については、[証拠略]「学校用地の使用管理について」と題する文書が存在するが、右文書は、本件土地の管理委託契約であって、使用貸借契約ではない。
違法状態を解消しないまま、昭和49年9月20日から今日まで、被告三重県に対し、無償で本件土地を使用させてきたのは、地方財政法の趣旨に反する違法行為であり、その是正がなされなければならない。
地方財政法27条や28条の2の趣旨は、県立高校の学校用地の取得を地元市町村に負担させる行為だけではなく、土地を無償使用させることも禁ずる趣旨と解すべきであるから、被告三重県が無償使用に甘んじ、被告津市長が被告三重県に対し相当の貸付料の支払を請求しないことは、違法行為である。
津市は、津市財産に関する条例14条の但書に、地方公共団体において公用もしくは公共の用に供するときは、無償で貸し付けることができるとの規定があることを理由に、無償貸付を合理化しようとしているが、使用貸借に関する明確な合意文書は存在しない。また、使用貸借であるとしても、地方財政法が津市財産に関する条例に優越することは明らかであって、地方財政法に反する無償貸与の扱いは正当化されるものではない。
従って、被告三重県は、津市に対して、本件土地の使用の対価として相当の買付料を支払うべきである。また、被告津市長が、被告三重県に対して、相当の貸付料を支払えと請求しないで怠っていることは違法行為であるという住民訴訟。
② 最高裁判例の内容。
津市と上告人三重県との間で、本件土地使用管理委譲書の授受をもって、上告人三重県が本件土地を前記高等学校の敷地として無償で使用することを内容とする本件土地の使用貸借契約(以下「本件使用貸借」という。)が締結されたと解するのが相当である。
原審が挙げるような理由では、上記判断を左右するに足りない。また、仮に本件使用貸借契約が地方財政法28条の2に違反するものであったとしても、そのことによって、直ちに本件使用貸借契約が無効と断定することはできない。
(3)昆虫の森事件(平成17年02月09日、東京高裁判決)
① イ 地方財政法28条の2は,法令の規定と異なる地方公共団体が経費を負担する結果となる行為すべてを一律に禁じるものではなく,法令の規定と異なる地方公共団体が経費を負担する結果となるような行為は,原則として負担区分を乱すものとして禁じるが,実質的にみて地方財政の健全性を害するおそれのないものは例外的に許容している。
ロ 県の行う「ぐんま県民の森整備事業」に関し,県が支出した用地取得費及び取得事務費相当額を村が分割して県に支払う内容の合意がされ,同合意に基づいてされた村の公金支出につき,前記公金支出は,地方財政法9条本文に定める経費の負担区分とは異なる経費負担ではあるものの,前記事業は同条以外の個別の法令により経費の負担区分が明示されている事務ではないこと,前記公金支出は村が自発的かつ任意に県に対して行う寄附であること,事業の内容に照らし,同県のうち同村が前記事業の事業地として選択されたことが不合理であるというべき事情は見当たらず,事業用地取得費を村が負担することが,同事業の適正な遂行に悪影響を及ぼすおすれを具体的に想定しがたいこと等を総合すると,実質的に見て地方財政の健全性を害するおそれがなく,同法28条の2に違反しないとされた事例
② 解説
イ 法28条の2の趣旨
地方財政法は、地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資するとを目的として(法1条)、昭和23年に制定されたものであり、地方公共団体は他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならないということなどを地方財政運営の基本としている(法2条)。しかしこの基本理念が徹底していないとされたため、昭和27年の改正により法に4条の5が追加され、地方公共団体が他の地方公共団体等に対し寄附金の割当的な強制的徴収をしてはならないものとされるに至った。法28条の2は、このような規定の趣旨を一層徹底するため、すなわち、地方公共団体相互間における財政秩序を適正化して地方財政運営の合理化及び健全化を図るため、昭和35年に新設された規定であり、割当的な強制的徴収に当たらなくても、地方公共団体相互間の寄附が経費の負担区分を乱すようなものであれば、同条によって禁止されることとなった。
ロ 「経費の負担区分をみだすようなこと」の解釈
法令の規定と異なる経費負担をする結果となる行為をすべて禁止す るという見解(ミニパト事件判決に係る一律禁止説)が一方では考えられ る。しかしながら、このような解釈は、時として財政自主権に対する配慮が 十分ではない結果になるうらみがあり、頑な過ぎるのではないかとも思わ れる。法28条の2は、「法令の定める経費の負担区分と異なる負担」をし てはならないとは規定せず、「経費の負担区分をみだすようなこと」を禁止 しているにとどまる。「経費の負担区分をみだすようなこと」に当たるかどう かの判断には、「みだすようなこと」という文句からして、地方財政の健全 性を損なうかどうかといった観点からする規範的な評価が含まれるという 解釈は可能であろう。
(4)三重県文化センターの駐車場無償賃貸事件(平成16年8月19日津地裁判例及び平成17年9月21日名古屋高裁判例)
① 事件の概要
原告らが、被告市長によってなされた本件土地の賃貸借契約や本件請負契約の締結は、被告県に文化センターの駐車場用地として使用させるためのものであるから、市が賃料等を支払うことは地財法28条の2に違反するとし、被告県に対し損害賠償等を請求し、被告市長が被告県に対する損害賠償等を怠っていることの確認等を求めた事案
② 津地裁判例
津市が文化センター駐車場の設置、管理に要する費用を負担することは、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互間における経費の負担区分を乱すことに当たり、地方財政法28条の2に違反するものであって、そのためにされた本件2土地の使用貸借契約の締結は違法なものといわざるを得ない。しかし、そうであるとしても、上記使用貸借契約は文化センターの駐車場のためという公益目的でなされたものであって、津市民の便益に資するところが大きいから、そのことによって、本件2土地の使用貸借契約が公序良俗に反し、無効となるとまで断定することはできない。
そうとすれば、被告三重県は、上記使用貸借契約に基づき本件2土地を無償で使用する権限を有するから、津市に対して本件2土地の使用料相当の不当利得返還債務を負わないということができる。
③ 名古屋高裁
以上の事実によれば、本件1土地について被控訴人津市長が本件請負契約及び賃貸借契約を締結したのは、既に作成されていた第3次津市総合計画に基づいた具体的な行政計画の実現のために、被控訴人三重県との協力の下に、総合文化ゾーンの形成の一環として文化センターの駐車場を整備するためであると解されるから、いずれも津市の行政目的をもって行われたものであるとみることができる。
被控訴人三重県が文化センターの敷地内で駐車場を確保する外に、これに加えて、上記のとおり、津市が総合文化ゾ−ンの形成の一環として、その行政計画に基づき、被控訴人三重県との合意の下に、文化センターの駐車場の確保を負担することとしたとしても、そのこと自体が、地方公共団体の経費の負担区分を乱す行為を禁じた地財法28条の2、あるいは、他の地方公共団体の財政に類を及ぼすような施策を禁じる地財法2条に違反する行為をいうことはできない。
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2010年11月16日
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