弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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大阪市の元職員が内部告発をしたことで懲戒解雇された。この処分の取消訴訟を本日(2/10)大阪地裁に提訴。弁護団は市民オンブズマンと労働事件専門の弁護士達。原告の公益通報行為の正当性、告発に至る手続きの妥当性から見て恐らくこの裁判は大阪市が敗訴するだろう。
訴状を原告弁護団から公表を前提に頂いたので要旨を公表する


第3 原告が本件内部告発をするに至った経過
 1 平成元年からの河川事務所での勤務
(1)原告は、平成元年71日に河川事務所に配属され、船に乗船して河川清掃業務に従事した。当時、原告が、最初に驚いたのは、河川の清掃業務を遂行中に引上げたゴミの中の財布やカバンの中身を先輩職員が物色し、取得していたことであった。
(2)原告は、配属後3ヶ月経過後に、主任に対して「警察へ届け出なくていいですか」と質したが、「昔から河川は警察に届けるなんて1回もあるか」と無視された。当時は、先輩職員が金目の物を領得していたが、原告は、一切受け取っていない。
(3)(略)
2 平成21年からの同所での勤務と内部告発を決意した経過
(1)(略)
(2)原告が、乗船し始めて2日目に同僚の職員が、川から拾い上げた財布、鞄を物色し始めるなど、従前と同様のことが繰り返されていた。
原告は、平成21年7月上旬にY管理主任に対して「こんなことをまだやっているのか。やめようと周りに話したことはないのか」と進言したが、「やめるにしても今までやってきて、今更やめることは難しい」という返事であった。(略) さらに、原告は、同年10月上旬にはO管理主任に対しても、同じく、清掃業務中に拾得物を私物化することを「やめることはできないのか」と進言したが、「現行犯でなければ捕まることはないので大丈夫ですよ。それに今まで周りに怪しまれたこともないし、疑われたことすらないから大丈夫ですよ。万一、警察で調べられても証拠がないので捕まることはないですよ」という回答であった。
(3)(略)
 (4)原告は、同僚らが違法行為に対して麻痺状態になっていると感じ、平成21年10月、河川事務所のM所長に対して、・・・職員が清掃作業中の拾得物を物色し、領得していると伝え、「こういった犯罪行為を止めさせてほしい」と求めたが、M所長は、「私はそういうことをしているとは信じられない」と答えた。・・・まともに取り合ってもらえなかった。(略)
そこで、原告は、通報の為には現場写真などの客観的証拠を収集することが必要と考え(略)平成22年5月、腕時計型小型カメラを購入して6月22日以降、撮り始めた。
3 本件証拠ビデオの撮影と内部告発
(1)平成22年6月24日、原告が、同僚のKR氏と2人で乗船し、清掃作業に従事していたところ、KR氏が、拾い上げた鞄のなかから10万円ほどの千円札の束が出てきた。同人は、船内にあった緑色の籠に移し、残りの鞄や財布を物色し始めた。原告は、小型カメラで撮影を開始し、内部告発する際の証拠としようと考えた。原告は、KR氏から半額を渡されようとした際、いったん断ったが、「それは困ります」と言われた。原告は、ここで無理に断れば、同僚から変に怪しまれて警戒され、その後の物色を止めてしまい、その後の撮影ができなくなると考えて、いったん、受け取った。原告は、落とし主がわかれば返却しようと考えたが、鞄から出てきた運転免許やカード類などの証明書が多数あり、落とし主を特定できなかった。そこで、原告は、同日の昼の休憩時間に河川事務所に戻った際に、同僚のN氏に、一連の事情を話し、「今から元の鞄に戻しに行く」と伝え、同じく同僚のK氏に、当日乗船していた船の前まで同行してもらい、同人が確認するなかで元の黒い鞄に戻した。原告は、その後も、証拠収集のための撮影を継続していた。
(2)(略)すると、9月22日、MR業務課長が、原告が以前に、不注意で壊したドアの撮影を始めた。
(3)原告は、平成22年9月23日、大阪市議に対して、物色現場を撮影したDVDの映像を渡し、一連の経過を説明した。同議員は、被告に対して、「河川事務所職員が河川清掃中に拾い上げた物を再利用している。また、中には現金も拾得物としてあり、それは職員でわけたりしている」という告発があったと伝えた。
(4)平成22年10月5日から、被告による職員に対する聞き取り調査が始まった。原告も、何回か聞き取り調査を受けた。(略)
(5)原告は、10月25日、被告のコンプライアンス委員会に一連の経過を伝えるとともに、10月26日、マスコミに自らが撮影した映像を提供した。11月2日以降、原告が提供した映像が、テレビ等の報道機関によって放映された。
(6)被告は、ここに至り、ようやく市長が記者会見して、放映内容を含めて事情聴取を行う、原告にビデオの提供を求めて徹底調査するなどの方針を示した。
(7)(略)11月18日「環境局不祥事案調査チーム」を設置し、調査を行った。
 
第4 懲戒処分事由該当性がないこと
 1 処分理由のうち約5万円受け取りについて
   処分理由は、原告が平成21年6月26日、業務遂行中に拾得した10万円を同僚と分配のうえ、約5万円を受け取り、その後廃棄したという点をあげている。しかし、第3の3で述べたとおり、原告は、内部告発の証拠収集目的で、同僚が拾い上げた鞄や財布を物色しているところの一部始終を小型カメラで撮影していた。そして、同僚から約10万円のうちから5万円を渡すと言われ、一度は断ったが更に受け取るように言われ、強行に拒絶すると相手に警戒され、その後の撮影続行ができないと考え、後で落とし主がわかれば送ろうと思い直して、約5万円をいったん受け取った。結果的には落とし主がわからなかったので、同僚を証人にして元の鞄へ戻したのである。
したがって、原告が約5万円を受け取ったのは、内部告発時における証拠収集目的であったのであり、不法領得の意思,すなわち所有者を排除し、自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思がない。
2 処分理由のうち小銭のジュース使用、有価証券拾得等について
(略)
 3 処分理由のうち暴言・恫喝、器物破損について
しかし、原告は、指摘されるような同僚を呼び出して怒鳴りつけたり、暴言や恫喝をしたことは全くない。原告は、この点について、本件懲戒処分前に事情聴取もされていない。被告に対して、問題とする行為の日時と内容を具体的な特定を求める。
また、器物損壊についても、本件懲戒処分前に事情聴取もされていない。 
第5 原告の行為は、正当な行為である。
1 (略)
2 本件において、河川事務所では、長年にわたり職員が業務遂行中の拾得物の私物化している実態が続いていた。これは、河川事務所の所長自らが拾得物を受領し再使用したり、職場内で互いに異を唱えることができない雰囲気があり、いわば組織ぐるみで違法行為が行われていたことによる。(略)
3 原告は、平成21年6月に河川事務所に配属されて以降、河川事務所の主任や所長に対して、繰り返し違法行為の中止を求めたが、とりあわれなかった。また、河川事務所における違法行為は、長年にわたり組織ぐるみで行われており、手元に証拠がなく告発しても組織ぐるみで口裏あわせや証拠隠滅がなされ、実態の解明と違法行為の是正は困難であった。
そして、不正行為の実態解明と違法行為の是正のために内部告発することは(略)本件の内部告発のためのビデオ撮影による証拠収集行為は、必要不可欠な行為であった。(略)
また、原告の現場撮影のビデオという動かぬ証拠に基づく内部告発によって、平成22年11月4日から12月10日までの間、被告の管理職員がすべての船に乗船して調査を実施したところ、鞄32点、財布44点、ゴルフバック19点(合計109点)、現金12,966円が収集され、全て警察に届けられた。このように、原告の内部告発によって拾得物が市民の手に戻るようになり、市民にとって大きな利益をもたらした。
4 本件において、懲戒処分事由とされる原告の行為のうち、①5万円を受け取ったこと、②ICOCA、YAMADA電機のカードを受け取ったことについては、原告が、内部告発のための証拠収集としてビデオ撮影を続行する目的に出たものであり、かかる証拠収集のための行為は、公務員として正当な業務による行為であり、違法性がなく、懲戒処分の対象とならない。 
第6 裁量権の濫用
1  本件懲戒免職処分は、①原告が内部告発をしたことによって、被告の河川事務所における長年にわたる違法行為の実態の解明と是正することができ、結果的に市民の利益と被告の信頼回復に多大な貢献をしたという考慮すべきことを考慮せず、また、原告の内部告発により被告の不祥事、醜態が白日の下にさらされたことに対する被告内部の反発の声に配慮した報復、見せしめ目的で行われたものであって、考慮すべきでないことを考慮したものとして、裁量権を逸脱、濫用したものである
 
2 本件懲戒免職処分は、内部告発の報復、見せしめ目的であること
原告の内部告発により被告の長年にわたる不祥事、醜態が白日の下にさらされた。当然、このことに対する河川事務所の職員らを初めとする現場の反発は凄まじかった。原告は、本件懲戒処分後に、初めて、河川事務所の職員が原告から怒鳴られたり、暴言、恫喝をされたという上申書の提出があったと聞かされた。原告が、このような行為を行っていないことはすでに、述べたとおりである。
しかるに、被告は、現場の職員の反発の声に対する配慮と今後の同様の内部通報を阻止するため、いわば見せしめとする目的で、事実に反する同僚らの上申書について原告に弁明や反論の機会を与えることもなく、かつ、器物損壊など、これまで被告より全く問題とされていなかった行為を針小棒大にとりあげ、本件懲戒免職処分に及んだものである。すなわち、被告は、内部告発をした原告を保護するのではなく、逆に、原告に対して全く弁解の機会も与えることなく、また、それ以前には全く問題とされたこともない行為をも理由に加えて、本件懲戒免職処分に及んだのである。
「言ったものが損をする」「黙っている方が得」という状況を生み出し、公益通報保護の流れに大きく逆行するものである(略)
3 内部告発が違法行為の解明と是正に多大な寄与をしたことを考慮していないこと
原告が、本件処分の対象とされた約5万円や有価証券を一時的な受け取ったのは、相手に警戒されずに拾得状況の証拠となるビデオ撮影を継続する目的であったのであり、領得目的は全くなかった。
原告が撮影したビデオとそれにもとづく内部告発があったからこそ、被告の調査が行われ、長年にわたる河川事務所の違法行為の是正が図れ、河川の浮遊物が市民の手に戻るようになり、市民に多大の利益をもたらした。原告の内部告発がなければ、被告河川事務所の自浄能力のなさからすると、違法行為は現在も継続していたのであろう。本件処分にあたっても原告の内部告発による功績は極めて大きなものとして評価されるべきである。(略)
4 本件懲戒免職処分は均衡を失して重きにすぎること
 (略)なお、被告大阪市市長は、原告の懲戒免職処分について記者会見で、内部告発を軽減材料とする一方で、同僚への暴言や事務所内の備品の破損も判断材料としたとし、「軽減につながる行為と加重要素の差し引きで、加重が上回る」として懲戒免職処分としたと述べている。しかし、被告のいう加重要素が事実に反するものであることは既に述べたとおりであり、また、その点を置くとしても、被告河川事務所における長年に違法行為是正に多大な貢献をしたという軽減要素と加重を差し引きした結果として、一番重い懲戒免職を選択し、より軽い処分を選択しなかったのは明らかに社会通念上の妥当性を欠くものであり、裁量権を逸脱・濫用したものである。
5 本件懲戒免職処分は平等原則に違反すること
  (略)
6 以上、本件懲戒免職処分は、違法であるので、取り消されるべきである

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