日本経団連の米倉弘昌会長は11日の記者会見で、原発事故による巨額の賠償が想定される東京電力の経営問題について「国有化というのは全然ない。(国が法律に基づいて)民間事業者としての東電を支援するということだ」と述べ、一部で取りざたされた東電の国有化論をけん制した。
原子力損害賠償法に定められている、大規模な天災時には賠償を免責する条項は世界共通の考え方と指摘。「国が全面的に支援するのは当然」との認識を示した。 さらに「国有化論に政治家が触れたことで、どれだけ東電の株価が下落したか。正しく世の中や法律を理解して発言しないと日本の経済や産業、世界の原子力産業が全部だめになる」と語った。
この問題では、枝野幸男官房長官が東電への免責適用を否定。国の出資についても「否定された選択肢には入っていない」と発言している。
福島第1原発の事故原因が『異常に巨大な天災地変』によるとなれば東電は責任を負わない。国が責任を負うことになる。
原子力損害の賠償に関する法律
第3条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない 。
経団連の会長の今回の福島原発事件を「異常に巨大な天災地変」であり国が責任を負うべきという説には同意しがたい。
『異常に巨大な天災地変』の解釈は『一般的には歴史上例の見られない大地震、大噴火、大風水災等』としている。
平成10年10月8日原子力委員会の『原子力賠償制度専門部会』の報告(案)第4項「免責事由(異常に巨大な天災地変)において解説されている。
経団連会長の『大規模な天災時には賠償を免責する条項は世界共通の考え方』と言うことは事実ではない。
ドイツ,イギリス、スイス、カナダ、アメリカ連邦法など国により「異常に巨大な天災地変」が免責事由にならない国の例も報告されている。むしろ自然災害で原発事業者を免責している国の方が下記レポートでは少ない。
これは原子力損害のような大規模被害の際には、企業の利益よりも被害者救済を優先すべきという理由によるという。
今回の地震はマグニチュード9という『予想を越えた地震』であり、津波も「予想を越えた津波」と言われている。
マグニチュード9の地震は確かに大きな天災地変といえるが、『歴史上例の見られない大地震』とも思われない。
今回の地震等が原子力損害賠償法3条1項に言う『巨大』ではあるが、『異常に』という文言にも該当しない。
一般的な地震、津波の巨大さと、今回の福島原発の事故がどうして起こったかとは別である。
マグニチュード9のそれは地震そのものの規模を表すもので東電福島第一原発に届いた地震動は、重力加速度が500ガル強でしかなならず、中越沖地震で柏崎刈羽原発が受けた地震動の半分以下とも報道されている。津波も近くの女川原発は同じ津波でも福島原発のような事故には至っていない。
単純比較はできないが、地震、津波の一般的な巨大さと東電福島原発の地震・津波による具体的発生原因=どのような負荷が生じ、どうして、今回のような事故に至ったかとは別である。更に地震、津波後の対応の不味さなども指摘されているが、これらの解明なしに地震・津波の一般的な大きさだけで『異常に巨大な地震・津波』と断定し東電の責任を免責する、経団連の会長の発言は正しくはない。
但し、私は東電に全ての責任を負わせるべきとは思わない。原発は自民党政権下で国家が推進してきた政策である。原発の利益を多くの国民が享受していることも事実であるからである。
最終的には、今回の損害額が巨額になる以上、原子力損害賠償法16条により国家が責任を負う定めになっているが、財界のトップ達が東電の責任を免責しようとする姿勢には反発を感じる。
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