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日本民主法律家協会という法律家の団体がある。その団体が「法と民主主義」という雑誌を月1回発行している。
その団体が50周年記念の「法と民主主義」で特集を組むという。
≪法律家運動各分野のリーダーと目される50人のベテランに、メッセージを依頼し、これを受けた若手50人をレシピエントとして受け止めていただいて、「世代を超えた書簡集」とする企画≫という。
今週の初めに編集長の沢藤統一郎弁護士から
≪株主オンブズマン運動は、市民が株主という形で企業をコントロールする試みだ
と思います。これまでは、民主主義的な政治運動は別として、労働組合運動と消費者運動が試みて達成し難い課題に取り組んでいるように見えます。 企業自身が、企業倫理やCSRを語らざるを得ない時代の中で、この運動の発展 の展望は開けていると注目しています≫と原稿依頼であった。 沢藤弁護士の上手い話しに乗せられ原稿を承諾した。 言わば年寄り弁護士の「遺言」特集。自己満足のようなもの(笑い).
若い弁護士が読んでくれるかどうかはわからないが、総括するには良い機会と思い、原稿を書いた。以下その原稿である
1996年2月に、「(有)株主オンブズマン」を森岡教授(関西大学経済学部教授)松丸正弁護士らと結成した。この300万円の資本金はハザマ株主代表訴訟で入った弁護士報酬が原資だった。ゲリラのようなもので「敵」からの武器(資金調達)で生まれた市民団体であった。
(注)当時はNPO法人組織がなかったので、多くの株主の株式を登録してもらう関係で、責任主体がはっきりする有限会社にした。社長は森岡孝二教授.当時、企業を監視する珍しい会社と報道された。その関係もあり上場企業の250社の株主が登録してくれた。現在はNPO法人。
同年6月、破たんした住専「日本住宅金融」経営陣らに株主提案を起こしたのを手始めに、高島屋、野村証券、神戸製鋼所の総会屋への利益供与事件、住友商事2004億円銅取引事件、リコール隠しの三菱自動車工業、橋梁談合事件、と次々数多くの株主代表訴訟などを提訴した。
この10数年間は、バブルが崩壊し日本の企業のコンプライアンスの破綻が一挙に噴出し、社会が企業の勝手な論理を許さない時期の始まりでもあった。
これらの代表訴訟は、従前の判例・学説などがなく、弁護団が事件に相応しい新しい法理論を主張することばかりであった。
一般的に若い「理論的」な弁護士ほど、法的に物事を考えすぎ、新しい裁判に消極的になる傾向が強い。ハザマの株主代表訴訟のときに、ワイロを払っても企業が最終的には儲けているのだから「損害」がないという「高邁な法理論」を展開する弁護士もいた。そんな非常識な法論理を裁判官がとればそれは世間の笑い物と笑い飛ばした。
おなじように株主代表訴訟を勝ち負けにこだわることが間違いということを繰り返した。
「株主代表訴訟は負けてモトモト、勝てば儲けもの。これらの裁判は企業内で行われていることの違法・不正行為の実態の情報公開と、企業の常識(=市民から見ると非常識)を公開の法廷で論争・追及すること、再発防止にあり、企業改革の手段」と言い続けた。
裁判は、法的土俵上での争いではあるが、「法論理」だけで終わるわけではない。そこには道理、常識も支配する。しかし、生のままの道理、常識ではなく、道理、常識に裏付けされた新しい法論理の構築の必要性を強調した。
多くの株主代表訴訟では、役員は責任を認め、株主が推薦する委員を含む第三者委員会を立ち上げ、再発防止策を提言する和解で終了することが多かった。
2002年、雪印乳業に対する株主提案を行い、消費者団体出身者の初めての社外取締役が選任されるなど、実際の企業の改革にも結びつける活動も行った。住友銀行・ソニーの役員の報酬の個別開示請求も当時は経済界や御用学者などから「プライバシーの侵害」などと批判されたが最近では「常識」になりつつある。
『 株主オンブズマン 経営責任追及10年 利益供与・談合・粉飾…代表訴訟など30件 「企業変わる兆し」』 という記事が2006年2月大阪読売新聞の社会面のトップに掲載された。
この中で「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム」事務局長の川内克忠・関東学園大法学部長は、「株主オンブズマンは、実践的な活動で株主の社会的役割を認知させ、経営者に襟を正させる役割を果たした。意思決定の手続きに第三者機関や社外取締役を関与させるなど、企業統治のあり方に与えた影響は極めて大きい」と評価してくれた。
以上のような成果だけではなく、生保、ゼネコンが自民党に政治献金をするのは取締役の善管注意義務違反とする株主代表訴訟を提訴したがこれは完全に敗訴した。八幡献金最高裁判例の変更に挑戦したが自公政権が続いている時代であったし、その権力の意向を「そんたく」した司法の壁も厚かった。(この問題は政治資金オンブズマンに引き継がれている)
ところで、これらの代表訴訟では、総会屋などの株主代表訴訟はミンボー弁護団、談合なら独禁法研究会の弁護士、消費者に関する代表訴訟ならそれに詳しい弁護士・・・に要請し、弁護団を作ってもらった。株主側の弁護士は合計で百数十人以上になる。これらの弁護士たちは即戦力にはなるが、事件が終わると「古巣」に戻り、代表訴訟等の継続性に欠けた。
2010年6月、株主の立場から常に行動する「株主の権利弁護団」が結成された。彼らは50期代から60期の若い弁護士たちであるが、次々と新しい株主代表訴訟等を行っている。
株主権利弁護団HP http://kabunushinokenri.com/
朝日新聞がインターネット上で発行している「法と経済のジャーナル」に、毎月原稿を書いている。http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/
株主オンブズマン時代になかった新しい弁護士たちが生まれている。
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2011年08月09日
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