弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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陸山会判決は何故水谷建設1億円を認定したか。
 
1 裁判官の事実認定は普通なら慎重
 
小沢議員個人からの4億円の借入の不記載、土地代金3億円余りのカネの支出を陸山会の平成16年度収支報告書への虚偽記載は有罪になるだろうと予測していたが、水谷建設の小沢秘書側への1億円の認定には驚いた。
 
一般的な裁判官の認定と違った印象を持ったからである。
 
一般的な裁判官の認定は控えめであり、慎重である。何故なら積極的に認定をすると高裁でその事実認定で破棄される可能性があるからであり、有罪に必要な範囲以上にあえて認定する必要もない場合は控えめ認定が一般的だからである。
 
普通なら石川被告人らの虚偽記載は1億円を認定しなくも立証でき、有罪にできた。水谷建設の部分は虚偽記載の動機の一部にすぎないからである。構成要件事実の認定は避けて通ることはできないが動機の一部である以上、石川秘書の説明だけでも恣意的な虚偽記載であると有罪にできるからである。
 
水谷建設では小沢事務所側に5000万円を交付するという話で5000万円準備したことは水谷建設内部の関係者の証言でほぼ間違いがない。
問題は水谷建設の当時の社長が平成16年10月15日にホテルで5000万円を石川秘書に本当に渡したかどうかである。準備された5000万円が石川秘書に交付されず、元社長がネコババしてしまったのではないかと弁護側が反論するなど5000万円を交付した証拠が水谷元社長しかなかった。
 
これを表面的に見ると、証拠が≪伯仲≫しているので、石川秘書が5000万円を貰ったと認定することも可能だし、他方石川秘書が貰った事実は、証拠不十分とすることも可能であった。ところが、本件裁判官達は証拠不十分とせず、5000万円を貰ったとあえて認定した。
 
2 供述以外の直接証拠がない場合で1対1の場合は必ず『疑わしくは罰せず』で良いのか。≪一部ジャーナリストの本判決批判は一面的≫
 
江川詔子さんなどの一部ジャーナリスト達は、5000万円を渡す側の証言だけで金の授受を認定するは証拠に基づかないという批判をしている。
 
9.26陸山会事件の判決を聞いて
 
しかし、江川さんが言うほど簡単ではない。
このような現金の交付が認定される場合の証拠とは、
 
①渡した側も貰った側も認める場合
②現金を渡す現場が映像か録音テープが残っている場合
③現金を渡す現場を第3者が目撃している場合
以外に普通が存在しない。
 
このような場合に全て客観的証拠を要求すると、全ての密室での金の受け渡しは立件できない。官僚、政治家の賄賂などの受渡しは1対1で行い、渡した側はいくら自白しようが、貰った側は完全否認すれば全て無罪になるからである。
 
江川さんが批判していたオーム事件などで麻原の指示があったかどうかは、事件によって直接指示を受けたと相共犯側は自白していたが、麻原が直接指示した現場のテープとかはなかった。しかし江川さんはさかんに麻原の責任を論じていた。それは直接証拠が無くても間接事実の積み重ねにより、麻原の指示を認定したのであろうと江川さんのコメントを当時テレビなどで聞いて、≪さもありなん≫と思った。
  
本事件では受け渡し現場を直接証明する証拠は金を交付した元社長以外にはなかった。にも関わらず石川側が受け取ったという認定した裁判官の心証形成には少なくても次のような事情があったことが検討されなければならない。それは直接証拠だけではなく、それ以外の間接事実の証拠の有無についての検討である。
 
その間接事実とは
() 小沢議員の4億円の原資に疑いがないかどうか。
() 小沢事務所と東北ゼネコンとの関係から金を要求することはあり得るか。
であった。
 
本判決は上記()小沢の4億円の原資に疑問を述べ、()小沢事務所と東北のゼネコンの腐れ縁については詳しく詳細に述べている(これは略)
 
3 元秘書達の客観的証拠への≪虚偽≫弁明のひどさが最大の間接証拠。
 
私はそれ以外に、裁判官達は、石川秘書達の公判廷における弁明に呆れ返り、その上で、石川秘書達の証言=水谷建設からの金員を受け取らなかったという弁明も全く信用しなかったのではないかと思う。
 
秘書側が明白な客観的事実について、違う弁明を次から次にするから、彼らの言うことを、およそ信用できなくなったのでないかと思う。他方で、判決は元社長が嘘の証言をする≪可能性≫があったかどうかの検討があり、元社長が≪嘘≫の証言をしていないとなると、やはり秘書側は明白な証拠でも≪嘘≫を言っている以上、密室の事実なら尚更≪嘘≫を言っているという心証を形成したのでないかと思う。
 
収支報告書の記載に検察側の嫌疑に一応の理由があると思われる場合に、本来はその理由は元秘書側の土俵上にある事実なのだから、何故、そのように記載したかの理由を合理的に説明しなければならない。もしそれを説明しない又はできないとなると、その人達の弁明が≪嘘≫の弁明と裁判官に写る。
 
あるA事実の弁明が≪嘘≫だと思われるだけならA事実の弁明が信用されないだけであるが、同じ様にB,C、Dの明白な客観的事実まで合理的に説明しない、できないとなるとA、B,C、Dの弁明が信用されないだけでなく、一番重要な他のEの弁明まで信用されない可能性である。
 
認定した裁判官達の≪本音≫が不明だが、しかし、裁判官の経験、常識について、以前に次のようにブログに書いた。
 
「・・・・他方では、裁判官の常識では水谷建設の1億円を利害関係がない水谷の関係者が検察や公判で供述・証言することは、普通はあり得ないと思っている。大久保は西松建設事件で、東北の談合を仕切っていた者と連携してゼネコンに金を要求している供述調書などはバッチリ採用されているのだから水谷建設の1億円を認定する可能性も高いのでないか」 と。
 
陸山会事件で元秘書達の嫌疑と秘書側の弁明の≪お粗末さ≫は次の通りであった
 
① 石川秘書の嫌疑は、平成16年度の陸山会の収支報告書に記載のある『平成16年10月29日4億円』の記載は『平成16年10月29日りそな銀行から借り入れた4億円』の記載であって『小沢議員からの現金4億円』ではないという嫌疑であった。
 
 その間接事実の一つとして検察は
 
 『りそな銀行から陸山会の預金4億円を担保に、小沢個人がりそなから4億円を借りたがこの事実は、土地購入費用は小沢議員が銀行から借りてそれを陸山会に貸したという隠ぺい工作をした』と主張したのに
 
石川秘書は公判で
 
『事務手続上は、陸山会が小澤一郎から合計8億円の借入を行ったことになりました。然し、りそな銀行からの4億円の借入は、陸山会の資金を定期預金にして、それを担保に借りただけであり、本当の借主は陸山会であり、小澤一郎は名義借に過ぎません。平成173月に収支報告書を作成するとき、小澤先生からは実質的には4億円しか借りていないので、「小澤一郎、4億円」とだけ記載したのです』と弁明した。
小澤一郎がりそな銀行から4億円を借り、それを陸山会に転貸したことは明白な客観的事実。
 
石川秘書も認めるように『事務手続上は、陸山会が小澤一郎から合計8億円の借入』したことも客観的事実。この客観的不動の証拠に対して『名義借りであるから小澤先生からは実質的には4億円しか借りていないという弁明が名義借りであっても、借りたことは事実である以上、≪およそ信用できる弁明≫になっていない。
 
しかも『4億円の借入は、陸山会の資金を定期預金にして、それを担保に借りた』という具体的理由についても、『車を買うのに金があってもローンで買うのと同じ』という説明を裁判所でしている。車を買うと同額の金額を担保にいれて、同じ金額をローンにして買うバカはいないが、このような弁明をしなくてはならないほど何かを隠すための≪嘘≫と写る。
 
週刊文春が平成19年に本件土地の購入資金の原資について、質問したら、池田秘書は『銀行からの借入』と回答した。ところが、この回答について公判では、石川秘書は池田秘書に【小沢4億円借入】は引き継ぎをしていないし、池田秘書は池田秘書で、必死になって自分の頭で考えた結果回答したという弁明をする。その上石川秘書は『池田秘書は勝手に回答した』ので石川秘書は知らないし、相談もしていないという弁明をする。
 
およそ石川秘書らの弁明が≪嘘に嘘を重ねている≫と写る。
 
② 石川元秘書は『平成16105日から同月29日、土地取得費用等として合計352616788円を支払ったのに、同年の収支報告書にこれらを支出として記載しなかった』が石川秘書が本登記時(平成17年1月5日)に記載すれば良いと思ったと弁明している。
 
これなども、土地代の支出のうち手付金は平成16年10月5日、残金は10月29日に売主に支払っていることは客観的事実。土地代の支出時期は平成16年であるから平成16年度の収支報告書に記載するのが当たり前。それを352616788円の土地代を本登記時に支出したとして記載した理由が問われているが、殆ど石川秘書の説明は弁明にもなっていない。
 
③ 平成16年10月29日、民主党岩手県第4区総支部から7000万円、小沢一郎政経研究会から7500万円の各寄附を陸山会が受けたのに、平成16年分の収支報告書にこれらを収入として記載しない事実が嫌疑である。
 
これについては陸山会の収入であるとか、寄付を受けたなどという認識は全くなかったので記載しなかった。 私は、陸山会、民主党岩手県第四区総支部、小沢一郎政経研究会などの小澤先生関係の団体の通帳及び銀行印も保管して、団体相互間の資金のやり繰りを担当していた。 要するに財布は一つだったのです。
 このように、いわば身内の間におけるやり繰りに過ぎなかったので、収入とか支出という認識もなく、収支報告書にも記載しなかったのです。寄付と言う意識もありませんでした。右のポケットから左のポケットに金を入れ替えるようなものという弁明に至っては理由にもなっていない。
 
以下各被告の弁明の≪お粗末さ≫を省略する。
 
4 客観的証拠に反するお粗末な弁明ならしない方が良い。  
 
明白な客観的事実についてそれと違うことを弁明する場合は、『なるほど、そのような理由があって、そのような行動をしたのか』と誰もが信用してくれる場合でないと、かえってマイナスに作用することがあることは、弁護士であれば、日常裁判で経験することである。
 
本件でも4億円の虚偽記載や土地代を平成16年度の収支報告書に記載しない事実など客観的な証拠については隠ぺいしていましたと素直に認め、その上で、水谷建設の事実を否認するなら、裁判官も、別の認定になった可能性もあろう。
しかし、常識はずれの弁明を次から次に繰り返すものだから、他の証言までも、およそ平気で≪嘘≫をいう人物と評価されてしまった点の検討が江川さんらの意見には完全に抜けている。  
裁判官の個性であたかも水谷建設の1億円が認定されたと批判する前に、石川秘書らの弁明がおよそ弁明になっていない点の検討からまず開始しないと本判決の評価を誤る可能性あり。
5 高裁での予想
石川、池田の元秘書の有罪は変わらないだろう。大久保との共謀も高裁で何か特別の事情がない限り、有罪であろう。
 
しかし水谷建設からの1億円は不透明。
一審の有罪の前提であった水谷元社長を一審の裁判官のように直接水谷元社長の応答態度やその証言内容、反対尋問に応答する態度などについて直接吟味することができないことがどのように影響するか。
それと同時に、伝統的な裁判官は上記1で述べたように認定に慎重であることや、水谷建設1億円を認定しなくも有罪にできる場合に、あえてそこまで認定するかは不明だからだ。
 
 
 
 

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