弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

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ネットにおける誤情報=ガセネタは何故、流行しやすいのか。 
―陸山会事件の土地の登記の遅れが農地法に起因すると言う誤情報の検討―
 
陸山会が平成16年10月29日に仮登記をし、本登記が平成17年1月7日になったのは本件土地が農地()であるから、2カ月〜3カ月の遅れは農地法の許可の遅れであり、秘書達が恣意的にしたのでないという誤った情報が、私のブログのコメント欄に相当数、寄せられた。
 
≪多くの方のコメントについて、かなり誤解、思いこみなどが見られます。なお、刑事公判廷で石川秘書ら弁護団、小澤弁護団が≪農地であった為に農業委員会への届出受理通知の遅れ≫をこの遅れの原因だと主張しますかね??? 2010/11/3(
と反論した。
 
予想通り、石川秘書の弁護人の冒頭陳述でも農地法の問題で本登記の遅れが生じたという主張をしなかった。否、出来なかったのである。
 
最近の指定弁護士の冒頭陳述で農地法の問題で遅れたというのでないことが明白となった。
本件土地の現況は宅地であるが登記簿上の地目が畑であったため、所有権移転登記をするためには農業委員会への届出が必要であるところ、売主である本件土地売主は、売買契約日当日に受領した陸山会が押印済みの「農地法第5条第1項第3号の規定による農地転用届出書」を106日に世田谷区農業委員会に提出し、同月7日付の農地転用届出受理通知書をそのころ受領した。また、同月12日には、石川らと共に本件土地の境界を確認し、同日までに本件土地の引渡し及び所有権移転登記の準備を完了した。
 
新聞、週刊紙などではさすがに、農地法の許可の遅れ説はなかった。(日刊ゲンダイは別)どうしてネットでは誤情報=ガセネタがこれ程はびこるのか、何故このような誤報=ガセネタがシツコク寄せられるのか、疑問に思い、調べてみた。
 
ネットで検索すると、以下のインタネットへ掲示板への書き込みがヒットする。
01. 2010510 18:59:52: vAZj6ZdQho
「土地購入の期ずれ」ですが、04年10月時点で地目が「畑」なら、実務上所有権移転の本登記が出来るのは、早くて05年01月になります。

農地売買の通常の手順は 売買契約(所有権移転仮登記)→農地法5条の許可申請農業委員会の承認東京都知事の許可(許可指令書の交付)所有権移転の本登記農地法の許可は、申請から許可指令書の交付まで通常2ヶ月以上を要します。(どんなに頑張ってもこれ以上早くなりません。)そして上記の都道府県知事の許可指令書を添付しないと、所有権移転の本登記は受理されません。従って、04年10月に売買契約を結んだ農地の所有権移転登記を05年01月にするのは当たり前で、これ以前にするとしたら、その方がむしろ不適法な手続で許可を得たことが疑われます。私、行政書士です。農地の譲渡(農地法5条の許可申請)は、多数取扱っています。
 
おそらく、この『私,行政書士です』という『専門家の情報』を信用したのであろう。「農地説」が次々とネット、掲示板、ブログに登場するようになったように思える。 
 
例えば「反戦な家づくり」さんのブログに同じ内容が掲載されている。
【陸山会】世田谷の土地の登記簿は?2010-05-21(Fri)
 
「永田町異聞」さんのブログでも同じように取り上げられた。
検察審に知ってほしい小沢土地取引の真実20101001()
 
売買を実行しようにも、できない事情があったのです。 それは【表題部】の【②地目】が「畑」になっていることで分かります。地目が「畑」の場合、農地法5条によって、直ちには売買できないのです。 
 
この規定は、農地が市街化地区であるか否かによって異なり、市街化地区の場合は、地元の農業委員会に届け出、受理通知書を発行されるまで、所有権移転はできません。・・・・・・・・・したがって041029日に代金全額を払っていても、登記は「所有権移転請求権仮登記」どまりでしかなかったのです。 
私があまり他人のブログを読む習性がない。コメント欄で永田町異聞氏のブログを勧められたので読んだ。同人のブログは、『自分が信じたい情報』を誤情報と知らずに書いたブログでしかないとの印象を持った。元新聞記者とは思われない誤解した内容であった。
 
もっと驚いたのは、私が農地法の問題でないとブログに書いた後でも、日刊ゲンダイまで、このガセネタに惑わされていたことだ。この記事のあと日刊ゲンダイを読むのはやめた。ここまで小沢氏ベッタリでは新聞の役割は終わったと思ったからだ。
 
集中連載【国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構(3)】問題の「期ズレ」が起きたのは世田谷の土地が「農地」だったからだ。2011121 掲載
 
よくあるケースで「何が疑惑なの?」とクビをかしげる不動産業界
「(04年に)土地代金を支払っているのに、本登記を翌年(05年)にずらしている」 ・・・・・世田谷区の別の不動産業者はこう語った。「仮登記という、普通はやらないことを小沢さんがやったのは、農転(農地転用)の手続きがあったからと考えるのが妥当です。・・・・恐らく、契約をしてカネも全額支払おうとしたが、農転の手続きが終わっていなかったから、仕方なく仮登記をしたのでしょう。こういうケースはいくらでもあるし、問題の土地の登記簿には何ら問題点はない。どの業者に聞いても、そう言いますよ」 ・・・・しかし、許可に手間取り、・・・・最終的な売買契約完了が年をまたぎ、翌年1月7日になったとしても、特別不自然なことではないのだ。要するに、「期ズレ」の疑惑は、どうでもいいささいな、とってつけた疑惑なのだ。 
 
このようなガセネタがネットではびこる条件がどのような場合にあるのか思いつくままに指摘したい。
 
条件1 真実の情報の≪不確かさ≫である。
 
真実の情報が開示されると、ガセネタや間違った情報は発信されない。仮に発信されても、それはその真実の情報の≪読み間違い≫とか≪誤解≫レベルの話であり、その間違った情報を見た他人により指摘され間もなく是正される。その場限りの間違った情報で終わる。
陸山会事件の今回のガセネタは、真実の情報を有する小沢事務所から、何らやましいことはないと言う弁明だけで、何故登記手続きが遅れたかの説明が一切なかった。その結果、誰かが、上記の通り、本件土地は農地であることから農地法の許可手続きの遅れという情報を流した。それが小沢の支持者や検察の捜査に批判的な人達から、支持された。しかし真実は指定弁護士の冒頭陳述の通りであり、10月29日には農地法上、本登記は可能であった。情報の不確かさがこのガセネタの根本背景。
 
条件2 そのガセネタの一部に≪信頼できる内容≫がある。
 
 一般的に、ネット上で≪信頼情報≫となるためには、その情報に信頼できる何らかの≪一部真実≫が無ければならない。その情報の受け手から見て、≪さもありなん≫≪そうだったのか≫などと納得出来得る情報が一部混じっていないと拡大再生産するガセネタにもならない。多くの人達が納得する為には、何らかの自らの経験、知識に裏付けられていることが必要である。
今回の場合は、本件土地が『農地』であるという真実であり、普通の農地であれば経験即上、登記の遅れは2カ月から3カ月がかかることは多くの人達は経験する≪真実性≫の存在がある。以下、コメントされた方などは自分の経験や知識から≪農地に自信≫があり、その説明をされたのであろう。
Aさんのコメント
≪農地売買の通常の手順は ①売買契約(所有権移転仮登記)→②農地法5条の許可申請→③農業委員会の承認→④東京都知事の許可(許可指令書の交付)→⑤所有権移転の本登記
農地法の許可は、申請から許可指令書の交付まで通常2ヶ月以上を要します。(どんなに頑張ってもこれ以上早くなりません。)そして上記の都道府県知事の許可指令書を添付しないと、所有権移転の本登記は受理されません。従って、04年10月に売買契約を結んだ農地の所有権移転登記を05年01月にするのは当たり前で、これ以前にするとしたら、その方がむしろ不適法な手
続で許可を得たことが疑われます)
Bさんのコメント
登記原因が「平成1717日売買」になっていて、この日に農地法の許可証を受けたことを指します(この日付は申請人が動かすことはできません)。先生の指摘は、あるいは最短の登記申請可能日を、指し示してるいても、登記された原因日付の説明ができませんから、本件の恣意性、脱法性と関係ありません。まさか知ってて書いてるのでしょうか?
Cさんのコメント
転用届けは全く関係ありません。一般的には上記の通り許可書の到達日時が所有権移転の日になり、到達日ですから当事者がいじることはできません。ブログ主は受理通知書で登記できると書いてます。世田谷を管轄する登記所のローカルルールでそういう特例もありますが、あくまで一般的には許可書の到達日です。これは実務先例でもありますし、不動産登記法の教科書のイロハです。
Dさんのコメント
私も阪口先生に限らず弁護士さんの考えがわかりません。
不動産登記法改正の研修で所有権取得時はきちんとした根拠をつけるように指導されています。
しかるに先生は登記が出来ると主張されているだけで具体的所有権取得の根拠を提示されているようには思えないのです。弁護士さんの所有権取得に関する見解をお聞かせいただければと思います。
 
登記、農地法に「詳しい」方であればあるほど、自分の狭い経験を絶対化し、そこから陸山会事件の農地の登記の遅れの全てを説明しようとした。しかし本件土地は市街化農地の問題であり、10月7日付の農地転用届出受理通知書が出されていた。それ以降は農地法上本登記が理論的に可能であったことを知らなかった間違いである。
 
条件3 『自分が信じたい情報』である。
 
最初に「意図的」にガセネタを発する人は別として、その情報を調べもせず、盲信し「誤解、無知、勘違い」のもとで間違った情報を発信する人達は情報が混乱しているときにはどうしても『自分が信じたい情報』をつい信じてしまうという心理が働く。
今回の事件にあてはめれば、小沢フアンは当然として、小沢は好きでなくても、モトモト特捜部の権力的な捜査などに批判的な人達はつい検察は間違っているという固い信念があり、つい『自分が信じたい情報』に傾く傾向に陥りやすい。小沢フアンでない人や、検察批判を持たない人達はおよそ信用しない。小沢フアンであっても慎重に物事を検討する人達も賛同しない。
 
条件4≪情報入手の偏頗性≫である。
 
誤情報のブログを見てそれを信用して、ガセネタとは知らずに、他人のブログに間違ったコメントをあえて書く人達の多くは≪情報の入手における偏頗性≫があるように思う。ネットでは自ら情報を探すので、自分にとって気持ちが良い情報だけをどうしても求めがちである。そしてその情報を検証することなく、正しいと信じてしまう。その上、同じ考えを持つ同類間で情報の交換をしがちであるからよりそれが拡大要因となっているように思える。
 
条件5≪錯覚は誰にでもある≫
イメージ 1『錯覚の科学』文藝春秋社発行の面白い本がある。錯覚には①注意の錯覚②記憶の錯覚③自信の錯覚④知識の錯覚⑤原因の錯覚⑥可能性の錯覚があると実証的に解説している。上記の農地説は③自信の錯覚④知識の錯覚が大きく影響しているように思う。しかし錯覚は誰にでも生じることをこの本は説明してくれている。ネットのガセネタに騙されないためにも、一読をお勧めする。もちろん、私も時には錯覚が生じる危険性があることを教えてくれた一冊である。
 

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