弁護士阪口徳雄の自由発言

裁判・社会活動の中で感じたことを発言します

公益通報

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全10ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

[ 次のページ ]

失敗例に学ぶ『内部告発』公益通報制度を知り、守り、活かす.
 
目次
プロローグ 内部告発の風景「当事者の戸惑いと担当者の責任」
1 公益通報(内部告発)の理念・制度とその運用
2 通報者(内部告発者)の立場から公益通報において知っておくべきこと
3 通報(内部告発)を受けた事業者はいかに対応すべきか役員・担当者・弁護士の役割と責任
4 重要判例解説
5 証拠収集と外部告発の限界
6 諸外国の公益通報者保護制度
7 公益通報者保護法改正に対する提言
イメージ 1


この本は読む価値あり。
内部告発を受けた事業者側の担当者、役員、弁護士達がどのように対処すべきかについて、失敗事例から教訓を導きだしている。どこで間違いを犯したか、失敗があったかを、その場面ごとに解説しているが故に、実に説得力がある。
 
読んでみて一番の失敗事例はダスキン事件であろう。

未認可添加物の混入した肉まんの通報を受け販売した役員の責任は当然として、既に、肉まんが販売完了後に知った役員、監査役達にも、それを積極的に公表して社会の信頼を回復するべき義務を怠った責任が認められている。

不作為・放置した失敗事例」である。

最近ではオリンパス事件である。しかしこの本にはオリンパス失敗事例は紹介されていない。

公表すべき事件を怠ったオリンパス役員達の責任の追加(株主と会社) http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/folder/1340210.html

内部告発を受けると、会社のトップ達は、感情的になり、つい冷静な対応ができず「隠ぺい」に走り、通報者を処分する傾向に走りがち。
 
その結果、「隠蔽」したはずの事件が、マスコミに報道される。その上、裁判になる。通報者側も傷がつくが、会社側も社会的信用に大きな傷がつき、終息するのが、内部告発事件の顛末である。
 
これらの失敗事例の中から、著者らは、公益通報を受けた時のトップ、担当者達、弁護士らの心構えを書いている。『事業所内部に内部告発を受けた時は、内容が真実の通報であれば事業者にとって是正の機会、準備の時間的余裕を与えるものとして歓迎すべきことであるもし事実が異なるのであれば調査結果を丁寧に通報者に知らせ納得を得られるように努力すれば良い。その後外部に通報される事態になったとしても、事前準備は済んでいるので慌てることはない。報復措置あるいは報復と取られかねない措置は無用の係争やコストアップ、事業者の社会的評価の低下を招くだけである』と。
 
この結論はさすがである
 
内部告発に通報者側、事業者側において、それどれの立場で実際に関与してきた弁護士達であるが故に言えるのであろう。
 
非常に専門的になるのが第5章の「内部告発に伴う証拠収集問題」の法的解釈問題の解説である。この解釈は内容は公益通報者保護法を何度読んでも回答がない部分であり、公益通報者保護法が判例に委ねた空白部分であるからである。
 
通報する側では、会社側の「証拠」を入手して告発しないと真実性の立証が難しくなる。その結果、会社の内部の「証拠」をコッソリ入手しくてはならない。この行為は内部告発に不可避的に生じる行為である。となり、証拠入取行為は形式的には窃盗罪になり、少なくても就業規則違反に該当する。
この本は、内部告発に伴う証拠収集行為を豊富な判例を引用して、判例がどのように考えているかを、実例を挙げて詳細に検討している。
 
最後に韓国の内部告発保護法を紹介している点が参考になる。
 
通報対象事実は公職者の「腐敗行為」であるが、通報者の通報による刑の減免、通報者に対する差別取扱行為者に1年以下の懲役、告発をした者に報奨金や、税の支出を免れるなどの場合は最高20億ウオンの支給などビックリする法律が隣の国で制定されている。
 
アメリカの不正請求防止法、キイタム訴訟によく似た制度である。知らなかったが故に、これを知っただけでも読んだ価値があった。
 
事業者が失敗しない、公益通報に関係する人達、特に相談にのる弁護士達や担当者達が失敗しない為の「教科書」であると言える。
 
一読をお勧めする
≪オリンパスは高裁判決を尊重し何故このような事件が起こったか、第3者委員会を設置し再発防止策を検討せよ≫
 
「オリンパス」の社員である浜田正晴さんが、会社の内部通報制度を利用したことに対する報復として他の部署に配転させられた事件。濱田さんが、その配転を無効とすることを求めた裁判で、一審の東京地裁は濱田さんの請求を全部棄却したが、東京高裁第23民事部(鈴木健太裁判長)は8月31日、浜田さんの請求をほぼ大筋で認める逆転判決を言い渡した。
 
高裁判決は濱田さんの通報を「立場上やむを得ずなされた正当なもの」と指摘し、「これを問題視し、いわば制裁的に配転命令をしたものと推認できる」と会社側の配転を無効とした。
 
公益通報者保護法が2004年に制定されてから企業の内部通報制度を利用して通報した事件でその内部通報制度に自ら定めたルールに会社側が違反したことを理由に人事異動を無効にした初めての裁判例。
 
裁判所は従業員の解雇事件では解雇無効にするケースが比較的多いが,配置転換を無効にするのは極めて慎重である。
 
配転理由は、後でもっともらしい屁理屈をいくらでも主張できること、裁判官は内部告発などと無縁の社会で生きているなど世間知らずの上に、自分達も3年か4年に一度配転させられる人事制度になっていることなどから、企業の配転という人事権の行使に甘い。
 
キャリヤーの裁判官らには内部告発を裁く能力はないーオリンパス判決評論(公益通報37)http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/61075795.html
とブログに書き、内部告発裁判に裁判員の導入を言うのはこの為である。
 
それにしても、この事件は通報対象事実が法例違反などでなく、企業の倫理違反であること、コンプライアンス室が濱田さんの氏名を上司に伝えたこと=守秘義務違反など、企業内部の通報制度に違反する会社のあり方を批判して、配転を無効にした事例であり、今後の企業の通報者へのあり方に大きな影響を与えるだろう。
 
判決全文は公益通報支援センターのHPにあるので読んで頂きたい。
 
この判決を読むとオリンパスという会社は何と非常識な会社かと思う。
 
濱田さんの主張によると、自社と共同で開発する最重要顧客である会社の社員をその『情報』を持ったまま、ひっこ抜き、そのあげく、もう一人の社員まで引き抜きにかかった。この時に、濱田さんが、このような最重要顧客の社員の引き抜きはオリンパスの信用を無くすので、やめて欲しいと会社のコンプライアンス室に通報しただけである。マスコミやネットに公表したわけでもない。
 
本当に会社の将来を思い通報した濱田さんを、会社のコンプライアンス室は濱田さんの上司に通報者は濱田さんと伝えるなどのお粗末もあり、担当役員も、濱田さんと上司に≪仲良くやれ≫などとお茶を濁しただけであった。
 
ところが、上司はそれを恨みに思い、濱田さんを他の部署に配転した。
その上、次々と配転し、合計3回も配転する有様であり、しかも配転先で、JR西並みの≪日勤教育≫同様の無内容な業務を命じるなどの≪いじめ≫が行われた。
 
不可解なのは、オリンパスの人事部がたやすくこのような配転を認め、しかも濱田さんからの訴えがあった時に裁判をして濱田さんが≪得意先の人物が入社するのを嫌悪したから内部通報した≫などと適当な屁理屈をつけ裁判で長々と争うことを決断した役員達の姿勢である。
 
内部告発者を不利益取扱をする役員に株主代表訴訟を!(公益通報34)http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/59363034.html
 このブログで次のように指摘した。
 
≪労働者は解雇されれば生活の為に裁判をするが、配転され一応給料が払われていると、あえて裁判までして争うのは難しい。配転という会社の人事権を主張して、裁判を長引かせることもこの裁判の提訴を難しくする一要因。仮に裁判で負けても、原状に戻せば足り、せいぜいこの間の慰謝料を100万か200万払えばよいとして「公然」と不利益取扱を行う。

これでは、会社の役員達は何ら腹が痛まない。内部告発をした労働者を配転などで不利益取扱いのしたい放題が容認される。

そこで、このような、公益通報者保護法違反を承知して不利益処分を行う企業の役員に対する株主代表訴訟が可能かどうか、公益通報者支援センターで検討してきた。
すなわち、公益通報者保護法に違反して配転などを行い、その為に裁判で敗訴した場合に、その裁判の為に
「支出した弁護士費用や裁判対策費用」
「コンプライアンスが機能していない企業としての批判されることによる信用損害」
などを役員個人に補てんを求める株主代表訴訟だ。

公益通報を理由に不利益取扱をしたかどうかは、社内に真面目に調査すれば直ちに判明する。

公益通報者保護法、又は自ら定めたコンプライアンス規定(内部統制システム)に従い、早期に是正すべき注意義務が役員にはあることは明白。

それをしないで、長々と裁判で争い、その為の何千万円の訴訟費用などを支払い、その上、裁判で敗訴でもすれば、会社の信用損害も甚大。
そもそもこのような会社の経営者は自ら定めた内部統制システムを守れないのであるから、およそ社会、消費者、取引先などから信頼されるはずがない。≫

長い目でみれば、このような会社のトップには損害を補てんさせ、その上辞めてもらうのが株主の長期的な利益にも合致する。 
 
オリンパスが最重要顧客である得意先の従業員を引き抜くなどの企業倫理に違反する実態がますます係争すればするほど広がっていく。
 
オリンパスの会社にとって、この事件は最高裁に上告せず、この事件を外部の第3者委員などをいれ、再発防止策を講じることが今の会社のトップに求められる。この事件を苦い教訓とすべきである。それが今後も消費者や社会の信用を獲得する有名企業としての期待される役割であろう。
 
もし最高裁に上告し、オリンパスが敗訴した場合は、自ら定めたコンプライアンス規定(内部統制システム)に従い、早期に是正すべき注意義務が役員にはどの程度あるか、公開の法廷で議論する絶好の良い事件。
 
大阪市の元職員が内部告発をしたことで懲戒解雇された。この処分の取消訴訟を本日(2/10)大阪地裁に提訴。弁護団は市民オンブズマンと労働事件専門の弁護士達。原告の公益通報行為の正当性、告発に至る手続きの妥当性から見て恐らくこの裁判は大阪市が敗訴するだろう。
訴状を原告弁護団から公表を前提に頂いたので要旨を公表する


第3 原告が本件内部告発をするに至った経過
 1 平成元年からの河川事務所での勤務
(1)原告は、平成元年71日に河川事務所に配属され、船に乗船して河川清掃業務に従事した。当時、原告が、最初に驚いたのは、河川の清掃業務を遂行中に引上げたゴミの中の財布やカバンの中身を先輩職員が物色し、取得していたことであった。
(2)原告は、配属後3ヶ月経過後に、主任に対して「警察へ届け出なくていいですか」と質したが、「昔から河川は警察に届けるなんて1回もあるか」と無視された。当時は、先輩職員が金目の物を領得していたが、原告は、一切受け取っていない。
(3)(略)
2 平成21年からの同所での勤務と内部告発を決意した経過
(1)(略)
(2)原告が、乗船し始めて2日目に同僚の職員が、川から拾い上げた財布、鞄を物色し始めるなど、従前と同様のことが繰り返されていた。
原告は、平成21年7月上旬にY管理主任に対して「こんなことをまだやっているのか。やめようと周りに話したことはないのか」と進言したが、「やめるにしても今までやってきて、今更やめることは難しい」という返事であった。(略) さらに、原告は、同年10月上旬にはO管理主任に対しても、同じく、清掃業務中に拾得物を私物化することを「やめることはできないのか」と進言したが、「現行犯でなければ捕まることはないので大丈夫ですよ。それに今まで周りに怪しまれたこともないし、疑われたことすらないから大丈夫ですよ。万一、警察で調べられても証拠がないので捕まることはないですよ」という回答であった。
(3)(略)
 (4)原告は、同僚らが違法行為に対して麻痺状態になっていると感じ、平成21年10月、河川事務所のM所長に対して、・・・職員が清掃作業中の拾得物を物色し、領得していると伝え、「こういった犯罪行為を止めさせてほしい」と求めたが、M所長は、「私はそういうことをしているとは信じられない」と答えた。・・・まともに取り合ってもらえなかった。(略)
そこで、原告は、通報の為には現場写真などの客観的証拠を収集することが必要と考え(略)平成22年5月、腕時計型小型カメラを購入して6月22日以降、撮り始めた。
3 本件証拠ビデオの撮影と内部告発
(1)平成22年6月24日、原告が、同僚のKR氏と2人で乗船し、清掃作業に従事していたところ、KR氏が、拾い上げた鞄のなかから10万円ほどの千円札の束が出てきた。同人は、船内にあった緑色の籠に移し、残りの鞄や財布を物色し始めた。原告は、小型カメラで撮影を開始し、内部告発する際の証拠としようと考えた。原告は、KR氏から半額を渡されようとした際、いったん断ったが、「それは困ります」と言われた。原告は、ここで無理に断れば、同僚から変に怪しまれて警戒され、その後の物色を止めてしまい、その後の撮影ができなくなると考えて、いったん、受け取った。原告は、落とし主がわかれば返却しようと考えたが、鞄から出てきた運転免許やカード類などの証明書が多数あり、落とし主を特定できなかった。そこで、原告は、同日の昼の休憩時間に河川事務所に戻った際に、同僚のN氏に、一連の事情を話し、「今から元の鞄に戻しに行く」と伝え、同じく同僚のK氏に、当日乗船していた船の前まで同行してもらい、同人が確認するなかで元の黒い鞄に戻した。原告は、その後も、証拠収集のための撮影を継続していた。
(2)(略)すると、9月22日、MR業務課長が、原告が以前に、不注意で壊したドアの撮影を始めた。
(3)原告は、平成22年9月23日、大阪市議に対して、物色現場を撮影したDVDの映像を渡し、一連の経過を説明した。同議員は、被告に対して、「河川事務所職員が河川清掃中に拾い上げた物を再利用している。また、中には現金も拾得物としてあり、それは職員でわけたりしている」という告発があったと伝えた。
(4)平成22年10月5日から、被告による職員に対する聞き取り調査が始まった。原告も、何回か聞き取り調査を受けた。(略)
(5)原告は、10月25日、被告のコンプライアンス委員会に一連の経過を伝えるとともに、10月26日、マスコミに自らが撮影した映像を提供した。11月2日以降、原告が提供した映像が、テレビ等の報道機関によって放映された。
(6)被告は、ここに至り、ようやく市長が記者会見して、放映内容を含めて事情聴取を行う、原告にビデオの提供を求めて徹底調査するなどの方針を示した。
(7)(略)11月18日「環境局不祥事案調査チーム」を設置し、調査を行った。
 
第4 懲戒処分事由該当性がないこと
 1 処分理由のうち約5万円受け取りについて
   処分理由は、原告が平成21年6月26日、業務遂行中に拾得した10万円を同僚と分配のうえ、約5万円を受け取り、その後廃棄したという点をあげている。しかし、第3の3で述べたとおり、原告は、内部告発の証拠収集目的で、同僚が拾い上げた鞄や財布を物色しているところの一部始終を小型カメラで撮影していた。そして、同僚から約10万円のうちから5万円を渡すと言われ、一度は断ったが更に受け取るように言われ、強行に拒絶すると相手に警戒され、その後の撮影続行ができないと考え、後で落とし主がわかれば送ろうと思い直して、約5万円をいったん受け取った。結果的には落とし主がわからなかったので、同僚を証人にして元の鞄へ戻したのである。
したがって、原告が約5万円を受け取ったのは、内部告発時における証拠収集目的であったのであり、不法領得の意思,すなわち所有者を排除し、自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思がない。
2 処分理由のうち小銭のジュース使用、有価証券拾得等について
(略)
 3 処分理由のうち暴言・恫喝、器物破損について
しかし、原告は、指摘されるような同僚を呼び出して怒鳴りつけたり、暴言や恫喝をしたことは全くない。原告は、この点について、本件懲戒処分前に事情聴取もされていない。被告に対して、問題とする行為の日時と内容を具体的な特定を求める。
また、器物損壊についても、本件懲戒処分前に事情聴取もされていない。 
第5 原告の行為は、正当な行為である。
1 (略)
2 本件において、河川事務所では、長年にわたり職員が業務遂行中の拾得物の私物化している実態が続いていた。これは、河川事務所の所長自らが拾得物を受領し再使用したり、職場内で互いに異を唱えることができない雰囲気があり、いわば組織ぐるみで違法行為が行われていたことによる。(略)
3 原告は、平成21年6月に河川事務所に配属されて以降、河川事務所の主任や所長に対して、繰り返し違法行為の中止を求めたが、とりあわれなかった。また、河川事務所における違法行為は、長年にわたり組織ぐるみで行われており、手元に証拠がなく告発しても組織ぐるみで口裏あわせや証拠隠滅がなされ、実態の解明と違法行為の是正は困難であった。
そして、不正行為の実態解明と違法行為の是正のために内部告発することは(略)本件の内部告発のためのビデオ撮影による証拠収集行為は、必要不可欠な行為であった。(略)
また、原告の現場撮影のビデオという動かぬ証拠に基づく内部告発によって、平成22年11月4日から12月10日までの間、被告の管理職員がすべての船に乗船して調査を実施したところ、鞄32点、財布44点、ゴルフバック19点(合計109点)、現金12,966円が収集され、全て警察に届けられた。このように、原告の内部告発によって拾得物が市民の手に戻るようになり、市民にとって大きな利益をもたらした。
4 本件において、懲戒処分事由とされる原告の行為のうち、①5万円を受け取ったこと、②ICOCA、YAMADA電機のカードを受け取ったことについては、原告が、内部告発のための証拠収集としてビデオ撮影を続行する目的に出たものであり、かかる証拠収集のための行為は、公務員として正当な業務による行為であり、違法性がなく、懲戒処分の対象とならない。 
第6 裁量権の濫用
1  本件懲戒免職処分は、①原告が内部告発をしたことによって、被告の河川事務所における長年にわたる違法行為の実態の解明と是正することができ、結果的に市民の利益と被告の信頼回復に多大な貢献をしたという考慮すべきことを考慮せず、また、原告の内部告発により被告の不祥事、醜態が白日の下にさらされたことに対する被告内部の反発の声に配慮した報復、見せしめ目的で行われたものであって、考慮すべきでないことを考慮したものとして、裁量権を逸脱、濫用したものである
 
2 本件懲戒免職処分は、内部告発の報復、見せしめ目的であること
原告の内部告発により被告の長年にわたる不祥事、醜態が白日の下にさらされた。当然、このことに対する河川事務所の職員らを初めとする現場の反発は凄まじかった。原告は、本件懲戒処分後に、初めて、河川事務所の職員が原告から怒鳴られたり、暴言、恫喝をされたという上申書の提出があったと聞かされた。原告が、このような行為を行っていないことはすでに、述べたとおりである。
しかるに、被告は、現場の職員の反発の声に対する配慮と今後の同様の内部通報を阻止するため、いわば見せしめとする目的で、事実に反する同僚らの上申書について原告に弁明や反論の機会を与えることもなく、かつ、器物損壊など、これまで被告より全く問題とされていなかった行為を針小棒大にとりあげ、本件懲戒免職処分に及んだものである。すなわち、被告は、内部告発をした原告を保護するのではなく、逆に、原告に対して全く弁解の機会も与えることなく、また、それ以前には全く問題とされたこともない行為をも理由に加えて、本件懲戒免職処分に及んだのである。
「言ったものが損をする」「黙っている方が得」という状況を生み出し、公益通報保護の流れに大きく逆行するものである(略)
3 内部告発が違法行為の解明と是正に多大な寄与をしたことを考慮していないこと
原告が、本件処分の対象とされた約5万円や有価証券を一時的な受け取ったのは、相手に警戒されずに拾得状況の証拠となるビデオ撮影を継続する目的であったのであり、領得目的は全くなかった。
原告が撮影したビデオとそれにもとづく内部告発があったからこそ、被告の調査が行われ、長年にわたる河川事務所の違法行為の是正が図れ、河川の浮遊物が市民の手に戻るようになり、市民に多大の利益をもたらした。原告の内部告発がなければ、被告河川事務所の自浄能力のなさからすると、違法行為は現在も継続していたのであろう。本件処分にあたっても原告の内部告発による功績は極めて大きなものとして評価されるべきである。(略)
4 本件懲戒免職処分は均衡を失して重きにすぎること
 (略)なお、被告大阪市市長は、原告の懲戒免職処分について記者会見で、内部告発を軽減材料とする一方で、同僚への暴言や事務所内の備品の破損も判断材料としたとし、「軽減につながる行為と加重要素の差し引きで、加重が上回る」として懲戒免職処分としたと述べている。しかし、被告のいう加重要素が事実に反するものであることは既に述べたとおりであり、また、その点を置くとしても、被告河川事務所における長年に違法行為是正に多大な貢献をしたという軽減要素と加重を差し引きした結果として、一番重い懲戒免職を選択し、より軽い処分を選択しなかったのは明らかに社会通念上の妥当性を欠くものであり、裁量権を逸脱・濫用したものである。
5 本件懲戒免職処分は平等原則に違反すること
  (略)
6 以上、本件懲戒免職処分は、違法であるので、取り消されるべきである
≪尖閣映像のインタネット上に流す行為は現行の公益通報者保護法の範囲外≫
 
この実行行為者が公務員であれば、その公務員は懲戒解雇はされることは確実。
 
現行の公益通報者保護法の『通報対象事実』は、事業者が刑事罰になるか、間接的に刑事罰になる事実がある場合に労働者が通報しても保護される仕組み。
 
この映像を一般国民に公開しないことは事業者(=政府、海上保安庁など)が、直罰規定に違反する違法行為をしたとか、間接罰に違反する行為をした場合ではない。
 
この『通報対象事実』だけで、公益通報者保護法の枠をはみ出した行為として、現行法の枠内では保護されないことは確実。
 
通報の手段もインタネットという通報情報が回収不能方法で、公開する行為も手段の相当性を欠き、裁判所では懲戒解雇相当と判断されるだろう(手段の相当性の欠如)
 
現行の公益通報者保護法の枠内では保護されないが、では内部告発者を保護する判例上形成されてきた一般法理でも保護されるかとなると、今回の事件はおよそ保護されないだろう。
 
衝突の事実はあったことは政府も認め、映像の存在も秘密にはしていない。ただ、広く公開することは外交上、マイナスになるから公開しないという政策判断によって、公開しないという。他方では、公開することによって中国の横暴をもっと早く阻止できたとか、公開しないから『弱腰外交』になっているという批判は政府の行為の当否の問題としては肯定できるが、違法、不正レベルの問題ではない。
 
この政府の行為の当否を論じているのではなく、この映像を公開した者を公益通報として保護すべきかどうかである。
 
私が事務局長であった公益通報者支援センターは現行の公益通報者保護法の『通報対象事実』は極めて狭く、犯罪行為だけでなく、生命、身体、健康などに関する不正行為も含めるべきという提案をしてきた。
 
今回のような、政府の外交上の行為までは、想定の範囲外であったが、しかし西山事件のような、外交問題に関して政府が秘密の約束をし、それを国会で追及されても、そのような密約がないという事実を政府が隠ぺいしていたようなケースは、政府の不正行為に対する『公益通報』として正当行為として含ませることは想定をしていた。
 
今回の政府の判断には法的に違法であるとか、例えば隠ぺいなどという不正行為という範疇の問題でもない。外交上公開が是か非かという、政府の政策の当否を巡る議論のように思える。
 
私達のような公益通報者保護法を広く改正すべきという立場でも、今回のような、外交上問題となる映像を公開する行為は『公益』概念を飛び越え、過剰なイデオロギー的な行為として写る。従来の保護すべき公益通報(内部告発)とは異なる。
 
もし、外交上秘密にすべき事案(例えばある国のスパイに関する情報を入手した場合とか、外国のテロリストに関する情報など)でも、その通報者が、これらを秘密にする行為は違法と考え、インタネットに公開する行為は正当な通報として保護されるならば広く国民の利益が害される。
 
私達は官房機密費の情報公開請求の裁判をしている。本当に国の秘密、外交の秘密情報を入手する為なら、それを公開せよとまでは言っていない。官房報償費が政府の野党議員対策費であったり、国会議員の海外旅行の餞別であったり、マスコミの記者の買収費用であったりする、違法、不正の出費だからその公開を求めているのである。
 
このような中国漁船の挑発的『衝突』『接触』レベルに乗せられ、逮捕することも問題であり、逮捕しながら、粛々と日本法にのっとり処分すると外務大臣が言いながら、途中で釈放する行為にも賛成できない。
 
まして、この程度の映像を秘密にするという政府の行為にも賛成はできない。船長を逮捕した段階で、もっと早く公開しておればよいという考えには賛成する。(しかしそれは結果論)
 
今となっては、尖閣列島問題で、中国と日本の民族排外主義者らがこの問題を煽りたて、隣国が対立することにもっと賛同できない。この両国の衝突の結末は、軍備拡張が待っている。喜ぶのは、軍拡論者でしかない。
 
それにしても、仙谷長官が、自民党すらできなかった、機密漏えい罪を制定しようとする発言は本末転倒も甚だしい。厳しく批判されるべき。


尖閣映像流出:機密漏えい厳罰化を検討 仙谷官房長官
 
衆院予算委で答弁に立つ仙谷由人官房長官。左は菅直人首相=国会内で2010年11月8日、藤井太郎撮影 仙谷由人官房長官は8日午前の衆院予算委員会で、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を撮影したビデオ映像が流出した問題について、「国家公務員法の守秘義務違反に関する罰則規定は軽く、必ずしも抑止力が十分ではない。秘密保全に関する法制のあり方を早急に検討したい」と述べ、機密漏えいに対する厳罰化を検討する考えを示した。
 
 仙谷長官は、流出経緯は「特定されていない」とする一方、「本件捜査のみならず同種の事件の捜査と海上警備、取り締まりに重大な影響を与える」と強調し、流出問題に対し厳正に対処する姿勢を示した。
 
 衆院予算委は、10年度補正予算案審議のため開催。菅直人首相は今後の政権運営について「私自身がどこまで頑張りきれるか分からないが、石にかじりついても頑張りたい」と政権運営への意欲を示した。【野原大輔】

≪キャリヤーの裁判官らには内部告発を裁く能力はない≫

内部告発後の異動「正当」 オリンパス社員の請求棄却。
およそ非常識な判決。

オリンパス事件は訴状、会社の準備書面を全て送ってもらい、検討していた。

会社の準備書面は配転理由をあれこれ、「見事に」もっともらしく主張していた。

恐らくキャリヤーの裁判官はこのような被告会社の反論を認めるだろうという不安を持った。キャリヤーの裁判官達は書面による「整合性」があると「合理的理由」があると認める「習性」があるからだ。

不安が的中した。

キャリヤーの裁判官連中は、差別されたこともなければ、内部告発がどれだけ困難かはおよそ判る社会には住んでいない。しかも東京地裁の労働部の裁判官は裁判所の中でも「エリート」と言われる裁判官達。

このような階層の連中にいくら公益通報(内部告発)を説明しても、およそ理解不能な階層。

公益通報者保護法(内部告発法)は制定後5年で見直すことになっている。
来年の3月で見直すことになる。

この際、抜本的に、公益通報(内部告発)事件はキャリアの裁判官だけではなく、刑事事件のような市民が入った裁判員の参加で、判決する制度に改革にしないと公益通報(内部告発)をする者は救済されない。

このような事件こそ、市民の常識が要求される事件である。

公益通報は社会全体の利益のため。
それを保護する裁判制度も社会全体の為には必要。

判決文が入手できたら再度判決へのコメントを書く予定。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
≪内部告発後の異動「正当」 オリンパス社員の請求棄却≫

 社内のコンプライアンス(法令順守)窓口への通報内容を漏らされ、不当な配置転換を受けたとして、大手精密機器メーカー「オリンパス」(東京)の社員浜田正晴さん(49)が、会社や上司に異動先で勤務する義務がないとの確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は15日、「会社に不当な目的は認められない」として請求を棄却した。

 田中一隆裁判官は判決理由で「配転命令による原告の不利益は、賞与減額を前提としてもわずかなもので、命令が報復目的だったと容易に認定しがたい」と判断した。

 判決は、通報について「原告は人事部などに開示されることを承諾しており、内容も抽象的」と指摘した上で「業務と人間関係両側面の正常化が目的だったと社は認識していた。公益通報者保護法が保護する『通報対象事実』に当たる通報だったと認めることはできない」と結論付けた。
2010/01/15 17:24 【共同通信】

全10ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

[ 次のページ ]


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事