Zeiss_Telementor_World

Carl Zeiss社の小型天体望遠鏡の世界を綴っています。

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今年7月から8月にかけて取り上げた"Astro-Objektiv 50/540"のこと(下記URL)を再び取り上げるとは思いもよりませんでした。

●Schulfernrohr 50/540
●Astro-Objektiv 50/540(全5回)

ことの発端はオークションサイトeBayドイツで、かなりレジェンドな50/540モデルを発見したことでした。

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●eBay Deutschland "Fernrohr 50/540, original Zeiss-Prospekt Geraet"
※オークション終了から一定期間後にリンクが切れます。

ひと目見た瞬間に、これは!と思いました。ツァイス社のリーフレット『Optiksatz』(下記)に掲載された望遠鏡の現物ではないかと思われたからです。

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実はオークションの説明文だけでリーフレット掲載の望遠鏡そのものか、それともそれを真似たものかはっきりしません。しかし、オークションにアップロードされた画像(下記)にあるBerlebach(ベルバッハ)の木製三脚、雲台の水平回転軸を地軸と平行にするためのwedge(ウェッジ、くさびのこと。独語ではKeil)、そして鏡筒の外観から間違いないだろうと確信したのでした。

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さっそく入手に動きましたが、送り先がドイツ限定のオークション(Versand nach : Deutschland)のため日本からは入札が弾かれてできません。しかし、450ユーロと高めの開始価格で入札者がすぐに出なかったことが幸いしました。

初めにeBayの登録情報を、ドイツ在住の第三者宅を送り先に変更して入札可能な設定にし、付け値提案(Preisvorschlag)により価格交渉を行い400ユーロで入手できることになりました。売主から中継地を経由しての輸送のため運送費は安くありませんでしたが、約1ヶ月で無事到着しました。

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荷を解くと、鏡筒、接眼部、三脚、雲台等が丁寧に梱包されていました。アイピースも50/540レンズキットにもある25-Hと16-Hのハイゲンスが入っていました。

ベルバッハの三脚はリーフレットの写真のようにニスの輝きが失われくすんでいます。30年の歳月を感じますが、木製なのに三段伸縮でドイツらしい造りの良さが伺えます。

もともとカメラ三脚のためか開き止めが無いのが難点です。さっそく近くのホームセンターに出かけて切り売りのチェーンを購入し開き止めにしました。三角板では携帯のじゃまになりますから国産の望遠鏡三脚のようなステーが望ましいのですが、この手のヴィンデージモデルにはチェーンが良く似合います。

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さっそくウェッジを三脚と雲台の間に組み込み、鏡筒を載せてみました。おおっ!ツァイスのリーフレットの掲載写真と同じだ!(当たり前ですけど)背景がドイツの街並みで無いのが残念ですが東ドイツ時代の姿が蘇りました。

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次に日中、地上の遠景を見て見ました。どうもコントラストがイマイチです。すでに50/540のOTAを持っているので原因が鏡筒の内面反射であろうことは明白でした。対物レンズや接眼部を外して内部を見ると内径がフード、対物セル、接眼部と3段に加工してあり手が混んでいます。つや消し塗装も丁寧に施されていますが、いかんせん鏡筒内径がタイトなため迷光防止が効果的でありません。こんな時は植毛紙が一番です。

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先の三脚の開き止めもそうですが、こうした望遠鏡のカスタマイズの際はいつでもオリジナルに戻せるよう心がけています。植毛紙もべったりと貼らずに糊面は四隅だけにして、すぐに除去できるようにします。果たして植毛紙の効果は抜群でした。見違えるようにコントラストの高い像質になりました。

三脚と雲台の間に挟んだウェッジは売主によれば、Jena(イエナ)市の北緯52度に合わせているとのこと。水平回転部だけで追尾可能な簡易赤道儀になります。また、回転そのものも適度なフリクションがかかっており追尾しやすくなっています。

さらに、このウェッジによって通常の雲台よりも天頂付近の死角がすっと少なるのもメリットです。また、鏡筒下部の三脚取付台座はツァイス規格のアリ型が用いられていますから、T型赤道儀に搭載することも可能です。

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接眼部はどうでしょうか。ツァイス規格のM44の延長筒が用いられ、キットに含まれているプラスチックのアイピースホルダーD24.5/M44が接続されています。これまでのOTAと異なるのはヘリコイドフォーカサーM44ではなく、シンプルな摺動による合焦装置であることです。要するにM44の延長筒の抜き差しによってピントを合わせているのです。ただそれだけですが、延長筒の外周2ヶ所にわざわざ溝を切ってフェルトが埋め込まれています。これにより実にスムーズな抜き差しができます。造りのシンプルさとは対照的にこだわりが感じられます。

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コンセプトにも造りにもとても感心したので、売主のゲアハート・コンラットさん(Herr Gerhard Conrad)に、日本で組み立てた画像とともにこの望遠鏡の由緒を訊ねてみました。すると、コンラットさんは旧東ドイツ域のチューリンゲン州(Freistaat Thueringen)に住む、カールツァイス・イエナ社(VEB Carl Zeiss Jena)の元営業マンだったことが分かりました。

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この望遠鏡は1985年に、50/540レンズキットの自作例として彼が自ら造ったものだそうです。それがメッセで評価されメダルまでいただいたとのこと。それを機にリーフレットの写真に採用することになったのだそうです。その証明書とメダルまで送っていただきました。そんな思い出の望遠鏡を譲ってもらったので大切に使いたいと返信したところ、「抜き差しする接眼部のフェルトには2年おきに一滴のオイルを差すように」とのアドヴァイスが返ってきました。さすがです。
 
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折からネットやニュースで話題になったスーパームーンに向けようと思いましたが、残念ながら曇ってしまいました。今日は晴れていて良く見えます。満月を過ぎたのでクレーターが見やすくなりました。

今は亡き東ドイツから30年の時空を超えた望遠鏡が見せてくれる星空はまた格別です。それが単なるノスタルジーではなく、実に良く見える対物レンズと機能的でシンプルな鏡筒と架台など、現代の望遠鏡には無い個性を醸し出しているからでしょう。

譲っていただいた前オーナーに敬意を表して「50/540 コンラット」と名付けることにしました。

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私のeBayでこの望遠鏡をみつけ、カタログと同じだと感心していたのですが、入手されたのですね!由緒あるお宝だったとは知りませんでした。さすがです!!

2016/11/16(水) 午前 5:07 [ czj*99* ] 返信する

C50/540の自作鏡筒を作成する際、接眼部をヘリコイドにしなければならないと思っていましたが、こんなシンプルで機能的な方法があることを知ってとても関心しました。M-16と最終モデルの天頂プリズムのマッチングも見事です(^_^)

2016/11/16(水) 午後 0:30 [ czj*99* ] 返信する

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一見して自作向きのシンプルな構造ですが、随所に素人ではできない加工が散見されます。

例えばアリ型は鏡筒の外形に合わせてアール加工されていますが、これはTelementor用の既存品を流用したのではなくこの鏡筒専用に加工したということです。また、ウェッジはφ70mmのアルミ丸棒を斜めに切断したものですが、切断面に垂直に穴を開けたり、水準器を埋め込んだりしています。

このことから、この望遠鏡はツァイスの社員が自作したというより、リーフレットに掲載するため自作風にツァイスが造ったと言った方が正確なのかも知れません。

2016/11/17(木) 午前 1:31 [ abe1998 ] 返信する

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ところで摺動による合焦装置のことです。直進ヘリコイドですと、天頂プリズムを付けた時に任意の方向を向けるためのアグラマウントのような回転装置が必要ですが、摺動だけなら任意の方向に向けられるので回転装置が不要です。その点でもシンプルな構造には示唆が多いですね。

2016/11/20(日) 午後 11:33 [ abe1998 ] 返信する

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