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マラソン大会の日は、曇っていた。
マラソン大会としては絶好の天候だったのかも知れない。
予定どおり大会が催されてよかったような、実は逃げ出したかったような複雑な気持ちだった。
何時間かあとにはもうゴールしているんだなぁと思いながら家を出た。
地場企業のグラウンドに直接集合だった。学年ごとに男子がが先にあり女子はあとからだった。
女子はおよそ3年男子の出発はお昼前だったような気がする。
1kmで折り返してくるが、男子は2.5km行っての変則的な(往路と復路が若干違うコース)
折り返しコースだった。
他学年がレースをしている間、体をほぐしたりして落ち着かない時間を過ごした。
緊張のためか、便意を催すのだが、何も出なかった。
「走っているうちに、激しい便意が来たらどうしようか。」と、神経質に悩んでいるうちに、
3年生男子がグランドの一番奥に集められた。
男子が出発したあと、彼女を含む3年女子が出発をし、
3年女子がゴールしたあとに男子が帰ってくることになる。
スタートラインからグラウンドの出口までおよそ100mここまでがポジション争いである。
そのあとは川の土手を走ることになるので、道幅が狭く、ばらけるまでは追い越しがしにくい。
およそ300人の3年男子がほぼ横一線に(2〜3列横隊だったのかなぁ)並んだ。
校長先生によるスタートの号砲がなった。
グラウンドの出口までダッシュしたが、よいポジションは取れなかった。
雑踏に巻き込まれた感じで川の土手に出た。
前の方は快調に飛ばしているようだが、僕のいる集団はとろとろだった。
「今までの努力がこの雑踏か!」といらいらしていたら、
後ろから、体育の時間でも圧倒的に速い同級生のTが「ちょっとごめんよ」と言って、
平泳ぎでもするかのようにみんなをかき分けて、僕たちを追い越していった。
彼は、部活動に入っていなかったが、駅伝の時は陸上部にかりだされる走力の持ち主だ。
「そうか、あのようにして前に出ればいいのか。」と思って、真似をしてついて行った。
気がつけば先頭集団の後方に位置していた。
ところどころに監察で立って居られる先生が順位を教えてくれる。
僕は、折り返し地点で30番ぐらいにいたようだ。
陸上部の連中はもっと前の方にいることが十分に想像できた。
この一年間のいろいろなことを考えながらのマラソンだった。
不思議に、勝手に「恋のライバル」と決めた「O君」との勝負は、あまり考えていなかった気がする。
抜きつ抜かれつ、順位があまり動かないままに終盤に入った。
ゴールのグラウンドが見え始めた頃からスパートしたが、
周りもスパーとしたようで順位の変動はあまりなかった。
グラウンドまで数百mのところに、レースを終えた女子が先生達と花道を作り、応援してくれていた。
その前で、運良く数人をばたばたと追い越して、そのままゴールした。
渡された着順カードには26位と書かれていた。
O君に勝ったのか負けたのかは今でもわからない。
10番以内に入りたいという夢はあったが、県の駅伝大会でも優勝する陸上部がいる中で、
それが夢の夢とはわかっていた。
夢破れた残念な気持ちがこみ上げてきた。
しかし、長きにわたってこつこつと努力してきた結果、
100番を遙かに出ていた2年生の時から比べると大躍進できたことにそこそこの満足感もあった。
僕たちのクラスは、30番いないに5人も入っていた。
当然ながらクラスマッチとしてはぶっちぎりの優勝だった。
卒業式まで、いや高校入試まで1ヶ月になってしまった。
祭りの後の寂しさのような虚脱感に陥った。
その日の夜、風呂に入って4月からのいろいろなことを思い出した。
頭を洗うときに、熱い湯をかぶったら、自分でも説明のつかない涙が次々にあふれてきてとまどった。
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