あらかん青春日記

癌闘病後、体力回復に向けて、マラソンを始めました。平成23年3月12日より1km走るごとに10円貯金をして東北に送る事にしました

初恋4修学旅行

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3泊4日の修学旅行。小遣い1500円。帰りは夜汽車でした。
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 最終日、僕たちは何事もなかったかのように接点を避けて東京見物をした。

羽田空港見学の自由時間にKのところに行って、

「昨日は、気を使うてもろうてありがとうやで。」と礼を言うと

「何のことや?」と、意外な返事が返ってきた。

僕が9組の部屋に行くいきさつを話すと

「僕は、呼んでへんで。陸上部の女子がそれぞれ男子に声かけて、9組に集まる約束しとったらしい。

発展家の誰かの発案みたいやで。

奥手の彼女は誰も連れて来んで、一人やったんやけど、途中おらんようになったなぁ、と思うたら、

二人で現れたから僕の方こそびっくりしたんや。

まぁ、ほんでも良かったやんか。」と、彼の知っていることを教えてくれた。

ものすごい速さで頭の中をいろいろな考えが回転していった。

Tさんが僕の言葉をかき消したわけや、彼女が嘘をついて僕を9組の部屋に連れて行った理由や、

陸上部のM君でなく僕に声をかけてきた理由などを・・・。

10月の「おつきあいは高校生になってから。」と言う言葉の存在感が僕の中で膨らんでいった。

 東京駅から乗った帰りの夜行列車の中では、旅の終わりと言うことで、

男子も女子もみんな少しの寂しさを感じていたような気がする。

僕の中にも、寂しさはあった。

 しかし、抑えきれない充実感とともに、修学旅行は終わっていった。

 「えっ?僕はKに呼ばれて・・・」と言おうとすると、

それをあわてて遮るようにTさんが「ええやないの。そこに座りいよ。」と言って、

彼女共々僕たちを輪の中に引きずり込んだ。

みんな楽しそうだった。

Kもことのほかはしゃいでいた。

トランプが配られた。

「囲み7並べ」という「7並べ」を少し複雑にしたゲームだった。

どのカップルもリラックスしていたが、僕たち2人だけは、こちこちに固まり正座を崩せなかった。

僕が、配られたカードを右手で右隣に座る彼女の前で広げ、

彼女がのぞき込みながら一緒に考えるというポーズだ。

ゲーム好きの僕だが、全くゲームに身が入らなかった。

しかし、生まれて初めて「幸福感」というものを感じたひとときだったかも知れない。

肩が触れんばかりの距離に彼女がいた。

物理的に、彼女と僕が最接近したときだった。

このときの彼女は、普段の彼女ではなかった。

気心の知れた陸上部の女子ばかりだったせいか、精神的に警戒心が全くない振る舞いをしていた。

僕は舞い上がってしまい、その後どのように過ごしたのかは良く覚えていない。


 自由時間終了とともに、青春の中の数少ない貴重なひとときのひとつは終わってしまった。

10分だったのか、1時間だったのか、今でもわからない。

ただ、気を利かせてその場に呼んでくれたKに心から感謝した。  

 11組の部屋に戻ると、「どこに行っとったん?探したんやで。」と、みんなから少し責められた。

 「修学旅行なんかどうでもいいや・・・」などと思いながら夜のランニングしていたような気がする。

とは言え、やはり貸し切り列車を使っての3泊4日の東京見物は楽しみだった。

汽車の中では、クラスみんなで談笑やゲームにふけった。

僕たち二人は、お互いに妙に意識してしまった。

彼女を含むグループから、「おーい、まあちゃんも加わらんか。」と、誘われても

「いや、今はいいよ。」と断ったり、

わざとのように彼女の視界から消える席を選んで座ったり・・・。

ぎくしゃくとはこのことなのだろう。

今思うに、臆病だったのだ。

彼女と談笑したり、トランプしたりすることを試みて失敗することよりも、

何事も起こらない道を選んでいたに違いない。



 事件は、2泊目の東京の旅館で起きた。

夕食も終わり、自由時間に売店で買い物をしていたら、彼女が僕のところに近づいてきて、

「9組のK君が、呼んでいるわよ。」と言うのである。

Kと僕は親友である。

Kと12組のYだけは、僕と彼女のことを知っていた。

そして、それぞれに思いを寄せている女生徒がいて、

お互いに、気持ちだけだがお互いを応援していた。

 「何だろうか。自分で呼びに来ればいいものを・・・。

  気を利かせて、彼女と僕が話すきっかけを作ろうとしたんだろうか・・・。

  まあいいや。あとから部屋を覗いてみよう。」と思って、買い物を続けていると、

  また彼女がやってきて「K君が呼んでいるわよ。」と、言ってきた。

彼女は、「着いて来い」とばかりに僕が用事を済ませるのを待つ仕草をした。

「何の用だろうか。せっかちだなぁ。」と思いながら、

周りに気取られぬよう少し離れて彼女について行った。



 9組の男子の部屋に入ると、そこは別世界だった。

陸上部の女子が全員集まっていて車座になってトランプをしていた。

それぞれ、男子が横に座っていた。

噂のカップルもあれば、単に同級生と言うだけの急ごしらえカップルもあった。

9組の担任の先生もいた。Kも思いを寄せるTさんの横に座っていた。

陸上部の女子から「まあちゃんも一緒にせえへん?」と拍手で迎えられた。

 彼女の話の本題はこうだった。

「お手紙のやりとりは高校生になるまで止めましょう。

 勉強に集中しないと行けない時期だから。」と。


 日本中の中3の男子ががそうだったと思うが、僕はこのときまで、

女の子と1対1で話をしたことなど無かった。

何をどう話したかもわからず、何となく「デーとのひととき」が終わってしまった。

手紙のやりとりはしないという結論を残して・・・

「高校生になるまで」というフレーズが救いではあった。

手紙を出したり受け取ったりすることに、今の時代では考えられない小さな罪悪感を感じていたが、

彼女もそうだったのかも知れない。


しかし、困惑した。

「言葉通りに受け止めていいのだろうか。」

「勉強の邪魔やらにならんのに・・・。」

「何か別に理由があるのだろうか。」

「元々無理があったと考えるべきだろうか。」

「ちょっとの間だけでも楽しい夢が見られて良かったと考えなければいけないのだろうか。」

あれこれ、ダメージを小さくする考え方を探ったように思う。

しかし、M君の存在が頭の中で大きく膨らんでいった。

自分を拒絶された気持ちはぬぐえなかったのだ。

楽しいはずの修学旅行も、急にどうでもいいような気になった。

 完全下校の時間の頃、時間をずらして教室を出た。

一人で戸締まりをして、4階の教室から薄暗い廊下階段を通って、

職員室に鍵を持って行った。

虚脱感がどっと押し寄せた。

しばらくの間、生まれて初めて味わう複雑な思いが頭の中を占拠した。

そして、その混乱と付き合うのに苦労した。

「暑中お見舞いを出す前に戻っただけやんか。」と自分に言い聞かせようとした。

「もう、郵便物で一喜一憂しないですむ。」とも・・・。

しかし、それは難しいことであった。



 5月頃から続いていた我流の夜間ランニングはずっと続いていた。

この出来事を境に、ランニングの熱はヒートアップしたような気がする。

彼女の注目を浴びたかったのか、勉強も手を抜くことはなかった。

勉強の時も、ランニングの時も彼女を忘れるために没頭しようとしていたのかも知れないが、

彼女との対話であったのかも知れない。

 ひょんなことから彼女との文通が始まって、一ヶ月ほどが過ぎた。

学校で彼女と口を利くことなんぞは全くなかった。

文通をしているという二人の秘密は心地よいものがあった。

運動会も終わり、中学卒業まで、大きな行事は11月の修学旅行と

(僕の通った学校は、中3の11月に修学旅行に行った。)2月のマラソン大会を残すのみとなった。

当然、クラス中が受験モードに突入していった。

その頃の僕には、小さな疑問があった。

彼女と陸上部のM君は、仲が良いと言う噂を1学期に耳にしたことがあった。

(そのときの戸惑い感を、「ジェラシー」というのだということを知ったのは

大人になってからのことのように思う。)

そのため、「彼女には、好きな人がいるのだ。」

「なぜ、僕に手紙をくれるのだろうか。」

「礼儀として、返事をくれているだけなのだろうか。」

「迷惑に思われているのではあるまいか。」という疑問を持っていた。

不安と言った方が適切かも知れない。

しかし、郵便物を楽しみにする生活は続いていた。

衣替えも終わって、修学旅行まで1ヶ月を切った頃、

彼女から「お話がある」と言うメッセージをもらった。

7月の席替え以来、彼女と話をしたことはなかったのでびっくりした。

「こんなことが誰かにばれたら偉いことになるかなあ・・・」とびくびくしながら、

放課後、用事もないのに校庭の掃除をしたり、職員室に勉強の質問に行ったりして、

クラスメイトが下校し尽くすのを待った。

中体連も終わっていたので、そんなに時間はかからなかった。

頃合いを見計らって教室に行くと、彼女も、忘れ物でも取りに来たかのようにして教室にやってきた。

僕は、最後列である自分の席に座っていた。

彼女は、教卓を背に、一番前の誰かの席に鞄を置いて、

取っ手で手遊びしながら何かを考えている風だった。

ちょっとした沈黙が流れた。彼女が口を開いた。

何を話したかは良く覚えていない。

戸も窓も開け放たれた教室の最前列と最後列に陣取って、ぼそぼそと話をしただけだが、

今にしてみれば、初めての「デート」と呼ばれるものだったのかも知れない。

それは1分だったような、1時間だったような不思議な時間の動きに感じた。

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