|
最近会ったお年寄りのEさんから、ちょっと悲しい話を聞きました。この方は、戦後アメリカの軍人と結婚してアメリカに来た方です。
国際結婚は、離婚率が80%と言われるのですが、この方達は本当に幸いな結婚生活で、実に57年も結婚生活をなさって、3年前にご主人が先に召されたのです。一人息子さんがあって、お孫さんも二人あります。
ところが、死後どうするかということについて、ちょっとふざけて話していたのでしょうか・・・すなわち、「私はあなたが死んだら、日本に帰る」とか。このご主人は、悲しくなったのでしょう、「家内は将来日本に帰ってしまうのでは、このカリフォルニアに埋葬されても、誰も墓にきてくれる人もいない。それより、両親や兄弟などが住む故郷に帰った方がいい」と考えて、死後は、葬儀も埋葬も故郷のボストンでお願いする」と遺言なさったようでした。
そして亡くなったのです。遺体はあっという間に、飛行機に乗せられて、ボストンまで運ばれてしまいました。この奥様は、二人が長年生活した思い出のカリフォルニアでではなく、ボストンで執り行われた葬儀に参列されたのです。勿論、向こうではEさんは勝手が分からないので、地元にいるご主人の兄弟達や、甥っ子や姪達が主体的になります。奥様とは言え、日本人のEさんは、ポツンと一人でいたようです。
日本のEさんの兄弟達は、「お前の入る墓はあるから、心配しないでいつでも帰っておいで」とは言ってくれるのですが、Eさんは、「なんで57年も一緒に生活した人に、最後の最後にあんなことを言ったのでしょう。私が、日本へ帰ると言ったばかりに、こんなことになってしまって・・」と涙を流して後悔するのです。
このご主人は、それは立派なお家を、Eさんに残してくれました。このEさんが生活していけるだけの、十分過ぎるお金も残してくれました。しかし、アメリカの仲のいい夫婦なら、必ず一緒に埋葬されるでありましょうに、今、Eさんは一人ぽっちになってしまったのです。近くにお墓もないので、お墓に花を飾ることも出来ません。
「あの人が生きている時に、『どこへ埋葬されても、私はあなたと一緒がいいわ』とでも、言っておけば、あの人はきっと私にとって墓守が便利なカリフォルニアに墓を買って、そこで埋葬されたでしょうに、私が『日本に帰る』と言ったばかりに、悲しい思いのまま死なせてしまい、お墓までボストンになってしまった」と、Eさんは悔やみます。
最近、Eさんは、ご主人のお墓参りにボストンに行きました。そしてそこで、向こうにいるご主人の家族に、「私が死んだら、主人のところに埋めてください」と頼んできたようです。向こうのご主人の家族も、それを受け入れてくれたようです。本当は、彼が生きているうちに、それを彼が知っていたら、・・・と思いましたが、まあそれでも一緒に葬られることが出来そうですから、それはそれでよかったでしょう。
さだまさしさんの、『関白宣言』という歌の中に、「お前は俺のところへ 家を捨てて来るのだから帰る場所はないと思え これから俺がお前の家」というくだりがありますが、「ふるさとは、遠きにありて思うもの」であっても、「帰るところにあるまじや」です。一人の人を愛したら、灰になるまで一緒にいてこそ、結婚生活は素晴らしいと思います。
ご主人は、遺体のまま埋葬されましたが、Eさんは、「私は、遺体で運べば手間も、費用もかかりますから、カリフォルニアで火葬にしてもらって、遺灰で、彼のそばに埋めてもらえばそれでいい」と言っています。
|
墓守ですか..そこまで考えた事はありませんでした。貴重な記事に感謝致します。
2009/8/26(水) 午後 0:26