あなたの知らない視点で語りたい〜フォト 詩 小説 エッセイ

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スペースシャトルの中といえば、無機的でクリーンなイメージだ。
ところがどっこい、スペースシャトルの中ほど人間臭い?空間はない。

これは映像では決して伝わらない現実のひとつである。
あるNASAの関係者は話す。
「地上に帰還してハッチを開けたときです。いっきに中の臭いが漂ってくる。
その臭いは、そりゃあもう鼻が曲がるほどひどいんです」

何週間も六畳一間で雑魚寝をする男ども。窓は閉め切ったままで淀んだ空気。そんなアパートの一室を想像すれば何となくわかる。
そう、宇宙は真空なのだ。宇宙に飛ばす乗り物は完全密閉でなければならない。
つまり外界との空気の入れ替えがないのだ。ゆえに臭いは滞留する。

だが、彼らは生活するしかない。
狭い船内にはもちろんお風呂などない。半年も風呂無し生活が続くこともある。せいぜいウエットタオルで身体を拭くことしか出来ないのだ。
どんなに清潔に保とうとしても体臭や汗の臭いは出てくる。
そしてそれに機械の臭いが混ざりあう。

トイレだって数人もいれば、入れ替わり何度も使われる。
完全無臭というわけにはいかないだろう。
オナラや吐く息、汚れた髪や身体。これら人間に欠かせない新陳代謝が生み出す排泄の臭い。
すべてが混じり合う。この臭いはそこで過ごす者しかわからない苦痛だろう。
 
そして、もう一つ映像では伝わらない現実がある。

あなたは船内がシーンとしていると思ってないだろうか?
それは宇宙空間の静寂だ。確かに宇宙空間は音が無い。
だが、宇宙ステーションの中は真逆である。
騒音に溢れ、耳をやられ難聴になる宇宙飛行士もいるほどうるさいのだ。

その騒音の原因はあらゆる装置の作動音である。
換気扇、実験装置、冷却水を回すポンプ、こうした装置の出す音が充満して騒音となる。
「音」もまた密閉空間の中で、こもったままなのである。

そして大いなる誤解は宇宙の孤独だ。

 
誰も見ていないどころか、常にカメラで監視されているのだ。
他にも宇宙酔いに悩まされる。地球をわずか八分で回るので、体内時計が狂う違和感もある。

宇宙はとてつもなく広い。だがシャトル内はとてつもなく狭い。
 ようやく互いがすり抜けるのがやっとの狭い空間だ。
国籍も民族も文化も違う人間同士が、プライバシーもなく24時間顔を合わせて生活を送る。
これほど狭い空間に長く一緒にいれば他愛ない互いの欠点が見過ごせなくなってくる。

そして宇宙には悠久の時が流れている。
だが、シャトル内の彼らは、秒刻みで次々とスケジュールがつまっている。

宇宙に触れようとすればするほど、宇宙との壁が立ちはだかる。

ここに大いなる矛盾がある。


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