あなたの知らない視点で語りたい〜フォト 詩 小説 エッセイ

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詩の部屋・くらやみ

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睡眠薬を50錠飲んだという

でも目が覚めた
死ねないね〜
と君が言う

クリスマスに電気を止められた

真っ暗な君の家を想う

君は十年以上も 真っ暗なトンネルを歩いている

小さな光が見えているはず
私は確信している

うん でもさすがに疲れたの
君は ささやくように言う

他人が どうこう意見するほど
事情は単純ではない

私は弱者を
無能扱いする世間を憎む

事情を単純化しているからだ

アドバイスも説教も批判も励ましも 
見当はずれなのだ

人様の迷惑になるようになったら
死にたい
テレビで著名な脚本家が言った

私はそのキレイごとに憤る

迷惑をかけないとは ご立派な心掛けだ

では迷惑をかけて生きている人々は
生きる価値が無いのか?

君は私にとって迷惑な存在だ

そう思ったとたん
私は無慈悲で無力だと落ち込む

私は君の役に立てない 

私も人の役に立てない
迷惑な存在なのだ

君は聞いてくれるだろうか?

今日はクリスマス

イエスは馬小屋で ひっそりと生まれた

生を祝おう 死は明日考えよう

                             by昨夜子

Sが再び心を病んでしまった。
心療内科に行ったと報告が入る。
しばらく仕事を休むらしい。

職場での人間関係が悪化していたようだが、Sは何も語ってはくれない。
かろうじて、SNSでつながっていたが、いつ音信が途切れても不思議はないと覚悟した。

けれど、音信は途切れなかった。
まるで、はるか彼方の銀河から届くとても弱い通信電波のように、小鳥のスタンプだけが送られてきた。

小鳥はときに、可愛くリンゴを差し出し、ときにギャーギャーと鳴き続け、ときに背中を丸めて震えている。
恐る恐る「大丈夫?」とたずねると、きちんと短い文章は返してくる。

私はまったくの無力だ。
情報量の乏しさの中、じっと忍耐強く明るい知らせを待っている。


〜目の無い魚〜

海が重さを増して以来

嵐がどんなものか 
目の無い魚は知ることはない

このように あなたと私も 静かに潜伏している

時に あなたは傍らにいるように
砂を巻き上げ 辺りを濁らせる

わたしは ハッとして 
千年の眠りから覚めたように
うろたえる

けれど そこにあなたの姿は無い

あるのは 暗黒に住む魚が 
砂にひきずった跡

嵐がどんなものか 
目の無い魚は知るゆえもない

塩水はぶ厚く重なり 視界を覆っている

このように あなたと私は 
静かに空想する

嵐のすき間から輝く一筋の光を

そして その光がまばゆく 水面を流れることを

光がどんなものか 
目の無い魚は知りはしない

けれど そこには
全身で知る温もりがある

このように あなたと私は 

同じ空想をしている

                                           by咲耶子

危険に向かって 

飛びこむ人がいる

ある者は 
その場の 怒りに駆られて 
騒乱の炎へ飛び込む

ある者は 
信念を貫くために
弾圧の壁を 突破しようとする

ある者は 
使命感に 駆りたてられて
紛争地に 足を踏み入れる

彼らは悲壮だが 
やむえない流れの中にいる

その流れは 滔々(とうとう)として
力強いので 魅了される

では きみはどうなのだろう?

戦いたいと 

縁もなき異国に想いを馳せる

きみは どうなのだろう?

きみは 究極のリスクを求めて
生と死の はざまに飛び降りる

政治やら 金やら 権力の思惑が
血であがなわれている

そういうことなのだ

血であがなわれていることが
重要なのだ

きみには 
燃え上がる怒りはない

きみには 
秘めた信念はない

もちろん 
大義名分を持ち出すような
使命感もない

だが きみには 
記憶というものがあるはずだ

生きる者と 死ぬ者の
耐えがたい 
記憶があるはずだ

そしてそれは
 
隙あらば 復活する苦痛であり 
諄々(じゅんじゅん)と悟る 
苦悩である

だが きみは 
いとも簡単に それらを愛する

今を反故(ほご)にして 
なによりも 愛する

戦いたいと 

きみは言う

地球上から 
殺戮と悲劇が無くならないのは

そういうことなのだ

ある者は 
耐えがたい 悲劇に恋するゆえ

殺し殺される

人間の業(ごう)は 滔々と流れている

そういうことなのだ

それは すでに大河となっている

           by咲耶子


過去が再び顔を出したよ

唐突に 君はそう言った

異国の地で受けた攻撃
バックシートの仲間は 死んでいたと言う

頭部に瀕死の怪我をした君

あれから長い時間が流れた

事実を知る者も 語る者もいない

君は頻繁に鼻をかむ
今でも血が混じるんだよ

そのときの怪我は 疼いたまま治らない

あの攻撃に 反撃したと聞いたのは
何年も経ってからだったんだ

自分は何も知らず 死んだ仲間を背負い
戦闘地点を離れたんだ

血まみれで逃げて 逃げて
少しでも遠くへ 遠くへ

ひどいよね だれも教えてくれなかった

多くの民間人が巻き添えで死んだって

君の笑いがゆがんでいる
そんなことを いまさら言われてもさ
 
自分は仲間から 見捨てられたのだと
ずっと恨んでいたのに

そんな告白を聞いたのも やはり何年も前だ

そしてまた 最近 
辛い事実を知ったと言う

検証実験があったらしい たぶんあの攻撃だよ
それで 後輩が死んだ

超加速のまま 急ハンドルを切ったんだ

ジープは横倒しになり 後輩は放り出されたって
そのまま 車両の下敷きになったんだ

葬儀には参加した

彼の棺を持ったとき あいつ 異常に軽かった

美しい顔だけが 残っていたから
身体の中身が無いことは 忘れていた

あいつの一部は どうしたんだろうね
生ゴミと一緒に 捨てられてたりして

いつものブラックジョークだろうか?
現実の闇はもっと濃いのだ
 
自分のせいかもしれないね

俺は異国で生き残って 
あいつは 平和なこの国で死ぬなんて

すごい皮肉だよね

しばしの沈黙が 君を過去へ引き戻す
異国の地 こっぱ微塵になった小さな町

君はもういちど つぶやく

自分のせいかもしれない・・・

平和な祖国 車両につぶされた後輩
割れた頭蓋骨 うずく頭蓋骨
 
残ったのは なんだろう? 
美しい後輩の頭と 歪んだ君の頭だ

まだ夢に出てくるの? 普通の夢は見る?

君がぽつんと つぶやく

平和の夢はもう 見られないよ

by咲耶子



たとえば、おおぴらに戦争をするアメリカだと、このような体験は、どうなのでしょう?
こんな話は、そこらじゅうにころがっています。
兵士は自由に語れるのでしょうか?

イスラエルの兵士は戦場であったことを、親に話さないと言います。
それは守秘義務ではなく、ひどいことをした自分の行為を恥じるからです。
親は責めはしないでしょうが、殺人を犯した息子の行為を嘆くでしょう。

人であることの道徳や倫理を、さんざん社会は説いて、それを若者は守ってきました。

しかし戦場では真反対の行為を、平然とするようになります。
人が怪物に変わるのです。

若者は怪物になってしまった自分の正体を、だれにも知られたくないのです。
異国へ派遣されただけで自殺をする? 誰もが持つ、大いなる疑問でしょう。

かれらは戦場での出来ごとを、誰にも打ち明けられず、精神を病んで、ついには自死を選ぶのです。
 
日本は70年間平和だった
 
 
「平和ボケ」と揶揄された
 
 
それでも実感として この70年間は素敵だった
 
 
平和による繁栄を享受したのだ
 
 
70年間はとても長い 
 
 
戦争を知らずに産れ
死んでゆく世代がいるほどの年月だ
 
 
日本人は銃の音を 聞いたことがなかった
 
 
日本人は街を兵士がうろつく場面を 
見たことがなかった
 
 
日本人は命の不安より お金の心配をした
 
 
言いたいことを やりたいことをやった
 
 
権力という恐怖に おもねることはなかった 
 
 
自由だ! 
 
殴りかかる者はいない!
 
 
小さい頃
手や腕のない帰還兵の物乞いをみた
 
 
彼らは70年の間にひっそりと消えた
 
 
亡霊が復活する
 
 
亡霊を呼び覚ますものがいる
 
 
血と汚物と恨みの臭いを嗅ぎたいという
 
 
イラクへ行った友人の顔には
冷笑が浮かぶ
「皆 アレを経験してくればいいんだ」
 
 
一度経験すれば 
悪夢が眠りを支配するだろう
 
 
戦場の夢 人殺しの夢 死体の夢
 
 
隠された狂気が「おおぴらに」なるのだ
 
 
亡霊は解き放たれた
 
 
正義という亡霊のために 
ディアは目を覆う 口を閉じる
 
 
「正義」の正体を垣間見る
 
 
暴走トロッコに乗った五人の命のために
橋の欄干から一人を突き落とす
 
 
命の尊さは数の違いだろうか?
 
 
欄干から他者の「命」のために 
焼身自殺をはかったら
その行為はなんと呼ばれるのだろう?
 
 
遠いチベットに想いを馳せる
今 目の前にチベットがあるというのか?
 
 
日本人は抗議の自殺を 見たことがなかった
掲げたスマホは やがて没収されるだろう
 
 
亡霊は「命を守るには
お前が命を捨てろ!」と せせら笑う
 
 
日本人は日本人を 罵倒したことがなかった
日本人は権力に 盾突いたことはなかった
 
 
亡霊は「侵略されるぞ!」と叫んだ
 
 
「平和ボケ」と70年間は揶揄された
 
 
日本人はいがみ合う ということを知らなかった
 
 
「平和ボケ」の70年間は 
 
 
それでも素敵な時代だった
 
                                     by sakuyako
 
 

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