|
君はあのとき 同意しなかった
――というより
慎重に 言葉を選んだのだ
むしろ 生きている喜び
君はそう言った
ねえ任務を果たしたとき 満足だった?
もちろん
それは達成感?
――そう聞いたときだ
君は妥協しなかった 自分の言葉を探しだしたのだ
――生きている喜び
じゃあ何故 病んだのかな?
もっと任務を欲したからです
殺気立っていたのだと思います
そんなことを考えるのは
危険なことだったのです どうして次を望んだの?
より過激なものを クリアしたかった
それは重要なこと?
――やはり君は 同じ言葉を繰り返す
――生きている実感が あるから
ふーん 生きている実感なんだ
わたしは 確かめるように繰り返す
君は コクリとうなずく 葬った過去を どう感じている?
後悔はありません
――わずかな間が出来る
でも一生罪を背負います
誰も賞賛しないのに?
それでも歴史の歯車のひとつです
――遠慮がちだが 声はまっすぐ響く
君にとって それは名誉であり 誇りでもある?
二十万人いるのです
誰でも選ばれる わけではありません 六千分の一の資質が 君を作り
さらに
六万分の一の忠誠心が 君を壊した
六万分の一でなく
ずっと六千分の一でいられたら 幸せだったよね? ――君は返事をしない
今は静かな生活があるよね
ただ生きています
平和ではないの?
平和であるゆえに
こころは戦場をもとめています ――君は今日も 二十種類の薬を呑みほす
こうして衝動を 引き止めているのです
過激な実感を ふたたび欲さないように ――美しい二つの目は 対象からそらされたことはない
いつか薬 止められるかな?
――君はそのままで笑う
どうかな――すっかり依存しているから
|
〜詩による ある風景の記録
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
|
※シグさんのご好意により縦書きにしていただきました。ありがとうございます。
ねえ
本当の君はどんななの? 雑踏の中 わたしの声は風になる 君は答える ――本当の俺は―― 君は煙草を 取り出す 震える手で 火をつける ――殺伐としています―― 煙を追って 遠くを見る 陽炎の大地と 吹きすさぶ砂塵を見る しばし君は 砲撃の音に立ち尽くす ――何故かな? いつも同じ夢なんだ―― 君がちらりとわたしを見る なにかを確かめるように そうして 咳をしながら もう一服 吸い込むと
決心したように 振り返る ――もう時間だね―― 時に見捨てられた 子供がそこにいる 国に帰依したままの 永遠の子供 君が指をそろえて 傷の額に手を当てる わたしも 同じようにマネをする ――また 会いたいな―― 大都会の谷間が 君を隠す 雑踏の流れが わたしを押し流す これほどの人の群れが 君を隠す 何ごとも なかったかのように 君を隠す 君は蜃気楼にたたずみ 静かに笑ったようだった |
|
「おやすみなさい」
と打ち込む
「愛してます」
と ひと言が返る
「切ないな」
わたしがつぶやく
「切ないよ」
ときみが返す
千の言葉はどこにいったのだろうと思う
億の言葉は必要ないのだと思う
これは最後に残る言葉なのだと思う
世界の終わりにあるのは
きみと このひと言
すべては まぼろしなのだ
きみと言葉を交わすための まぼろし
わたしは 小さくつぶやいてみる
「愛してます」
ことばは とおいそらに拡散し
わたしは はかなく いのちを失うように
眠りにつく
|
|
きみは そこに立っていた |
全1ページ
[1]



