|
小路幸也
高く遠く空へ歌ううた (Pulp‐town fiction) (講談社) (309)
「空を見上げる古い歌を口ずさむ」の続編、というよりはシリーズ2作目というほうがしっくりくる。
こちらも同様に少年の視点で描かれるが郷愁をそそられるというよりは異国情緒を感じる。
ぼく、また死体を見つけてしまったんです。
これで10人目なんです。
高くて広い空に囲まれた街で起きる不思議な事件。
少年・ギーガンは知らず知らずのうちに事件に巻き込まれていく。
第29回メフィスト賞受賞作家が放つ会心作。(「BOOK」データベースより)
ひとつだけ残念に思ったのがシリーズ作品だということ。
「空へ〜」はすべてがカチッと嵌る快感は得られないものの
「よく分からないけど不思議で心地よい」作品だった。
別のカタカナの町に同じ「不思議」の方程式を当てはめる必要はなかったのに、ということ。
それをのぞいてはとても好きな作品。
登場する少年たち、大人たち。
全員がただのいい人ではなく、すこしいびつでゆがんでいてかわいそう、でも心がある印象。
「鎌倉のおばあちゃん」がギーガンにかける言葉が素敵だ。
「あだ名なんてものはね、疵物のほうが良いんだよ。
疵物であることをちゃあんと自分でわかっていた方がいいんだ。
その方が、人間は優しくなれる。
それで優しくなれない人間は駄目なのさ」
と、義眼の少年康哉を町の人々同様にギーガンとあだ名で呼ぶ。
ギーガンの親友、ルピーの知り合いでキャバレーを経営するやくざは
「おまえのその顔は鏡だよ。
その顔を見た奴はいろんな自分の中にある顔を見ちまうんだよな。」
うれしいもかなしいもくやしいも何もわからない、表情のないギーガンに言う。
そして犬笛を聞ける不思議な「町の」少年ルピー。
幼なじみで誰よりもギーガンと一緒に過ごしたアメリカ人の少女ケイト。
そこに不思議な事件が絡んでくるのだけど、
何も起こらなくても読んでいられるのに。と感じるくらいにこの町はやさしい、素敵な町だった。
あ!シリーズでよかった!と思うのが唯一この表紙イラスト。
荒井良二さんという方の作品だ。
今後表紙読みしてしまうかもしれないくらいに素敵。
|