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<「データマイニング」とプライバシー保護をめぐる問題>
さて、グーグルといえば、こんなニュースを取り上げたい。興味深い問題を含んでいる。
インターネット利用者の個人情報を保護するため、EUの欧州委員会は4月14日、英国政府に法改正の措置などをとるように勧告したと発表した。 英国政府の対応が不十分な場合は、欧州司法裁判所への提訴も検討するという。 これはネットの閲覧履歴が無断でネット広告に利用されるのを防ぐのが目的で、ネット広告と個人情報保護をめぐる論議に一石を投じた格好だ。

「データマイニング」と呼ばれるマーケティング手法がある。 企業が蓄積した膨大な顧客データを解析し、経営やマーケティングに有用な情報を探り出す手法のことだ。 企業が広告を出す際に、プライバシーとの兼ね合いで、個人情報の利用がどこまで許されるのかという問題が、このニュースから浮かび上がってくる。

個人がネットでどんなページを閲覧したか、何を検索したか。その履歴を見ることで、その人の傾向を知ることができる。 それを知り得たら、今度はそれにあわせて「こういうものが欲しいんじゃないですか」と積極的にマーケティングすることが可能になる。 書籍販売最大手のアマゾンを思い出してほしい。ユーザー登録すれば、過去にどんな商品をチェックしたか閲覧履歴が残るだけでなく、その履歴を基に「お客様への本日のおすすめ商品」などのリンクが表示される。いまのネットユーザーが恐れているのは、「グーグルは本気でそういうマーケティングをしようとしているのではないか」ということだ。

グーグルが「Googleデスクトップ」を使って個人のコンピューターの中身を検索できるようにしたとする(グーグルはもちろんそれを強く否定している)。 閲覧履歴や検索履歴とあわせれば、「あなたのコンピューターの中にはこういうのがあり、検索ではこういうことをしてきた」と丸裸になる。 これらのデータを拾って蓄積したうえで、マイニングしてくれば、マーケティングの効果はきわめて大きいはずである。検索で受け身の情報提供をしているだけのグーグルがどこかで蓄積した個人情報を利用して積極的に推奨販売を始めるのではないか、という恐れである。 もちろんそんなことをした途端に賢明なネット市民は一斉にボイコットするだろう。 そうした情報が何故に蓄積されているのか、いつどういう形で商業利用が始まるのか、かなり神経質に見ておく必要がある。

「EUの欧州委員会は4月14日、英国政府に法改正の措置などをとるように勧告したと発表した」とはどういうことか。EUは「英国はネットの閲覧履歴という個人情報が漏洩することについて非常に緩い」と判断したのである。そればかりか、法改正をしなければ裁判に持ち込むぞと欧州委員会が脅してすらいるのだ。
わたしは、欧州委員会の判断は適切だと思う。英国がこれに対してどう出るのか、注目しておきたい。

<携帯電話が銀行の端末になるとどうなるのか>
外国の主なIT産業の最新動向について述べてきたが、日本ではモバイル関連に注目すべき話題がある。
NTTドコモは、エクササイズソフト「ビリーズブートキャンプ」をヒットさせたテレビ通販会社オークローンマーケティングを連結子会社化すると発表した。また、携帯電話を使って簡単に送金できるサービスを検討している。2010年に銀行以外の事業者の送金業務が可能になる法案が成立する見通しで、これを前提に、ネットショッピングでの支払いや個人宛送金などに活用してもらう計画だ。
 
1990年代前半に、シティバンク元会長のジョン・リード氏は、「携帯こそが銀行端末そのものになるのだ」といったことがある。携帯が定期券になり、銀行端末になり、チケットになるということをすでに予見していたのである。そして、そういうことをいままでドコモはやりたくてもできなかった。理由は、法規制のためである。しかし前述のように、来年に法案が可決されて「やりたくてもできなかった」ことが少なくとも一部可能になるかもしれない。
これが現実のものとなったら、ユーザーの利便性は非常に高くなるだろうし、eコマースの支払いも圧倒的に携帯電話が有利になるだろう。となると、携帯電話会社の中でドコモは強くなる。下の図(省略)を見ていただきたい。携帯電話3社の主な財務状況を示したものである。

純資産を見てみよう。 ドコモは4兆3000億円以上であるのに対して、auは2兆円弱、ソフトバンクは8437億円。そしてソフトバンクは借金が2兆4000億円以上ある。加入者数は純資産の多寡に比例していて、ドコモの加入者は6000万人近い。
さて、携帯が銀行端末になる−−。これをドコモが実現したらどうなるか。6000万の口座を持つ銀行ができるのである。こうなったら既存の日本の銀行はふっ飛んでしまう。口座数約4000万と日本最大を誇る三菱東京UFJ銀行ですら、ひれ伏さざるを得ない。 そんなメガバンクが誕生する。ドコモは会社法に縛られていなければ、日本最大の銀行になる可能性を持っていたのだ。
 
日本のメガバンクは自分たちが公的資金で救済されたという認識もなく、いつまでも金利を払う気もなく、ATMや振り込みなどでは高額の手数料(ちなみに今の銀行間振り込み手数料は315円である)を平気で取っている。一部の優良法人ばかり向いており中小企業や一般消費者という顧客指向は全くゼロ、といっても差し支えない。結局、金融庁のメガバンク政策がこうした独占企業を生み、日本から庶民の銀行が消えてしまった、といってもよい。銀行本来の三業務(預金、決済、運用)のうち、少なくとも決済部分を超廉価に(例えば1回3円、というようなレベルで)することは電話会社なら可能である。パケット1回分(0.3円)に若干の手数料を上乗せするだけで済むからである。来年の法案成立による規制緩和によって、いよいよそれが見えてきたともいえるが、すんなりそう問屋が卸すかどうか、役所の出方を注視していきたい。

<法規制が緩やかな中国で、もし携帯が銀行端末になったら…>
世界中の携帯電話会社が自社の携帯を銀行端末にしたとする。 仮にそれが実現した時にはチャイナ・モバイルが圧勝するのだ。 チャイナ・モバイルの時価総額は20兆円を超えているし、なにしろ加入者数は3億人から4億人という具合にどんどん増えている。日欧米よりも中国やインドを制した携帯電話会社のほうが世界最大の“銀行”になる可能性が高いのである。中国の場合は会社法が現状では緩やかで、日本よりも「携帯の銀行端末化」はずっと現実味を帯びている。たとえば電話会社がeコマースをやった場合、支払いが滞れば電話そのものを止めてしまう、という強制力を持ちうる。もちろん日本では電話代を滞れば止めることができるが、代行する資金回収業務でそうすることは今の会社法ではできない。中国などがこうした法律の違いを使って通信と金融の融合を果たすようになれば世界的に大きなインパクトを持つ、とわたしが従来から主張しているのはそうした背景があるからである。
 
携帯電話会社は、もちろん加入者の個人情報を握っている。 となれば先述のグーグルの例のように、データマイニングに基づくマーケティングも「やろうと思えば」できるわけである。 多機能化が進む携帯電話であるが、これにSuicaやPASMOのようなICカード乗車券の機能が普及したとしよう。すると、どういうことが可能になるか。加入者がどこの駅を利用しているかがデータとして蓄積されるのだから、それに基にしてマーケティングが可能になるのだ。
 
例えば、利用駅情報にあわせて駅ビル店のセールや割引サービスの案内を携帯宛に送るといったこともできる。勤務中に「中村さん、お帰りの際には有楽町駅前でこの画面をセーブして持ってきてくれたら、あなただけに30%割引の特典をさしあげます」などとポイントキャスティング(特定個人別のメッセージング)をすることが可能となる。日本ではこうした個人情報(上記の例では中村さんが朝有楽町駅を出て、多分会社に行っている)をeコマースに使うことは許されていない。しかし中国ではこれが禁止されていない。つまりこうした法律の違いを利用して通信と金融、そしてeコマースの総合サービスを提供する巨大な企業が彼の国から生まれてくる可能性もあるのだ。
 
日本の法規制が厳しすぎるのか、巨人NTTに対する縛りがきつすぎたのか、国内と海外の企業の動きなどを見ながら規制当局は日本の将来方向をどう持っていこうとしているのか、日本企業の国際競争力をどうつけていきたいのか、かなり大きな観点から見て行かなくてはならない。

最近ニュースで話題となったいくつかのIT関連の記事を今回は取り上げた。物事の捉え方、解釈の仕方、記事に含まれた意味、などを浮き彫りにすることによって実に多くの考察ができる。いやそうした考察を通じて自分の会社の方向性、あるいは日本の規制当局の評価、などもできる。ニュースの読み方の一例として参考になれば幸いである。 (完)

すでにどれくらいかの個人の閲覧履歴がハダカにされていると思います。 当然ながら、この情報がデータマイニングによって分析された時、有効なネット広告対象の情報になりうるというものです。 いわば、結果的に店頭で身分を明かしながらモノを買っているということになります。 それが本人同意なく行われてしまうということに問題があるというものです。 
もう一つは、携帯の端末化という問題。 銀行ならずあらゆる金融機関、あらゆるサービス機関が、シェア獲得を目指して携帯の端末化を狙ってくるということでしょう。 この携帯の端末化、競争激化を招くことは必至で、その結果、いわば独り勝ちを招いたり、バブルを招くことが怖い要素としてあるように思います。 金儲けならば何でもありは許されず、秩序ある市場コントロールは、「転ばぬ先の杖」というものでしょう。 「機会の均等」は無論必要なことですが、「結果の平等」の役割も登場させねばならないようにも感じます。

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