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(石原)知事として僕がやったことで一
番本質的ななおは、会計制度の合理化である。とにかく近代先進国の中で国の会計を単式簿記・現金主義でやっているのは日本だけ。
(石原)ドイツは州によって多少違うようだ。 とにかく複式簿記・発生主義じゃないから、日本では正確なバランスシートがない。それはおかしな話なので、東京都では全国に先がけて独自の会計制度を検討し、平成18年度から複式簿記に変えた。 それがやっと実ってきて、財務についてわりと複合的な戦略が立てられるようになった。 国はそうでないから、場当たりになってしまう。 ほんとうに国民は迷惑千万だし、余計な無駄も生じる。でも、国の沽券にかかわることだから、決して都の真似をしようとしない。
(勝間)東京都は、小さな政府に教育や警察を着々とやってきて、他の都市圏より成功している。 なのに、なぜ国からもメディアからも評価が得られないのでしょうか。
(石原)それは、日本人に正確な相対感覚がないからだ。 埼玉県と神奈川県、最後に千葉県もついてきて、首都圏4都県でディーゼル車規制をやった結果、明らかに首都圏の空気はよくなった。 小池百合子大臣(当時)に、国も排ガス規制をやりなさいよ、ずっと申し入れてきた。ようやく自動車NOx・PM法というのができたが、誰が見てもただのザル法だ。
(勝間)法律を骨抜きにするのが官僚のミッションだから。 アメリカもオバマ大統領になって、排ガス規制の検討に踏み切った。アメリカという国は「チェンジ」に価値を見出しているが、日本では変化という言葉にあまりよいイメージがない。
(石原)官僚が典型的だ。閣僚になると挨拶にやってきて、「私どもはたいして特技はないが、コンティニュイティとコンシステンシーを重んじる」とか言う。 この変化に時代に継続性と一貫性を金科玉条にされたら、何もできない。いいからどんどん朝令暮改しろ、と言い続けてきた。 彼らはまた、先輩がやったことを踏襲するだけで、その人が相当遠くへ行かないかぎり、ぶっ壊すということをやらない。 それをするのは政治家の役割だが、最近の政治家は不勉強で、役人の知識におんぶしているから役割を果たせない。
(勝間)政治の仕組みを骨抜きにしたのは官僚じゃないかと私は疑っている。
(石原)あなたなんかが政府のやっていることを見ていると、そう思うでしょう。 昔は官僚出身の大政治家がいた。総理大臣になったのは、岸信介、佐藤栄作、大平正芳など。ならなかったけれど立派な政治家といえば、賀屋興宣や椎名悦三郎など。 選挙制度が変わってから、政治家は小さくなった。
(勝間)政党助成金と選挙期間の設定と選挙手段の偏りが日本の選挙制度を現職優位にしているし、保守派優位にしているという危機感を持っている。
(石原)日本には保守も革新もないでしょう。 どこにあるんですか、革新が。
(勝間)これだけ自民党政権が失点を重ねているのに、民主党支持が盛り上がらないのは、イデオロギーの軸で革新を捉えていないからだ。
(石原)自民党をダメにして、湾岸戦争のときにアメリカの言うことを一番よく聞いて金を出した人物が代表をしているから。 小沢一郎が代表になったとき、「一番嫌いな人は」と質問されて、僕に名前を挙げたそうだ。いまだに小沢のやったことはけしからんと言っているのは僕ぐらいだから。 おかげでオリンピックまで嫌われているようだ。
(石原)それにしても、オバマはどんな変革をするのでしょう。 ああやってドルを刷って、ローンで分際を超えた贅沢をするシステムはもう限界だと思うが、アメリカを本質的に変えられるでしょうか。
(勝間)環境などでは中・長期的な政策を打ち出すでしょう。抵抗勢力との闘いになるが。ブレーンの中にマッキンゼー出身の優秀な女性をそろえているので期待している。
(石原)今、世界全体のGDPの総量よりもはるかに上回るお金がフローしているというが、どれくらいの量か。
(勝間)金融資産はGDPの3倍から4倍。
(石原)そうすれば、マネー・ゲームをやらざるを得ないでしょう。
(勝間)そういう意味では豊か過ぎるのだ。本当は、配分さえしっかりすれば、全員が食べられるはずだが。そうすると、暇な人たちがたくさん出てしまい、彼らはマネー・ゲームで遊ぶしかない。
(石原)僕はやっぱりモノをつくるのは結構なことだと思うし、何より面白い。東京都では新しい技術の発案者に「東京都ベンチャー技術大賞」を出している。毎年8〜9社を表彰するが、なかなかユニークな技術がある。一昨年には、糖尿病のために壊死した足を救うために、キンバエのウジを使うシステムがあった。壊死した部分だけをウジに食わせてきれいに除去することで、9割近くの人が足の切断をまぬかれる。
(勝間)医療費もかからなそうですね。
(石原)去年面白かったのは、川や下水道の流れにテーブルぐらいの大きさの装置を浮かせて、水流で回転翼を回す発電機。流れというのは底よりも表面のほうが速いから、浮かせておくだけで太陽光や風力よりも安定した電力が得られる。アジアの小さな村とか、川はあるが電気がないところへ持っていったらいい。
せっかくアイデアや技術があっても、なかなかビジネスとして育てられないから、何とか支援したいと思っている。
でも、やっぱりパッと目をつけるのはアメリカ企業。 あっという間に特許を押さえてしまう。大田区にプルトップ式の手を切らない缶を発明した人がいる。アメリカで、缶を開けたとき指を傷つけてコンサートができなくなったピアニストがメーカーを訴えたというニュースを知って、手を切らない缶を作った。それが海外で紹介されたら30か国以上から見学にきて、アメリカの企業に特許を売ってしまった。新技術に対しては、残念なことにアメリカのほうが敏感だ。東京大学の坂村健さんもトロンの著作権で儲けようとはしなかったし、日本人というのは自分の持っている貴重な技術の財産価値が相対的に分からない。なぜか。
(勝間)日本というタコ壺の中でしか判断できないこともあるが、イノベーションがあった場合にも、そのアイディアの種をちゃんと育成してお金にする仕組みがない。ビジネスモデルを作るのは、アメリカのほうが上手。
(石原)ああ、確かにそうだな。なにかうまいやり方はないかな。大田区には、水を燃やす研究をしている人もいる。 攪拌の技術の専門家で、僕が行ったら白い液体を二つ見せてくれた。ひとつは軽油と水、もうひとつはヒマシ油と水を乳化剤を使って混ぜたもの。 それを燃やすと、油に包まれた水が爆発してより完全燃焼に近くなるそうだ。テッシュでこよりを作って燃やしたら、ずっと燃えているんだ。ユニークな省エネ技術になるかもしれないと、経産省に取り次いたが、反応が遅い。 なぜだろう。
(勝間)経産官僚のほうには、そういう技術を開発するインセンティブが全くないので。
(石原)だけど、とにかく水が燃えるのだから、面白い。
(勝間)大学や大企業の研究所など、すぐに実用化される研究を求められるところからは、そんな奇抜な発想は生まれないかも。
(石原)日本人の気質が変わってきたように感じる。誠実な、馬鹿正直なところがなくなってきた。みんな小賢く、要領よくなってきた。
(勝間)いわゆるストリート・スマートと言われる資質だ。学問や知識よりも世間知や実践力を重視するという意味だが、テレビゲームの裏ワザを知って最短距離でクリアするように、リスクを取らずに進むのがいいと思っている節もある。
(石原)首都大学東京の宮台真司君が、若い人は情報を持ち過ぎていて、勘違いや思い違いをしなくなったという。思い違いをしないと成長もしないと思うが。典型的な例として、失恋しなくなった。
(勝間)失恋する前にやめてしまう。
(石原)自分の容貌や経済力を計算して、あれは俺の手に届くランクじゃないと判断したら声もかけない。だから失恋して死ぬか生きるか悩むこともないという。 なんだか痛ましい話。
(勝間)上手に枠内で生きてしまうのだ。
(石原)極端な話、喧嘩を売ってみてもにやにやするばかりで、反応がない。エゴというのは力だから、人間が衰弱している気がするな。この頃はみんなあなたの本を読んでいるが、良し悪しだ。あんまり人の言うことを熱心に聞くやつはなんだか頼りないんだ。
(勝間)だからといって情報を減らすこともできない。 情報に埋もれる中で、生きる力を取り戻すにはどうしたらいいのでしょうか。
(石原)なんでもいいから、本気で趣味に取り組んでみることでしゅうか。進歩しようと思うと工夫するから。すると感性も磨かれてくる。
(勝間)自分の軸をも持つという意識がないと、発信力もノーという力も弱まってしまう。断る力で軸を持つことを推奨したいと思う。 (完)
高い経済成長を持続できる経済大国にしたい、技術立国を目指すと言いながら、その仕組み作りはおろそかで運営方法も上手だとは言えない。 なぜでしょう。 本質に迫らないで表面的な答えをもって解決とする風潮があるのではないでしょうか。
イエスマンをして「かわいいヤツだ」と単純に評価する日本人社会のクセ。 「ノー」と言うには、まず勇気が要る、そして、なぜ「ノー」なのかを説明しなければならない。 イエスマンは簡単だ。 理由は要らない、ただ「イエス」と言って頭を上下に振ればいい。馬鹿でもチョンでもできる。 それが「かわいい」、馬鹿じゃないか。 本当に能があり力がある人は、簡単にはイエスとならないのだ。 そこには理由や論理を持っているからだ。
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