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私は歌が苦手だ。
普段から、鼻歌すら歌わない。 舞台発声の荒療治のおかげで、 大きい声を出すという壁は何とか乗り越えたが、歌うとなると話は別だ。 幼少期のかん黙症の名残である。 私にとって人前で歌うことは恥部を晒す行為に等しい。 今日、劇中で歌う私のソロのクチパク用の録音日だった。 ハァ〜〜……。あ〜あ。もう〜〜……。 ヘナヘナする私を見て あーくんは苦笑いをする。 「大丈夫だよ。力む必要は全くないから。音量はこっちでどうにでもするから。楽にね。」あーくんは優秀な音響さんだ。 そして、撮り鉄でもあり乗り鉄でもある。 飛行機も大好きだ。 愛読書は時刻表。 「楽しいじゃーん。あの数字の羅列にドラマが詰まってるんだよ。ほら、ここで出発した電車がこの時刻にこの駅に到着するでしょ。」云々カンヌン。「この地域からあの地域までどうやって行けばイイの?」 とたずねると、出発時刻、乗り換え回数、到着時刻まできっちり教えてくれる。 方向音痴の私は、地方公演にあーくんが付いてきてくれると安心した。 劇中の数秒の汽笛の音にも半端なくこだわる。 「その時代に走ってない音は使いたくないんだよね。」昔、地方の市民ホールで、本番前の空き時間に『電車でGO』で遊んでいた。 あーくんは音響技術さんであるが、 同時に照明技術さんでもある。 文化会館等の舞台スタッフとの打ち合わせは手っ取り早い。人件費も一人分。 超便利な人なのだ。 「ドラマにおける音響や照明はね、それ自体が目立ってはいけないんだよ。 あれ?BGMなんて入ってた? 照明なんて当たってた? それくらい自然でなきゃいけない。 アンケートで照明や音響が良かったと書かれてたら、それはある意味失敗なの。 お客さんがドラマに入り込んでなかった証拠だから。」 あーくんのこの言葉は目からウロコだった。 プロの技術スタッフだと思った。 小劇場界で今をときめく若手演出家たちも、 かゆいところに手が届くあーくんの仕事にリスペクトせざるを得ない。 「アートっていうのはねぇ。積み上げて積み上げて、バランスとって、 今まさにそれが破壊するっていう瞬間。 その瞬間が一番輝くんだよ。 お客さんは、それが見たいんだよ。 安全なものなんて魅力的じゃないんだ。」 それなら。 できるかもしれない。私にも。 ただ丸裸で人前に立つしか術がない。 人生において上手くウソをつき、立ち回る技術も経験も培ってこなかった。 今、ここで、笑って泣いて怒って。 本当の気持ちを総動員して挑む。 「じゃあ、前奏の最初から流すよ。ダメになったらやめてイイからね。」「……ハイ。」 ラストシーンに歌う『君が愛した人のこと』 レクイエムのような前奏が流れる。 身体がブレないように気を付けながら、 顔をポップガードに近付ける。 前奏の直後に転調し半音♯から歌い始める。 私が作曲家にお願いした。 お客がアレッと思っている間に歌が始まっていたいから。 マイクが拾う自分の声を聞きながら歌う。 ホントだ。全然頑張らなくてもいい。 心配していた息継ぎもスムーズだ。 少しずつ歌詞の感情に寄り添う。 胸の奥でキュッと結ばれていた蕾が じんわりとほぐれ開いていった。 「うん。イイ感じじゃない?」『恋ってなに』 アメリカのジャズシンガーみたいに歌ってほしい、と作曲家からの要求。 「うん。イケてると思うよ。」「……でも。もう一回。」 「うん。イイよ。」録り終え、自分の歌声を聞いてゾッとしたが、 あーくんは、これからしばらくこの私の声を聞きながら編集作業するんだ。 ごめんなさい。 「ありがとうございました。 あーくんと、エッチしてるみたいでした。」 その言葉の真意を瞬時に理解したクレバーな、 あーくんは、 「なんてステキなこと。」と照れ笑いしていた。 |

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「大丈夫だよ。力む必要は全くないから。音量はこっちでどうにでもするから。楽にね。」




> 寿銀子さん
嬉々としてやる人がカッチョいいと思ってやってみたんだけれどもね



うぅ・・・
う〜む・・・センターに立ってみて分かったのよ、自分にゃ向いてないってさ
そりゃ当時は服は派手だったけど、中身はごくフツーの、鬱々とした人間なので、さらけ出す、ってレベルまでは行けなかったよ。
当時、仲間の歌うたいにも「お前みたいに一線超えて、突き抜けちゃってる奴はVoに向いているんだろうけど」って言われて、あぁ、私は一生懸命突き抜けようとしているけど、そう努力してる時点で、違うんだなぁ、と自覚したのよ。Mなのかなぁ・・・両方いける口かもよ?w
コンビニの入り口・・・
い、いいのよ、私は行間読んで、声なき声を拾ってゆくから・・・
2019/4/16(火) 午前 9:25 [ Ms. Blue ]
> Ms. Blueさん

私がどうにも言葉にできかねるところを代わって「ヘイ一丁上がりィ!」ってやってくれる(笑)

いつもいつも
行間をくまなく読んでくれてありがとう
それほど繊細な神経の持ち主は実際のボディを人前に晒すより、内で造り上げた世界を提示するほうが「らしい」のかも
歌うの半端なくプレッシャーって
書いてたもんねそーいえば
なのに、ワタシの瞼の裏には嬉々として歌ってる映像が……。
2019/4/16(火) 午前 9:38 [ 寿銀子 ]
2019/4/16(火) 午後 0:20 [ 川崎香 ]
ポップガード!
「ナニソレ?」って一瞬思いましたが、テレビで見るレコーディングシーンに映り込んでいる丸いものですね。
そういうものを使って、口パク用の録音をする。
プロに対して失礼ですが、
「おお!銀子さんって、ほんとのプロの女優だ!すごおい!」
と思っちゃいました。
「ドラマにおける音響や照明はね、
それ自体が目立ってはいけないんだよ。」
っていう言葉、示唆に富んでいますね。
プロフェッショナル。すばらしい!
※あーくん「さま」ですよね。つけ忘れた?
2019/4/16(火) 午後 8:13 [ エヌ ]
全てにおいて、プロフェッショナルだわ
時刻表からドラマって、常人では想像ができないけど
時刻表って、目的地まで行く解答があって
早く着くには・・・
あそこは、もう一度行ってみたいから・・・
行ったことないから、経由して行こうかな・・・
とか
デジタルでなく、アナログ的なところがワクワク感があってね
2019/4/16(火) 午後 8:28 [ 約束の地 ]
> 川崎香さん

2019/4/16(火) 午後 10:44 [ 寿銀子 ]
> エヌさん

クーッO(≧∇≦)O
やっぱエヌさん!
「ドラマにおける音響や照明はね、
それ自体が目立ってはいけないんだよ。」
そう!それっ!そこっ!
⚫この文章で一番大事なところはどこでしょう。「 」
の「 」に入る答え(笑)
てゆーか、私が一番触って欲しかった箇所。もしその舞台に音響も照明も無かったら(そういう演出でない限り)明らかにもの足りない陳腐な作品になってしまう。
音響や照明は主張せず人物を目立たせ生かすことによって、シーンが動き立体的な世界が立ち上がる。
無くては困るのに主張してはいけない。
プロフェッショナルなバランサーですよね。
私は分かりやすいものに興味無くて、後々そーいえば、とか考えてみれば、みたいに時間差で気が付くもしくは気が付かない位のことが好きなんだ(笑)
ポップガードはあーくんが付けてるんだよね。違う音響さんだと無い時もある。
あーくんは君がさまです。
新人は「あーくん」てなかなか呼べなくて「あーくんさん」て呼んでるわ(笑)
あ、先生にはさまつけてるね、ワタシ(笑)
2019/4/16(火) 午後 11:28 [ 寿銀子 ]
> 約束の地さん

ホームで早いヤツが遅いヤツを追い越す「追い越し待ち」とかね、ここでコレとアレがすれ違う、みたいなことね。
ほら、時刻がここでズレてるでしょッ!
みたいな(笑)
あの方たち、やたらすれ違いや、追い越しにロマンを求めるのよネ
あーくんの撮り鉄はほんとにステキ。
写真見て泣けてくるのよ。電車の写真見て。風景の中を走る電車をドラマとして撮ってるの。
2019/4/16(火) 午後 11:38 [ 寿銀子 ]
> 寿銀子さん
じゃあ、わたしだけ「あーくんさま」と呼ばせていただいて(^o^)
わたし、教員なので、演劇の指導をすることがあるんです。
仲間の指導を見ることもあります。
当日の発表をビデオで撮り、後で校内放送などで見ると…。
「BGMがうるさい」って思うことが多いんです。
「あーくんさま」の仕事術を、今後に生かしていこうと思います。
2019/4/17(水) 午前 5:23 [ エヌ ]
> エヌさん



O(≧∇≦)Oキャハハ
そーそー。学芸会とか素人の発表会でありがちな、BGMと照明であおるやつ(笑)
すーぐ、赤とかピンクとか使いたがる
エヌさんは鑑賞行事とかの担当になってそうっ
学芸会といえど、日本の演劇の底上げのために妥協してはいけませぬ
逆に俳優が気を付けることはBGMに流されないことなんです。特に悲しげな音楽流れてる時。演技は音楽と拮抗しないといけない。うっとりと悲しげな芝居してたらハズいやつです(笑)
エヌさんも気軽にあーくんって呼べないのね(笑)
2019/4/17(水) 午前 6:37 [ 寿銀子 ]
役者さんって、大きい声を出すので歌も上手だと思って居ました。
人間同士が触れ合って居る舞台、暫く見て居ないけど観たくなりました。
何事も上手な人の演技は流して見て居ますが、たどたどしいと、
相手に成りきってハラハラして見、上手く行った時の観衆はホッとして、相手に成りきって拍手しますよね!
役者さんて、人を泣かせ、喜ばせる良い職業ですね!感激。
2019/4/17(水) 午前 10:32 [ ふみちゃん ]
音響さんには
昔
憧れましたね
照明さんにも
音楽系がすきだったので
音響やって照明やって
たまに自分もステージ立って…
憧れます
ボロいバンに機材詰め込んで
ツアーとか
ホント憧れてましたね
作品を創るってのは
本当に楽しいですよね
みんなでワイワイ少しずつ
積み上げて
やっとこ完成させて
いざ出してみたら
あそこダメやったなww
とか
お前トチってたでwww
とか
ドラム走り過ぎとかw
シンバル倒すなwwwwとか
今となっては儚い夢でした
2019/4/17(水) 午後 4:39 [ - ]
> ふみちゃんさん



声の響かせ方も色々ありますし。
一般の方は、お芝居を観に劇場に行くなんて習慣がないですよね。
だから、舞台俳優も育たない
是非機会があったら観に行ってあげて下さい
芝居は技術でありますが、歌はもっっと技術ですからねぇ
ワタシにとって、死ぬまでにその秘密を解き明かすために取り組むべきことが、歌うことなんです。
歌うということが、どういうことなのか、解らないんです。
2019/4/17(水) 午後 9:58 [ 寿銀子 ]
> おしゃけさん



いらーーーーーん
最後の一行。いらんぞーー!!
またやればイーじゃないか。
規模が小さくても。
人前で。
一年後位に設定して。
楽しいよね、ダメ出し大会(笑)
音響さんって総じてじっとり系オタクで。
照明さんは女でもサッパリ系オトコマエ。
おしゃけさんはどっちかなー。
σ( ̄∇ ̄;)ンーー
2019/4/17(水) 午後 10:08 [ 寿銀子 ]
初めまして。
久しぶりに涙が込み上げました。
2019/5/9(木) 午前 9:03 [ 彷徨いビト ]
> 彷徨いビトさん
あっ!
はじめまして!!!!
嬉しいです!!
いらっしゃいませ💓💓💓💓💓
2019/5/9(木) 午前 9:19 [ 寿銀子 ]
> 寿銀子さん
あれっ⁉
何で、ここにもコメ入ってんだろう?
この記事に「涙が込み上げる」って、
変態だと思われたでしょう?
<(_ _)>
2019/5/9(木) 午後 2:00 [ 彷徨いビト ]
> 彷徨いビトさん
💓
あははははははは✨✨✨✨✨✨✨
そんなことないですよーーーー!!!
乗り鉄か芸術家の方かな(笑)
って思いましたよ〜〜!
ある意味変態なのかもしれないですね(笑)
2019/5/10(金) 午前 0:57 [ 寿銀子 ]
よしむねです。


恥部をさらすより…
であれば拝見します
歌声よりもそちらに興味ありまーす
ねー銀子さん…
大事なことに気づきました。
このペースだと、今月中に
読破できないや😅
2019/8/17(土) 午前 1:18 [ よしむね ]
> よしむねさん


ほらっ!!
だから!!
welcome to Ameba
でもココ消滅するまで放置するから読めるコトは読めまっせ
歌うことは恥部を晒すのに匹敵するくらい恥ずかしいンだってば!
2019/8/17(土) 午前 7:15 [ 寿銀子 ]