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野球は全く解らない。
野球どころかスポーツ全般に興味がない。 それでも高校時代、 夏は毎年手作りのヘソ出しノースリーブとパンツ丸見えミニスカートで、炎天下チアリーダーとして高校野球の応援をしていたのは、 私がバトン部に所属していたから。 バトン部の活動は、 地域の祭りのパレードへの参加、 学校の文化祭での発表、 そして夏にはバトンをポンポンに持ち替えて 灼熱のスタンドで高校野球の試合の応援。 バトン部の女子たちは、各々千代紙にメッセージを書き、折り鶴を作り、それらを美しくグラデーションに繋げ千羽鶴を作った。 更に野球部員一人一人に渡すお守りを手作り。 ああ。けなげ。 そんな私たちの純粋な熱い思いが通じたのか 公立である我ら高校野球部は、毎年地方予選でかなり上位までいっていた。 いつもいつも、 目の上のたんこぶは ヤツらだった。 向かいのスタンドに広がる赤い集団。 県下一偏差値の高い私立高校。 試合の応援は全校生徒が召集される。 ブラスバンドやチアリーダーの数も 私たちの倍以上。 野球部員は県内外から優秀な生徒をスカウトして推薦入学させていた。 うねりながら怒号を上げる赤い塊に 私たちはゾッとした。 これは軍隊か。宗教か。 パーフェクトに固められた彼らを前に 私たちに勝ち目はなかった。 決勝戦で敗退した。 悔しい悔しい。こんなのフェアじゃない。 恨めしい惨めな気分で 学校に戻るバスに乗り込もうとした時 向こうから歩いてきたのは 愉しげに談笑する赤いミニスカート集団。 甲子園出場が決まってホクホクしている 敵チームのチアリーダーたちだった。 私たちはきっと般若の形相をしていたに違いない。彼女たちは歩を止め、顔を強ばらせた。 ヤなとこで鉢合わせしちゃったな。 お互いそう思っていた。 バツの悪い沈黙。 無視してさっさと皆でバスに乗り込むこともできたが、それではあまりにも悲しすぎる。 これ以上惨めに負けたくなかった。 私たちは、誰からともなく 彼女たちに向けてゆっくりと手を振った。 県下一秀才校の健全なチアリーダーたちは、 こてんぱんに打ち負かしてしまった、やんちゃな公立校のチアリーダーたちに手を振られるとは思わなかったのだろう。 申し訳なさそうな表情を浮かべ佇んでいた彼女たちは、一瞬息をのんだ後、満面の笑顔になって私たちに手を振り返した。 バスに乗り込んで、私たちバトン部は お互い顔を見合わせてフフフと笑った。 在校中に夢は叶わなかったが、 卒業して数年後に、晴れて母校は甲子園に出場した。 そしてライバルの赤いヤツらは 今夏も甲子園球場の舞台で今まさに健闘を続けている。 |

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