第壱網上无銘墓所

パンが無いなら餓えればいいじゃない

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単頁説

 
一ページ、書くことにする。
一ページ書くことにどれ程の意味があるのか分からないけれど。こうした制約は往々にして生きることを楽にするからね。

じゃあ、始めようか。



 最近、僕は本格的に自炊を始めた。
 料理をするとき、僕は帰り掛けに適当に一回分の食材を買って、適当に味付けして、適当に料理する。野菜を数百グラムずつ三四種類、肉を七八百グラム使うと、大抵二〜三日分は食べるものに困らない。
 僕は機嫌よく料理をする。
 夕飯を摂るようになってから、寝つきと寝心地が良くなった。最近は夢も見れるようになって、嬉しいのだ。

「ごめんね、ごめんね♪」

 謝りながら人参、たまねぎ、パプリカ、コールラビ、ジャガイモ、牛の腎臓の、皮を剥ぎ取り、切り刻み、壊し、損ない、焼き焦がし、満足するまでグツグツ煮、醤油・砂糖・塩・味噌・ケチャップ・お茶・コーヒーで味付けし、牛乳とお水で炊いたご飯と緑茶とホットミルクとトマトサラダと蜂蜜クレープを添えた。
 さあ、食前の祈りと体操だ。手を合わせて、次のように。
 僕に食べられるためだけに生かされてきた食材諸君、有難う!

「偽善だね」
 しゃがれた男の声がした。見ると、天井に寄りかかる不思議な姿勢で、怨呪さまはその綺麗な女のお顔を僕へ向けている。今日はポールスミスのチェックのスーツと青いシャツを召されておいで。男装の鬼女は気だるい瞳で僕を貫き宣ノタマった。
「感謝なんていらない、見逃してくれって、泣いたろうよ」

 僕は気づく。

 確かに、今正に僕の腹に収まろうとしているそれは、正しく邪悪を体現している。
 僕は箸を取る。箸を付ける。口に含む。租借する。念じる。
 ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。

 ごめんなさい♪

 

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或る神格の独白

 息苦しい 悲しい 切ない
 寒い 哀しい 怖い

 人肌が恋しい。人の体温を感じたい。触れたり触れられたりしたい。寄り添いたい。合さりたい。交わりたい。

 貴方でもいい。誰でもいい。
 誰かと混ざってしまいたい。


 
 

孕夜帖

夢。
 或る広い世界で、私は逃げ回る女を追っている。理性を失しけたたましい悲鳴を上げながら転げまわる彼女を、私は鬼と獣と男の間アイの仔のような、邪悪な存在と化して追っている。

 或る大きくて狭い世界に閉じ込められ女を犯し、損ない、嬲り、殺し、また犯し、喰らい、そして犯す。自分の害意の出所が分からず、不思議に思いながら、それを繰り返す。

 私の手に掛かった彼女らは暫く頑張るが、直ぐにくたばり只の肉に成る。私は肉に成った彼女らに男根を出し入れするが、達する前に屍を食い尽くしてしまう。
 私には視得る、女に戻り、口を拭く自分を。千切れた血肉に飾られた口歯が人のものではないことを。私は何かが胎に宿った事を知る。

 これは、夢だ。

 私は私に襲い掛かり掴み殺すと、その腹を裂いた。発アバかれた子宮は破れ、中から二本の腕が伸び出てきて、一本が私の右肩を掴んだ。
 私には視得る、腕の生え際に、瞑目する濡れた顔面が覗くのを。それは弟の面オモテだった。私は開口ヒラく、邪鬼の口を。人外の証明に、百八十度近くまで開口したそれを、眠るように安らかな表情の弟へ振り下ろす。私の胎に宿る弟が腹に還る瞬間を捉えようと、眼を口内に見開き、凝らす。
 正にその顔面が咬み潰され削り取られ一つの巨大な咬傷と化そうとしたその瞬間、彼の両目は見開かれ、口が動き、迫る私の口内へ向けて、おはよう、と呟いた。


―✕−✕−✕−✕−✕−✕−✕−✕−✕−✕―


 驚いて、思わず突き飛ばしてしまい、姉は間抜けな体勢でつんのめる事となった。
肩口の傷口を抑える手を押しのけて、血が溢れて来るのが分かって、その一種いわく言いがたい感触だけでもう俺は貧血を起こしそうになる。いまの俺には鏡は敵だ、見るだけで失神する自信があるぜ! なので、姉の個室の壁に立てられかけた身映しから必死の思いで眼を逸らし、助けを求めて姉に視線を投げるも、隅の柱に後頭部を激突して八倒する彼女は見るからにそれどころじゃなさそうだった。
 深呼吸をし、素数を数えて精神を安定させ、脱ぎ捨ててあった姉のシャツを拾って傷に押し当てる。姉がのた打ち回るのを止め、再稼動したのを確認し、俺は薄い視線を彼女に向けた。

「姉ちゃん……」
「悪い」
「悪いとかじゃなくてさ……」
「本当、悪かった。寝惚けてたんだ」
 姉は顔が引き攣っている。思い切りぶつけて出来たでかい瘤を痛そうに摩っていた。
「何処の世界に寝惚けて弟に咬み付く人間がいるんだよ!」
「手当てしような。人間の咬み傷は危ないから」
「お姉ちゃん起こすの本当もうやだよ、俺……」
「消毒しような、今日は私がお茶入れてやるから」
「姉ちゃん」
「救急箱テレビの下だっけか、取って来る」
「どんな夢見てたの」

 姉が、慌しく襖の向こうに消えていくのが見えた。
 答えは無かった。


 

没齢、中二

私は嘗て誰かに心で繋がってしまいたかった、でも。
繋げる心が無くなってからは、誰かに寄り掛かる事で満足できるようになった。
愛想笑いを覚えてから、生きるのは酷く楽になり。
もう誰も嫌ってはくれなくなって、長かった非日常は終わった。
好く出来た私の殻を、皆は好いてくれて。
誰も、私の死に、気付いた者は居なかった。

孕夜帖

 
 それが確かに息絶えていることを確認したあと、私は自室の畳に弟を座らせ、一緒に珈琲を飲んだ。弟は嘗カツて無いほど蒼白で、マグカップを両手で握り、その大きな目を瞬きもさせず、助けを求めるように姉を見詰める様は痛々しく、私を満足させた。
「おいしいね」
 弟は何も答えない。
 この子は、姉の帰ってくるまでの約三時間、何を思って待っていたのだろう、書斎に死体の転がる、あの狭い一軒家で。
  
 私が高二、弟が中一だったあの秋、或る日学校から帰宅したら部屋で父が死んでいた。

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