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一ページ、書くことにする。
一ページ書くことにどれ程の意味があるのか分からないけれど。こうした制約は往々にして生きることを楽にするからね。
じゃあ、始めようか。
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最近、僕は本格的に自炊を始めた。
料理をするとき、僕は帰り掛けに適当に一回分の食材を買って、適当に味付けして、適当に料理する。野菜を数百グラムずつ三四種類、肉を七八百グラム使うと、大抵二〜三日分は食べるものに困らない。
僕は機嫌よく料理をする。
夕飯を摂るようになってから、寝つきと寝心地が良くなった。最近は夢も見れるようになって、嬉しいのだ。
「ごめんね、ごめんね♪」
謝りながら人参、たまねぎ、パプリカ、コールラビ、ジャガイモ、牛の腎臓の、皮を剥ぎ取り、切り刻み、壊し、損ない、焼き焦がし、満足するまでグツグツ煮、醤油・砂糖・塩・味噌・ケチャップ・お茶・コーヒーで味付けし、牛乳とお水で炊いたご飯と緑茶とホットミルクとトマトサラダと蜂蜜クレープを添えた。
さあ、食前の祈りと体操だ。手を合わせて、次のように。
僕に食べられるためだけに生かされてきた食材諸君、有難う!
「偽善だね」
しゃがれた男の声がした。見ると、天井に寄りかかる不思議な姿勢で、怨呪さまはその綺麗な女のお顔を僕へ向けている。今日はポールスミスのチェックのスーツと青いシャツを召されておいで。男装の鬼女は気だるい瞳で僕を貫き宣ノタマった。
「感謝なんていらない、見逃してくれって、泣いたろうよ」
僕は気づく。
確かに、今正に僕の腹に収まろうとしているそれは、正しく邪悪を体現している。
僕は箸を取る。箸を付ける。口に含む。租借する。念じる。
ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。
ごめんなさい♪
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