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別れのブルース 藤浦 洸
窓を開ければ 港が見える
メリケン波止場の 灯が見える
夜風 潮風 恋風のせて
今日の出船は どこへ行く
むせぶ心よ はかない恋よ
踊るブルースの 切なさよ
< エッセイ >
昭和11年 2・26事件
日独防共協定調印
昭和12年 上海事変開始
国民精神総動員体制
「別れのブルース」が流行した昭和12年ころはこのような時代で
あった。
代用品生活、配給、パーマネントはやめましょう、日の丸弁当
奨励、国民服・もんぺ姿。
今でも右翼の街宣車で声高く歌われている「出征兵士を送る歌」
のような軍歌で国民精神が高められていた背景にあって、何の
へんてつもない恋歌「別れのブルース」の意味がきわやかにたって
くる。
娼婦か女給が本気で一夜限りの外人マドロスに恋をする歌は
淡谷のり子によって、いやがうえにも退廃的に、そして彼方への
憧憬を込めて歌われたのに違いない。
執筆 阿木津 英
歌人 福岡県生まれ
* 写真 横浜港に面した赤レンガ倉庫
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中島みゆきの伝言板
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はりまや橋
山本かずこ
落日を背にして歩いていると
はりまや橋が赤く燃えているときがありました
燃える橋を渡っていると
向こうからやってきた
枯木のようにかれた男が
あっというまに メラメラと
燃えあがるときがありました
気がつくと
私も燃えていて
いつもはかなしいあの姿勢も
そのときばかりは 生きて極楽を
何度も何度もかいまみたりすることがありました。・・・・・
< 解説 > 井坂 洋子
山本かずこの詩の風景には親しい人が現われ風景は特別なぬくもり
を持って息づいている。
見慣れた町、渡ったことのある橋は、彼女の手になると架空の地のような
輝きを発す。
ここに掲げた<はりまや橋>は、男と女のかかわりを、二人の時間の
推移、その長さやくだくだしさを瞬時にして言ってのけている。
ここに登場する男を、みしらぬ他人であると読んでもいいし、恋人や夫
であっても本質的には大差ないのではと思わせる、そんな妙がこの詩にある。
* 出典 日本の恋歌 吉行和子編
(株) 作品社
* 画像は友達の舞さんからいただきました。
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萌ゆる恋の第5回目は、宮城県生まれの女流歌人『原 阿佐緒』の短歌を
タイトルにしました。
【 原 阿佐緒 】
君とゐて わが生ままくの 子を欲しと
思ふ日のあり 悲しき極みに
【 解説 】
東北大学教授・石原博士辞職す、病気職に堪えずの裏に女流歌人・原 阿佐緒
との道ならぬ恋ーーーー大正10年7月30日、大きく全国紙に報じられた恋愛事件
は一大ニュースとなる。
日本で唯一の相対性理論の権威である博士は、41歳。
妖艶なる美貌のスター阿佐緒は34歳。
二人にはそれぞれ子女がいたが、二人は千葉県保田の海辺に愛日荘なる愛の巣を
かまへ、世間をへだてた。
大正12年9月関東一円を大震災が襲うが、大震災の惨状もどこに、愛日荘
の愛の日々は静かに続いた。
この蜜のような愛は永遠に続くかに見えたが、阿佐緒は、女である前に二人の
男児の母であった。
昭和3年秋、「今こそ私は二人のわが子と、老いた母の許へと・・・・・・・」
忽然と愛日荘を飛び出し、阿佐緒は北へ向かう車中にいた。
(エッセイ 執筆 正津 勉)
おしまい
画像は友達の雅さんからお借りしました。
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中島みゆきの伝言版。しばらくぶりに再開です。
中島みゆき ・・・・・ 不思議な雰囲気を持った彼女。人は彼女
のことを魔女と呼ぶ。
彼女の作った国語辞典をすこし公開します。
・ 化粧品 外見なんてものに引っかかる世の男を愚弄することに、
サディスティックな喜びを感じる人のためのびっくり色粉。
・ 香水 電車などの乗り物の中で、これを振り掛けすぎた女
と隣り合わせになると、死ぬほど酔わなければならないくすり。
・ 取材記者 容姿端麗、臨機応変、食欲旺盛、朝令暮改、付和雷同
記憶力頑健、貞操堅固、年中無休、ご苦労様。
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かそかなる心ほのめき
粧へり
ぼたん雪ふり
華やかなるも
斎藤 ふみ
( 歌人、東京生まれ )
日本座敷、壁際においた昔風の鏡台の、
華やかな縮緬模様の掛け布をさっとめくって
ひんやりした鏡の面に向いて、己が姿を映し装い
支度。無論愛しい人に逢いにゆくための。
色白の、髪は濡れ羽色、豊かな黒髪を櫛けずり、べっ甲かサンゴのかんざしでも一本
すっとさしてまとめ。
着物は渋い大島紬か、それが彼女をひきたてなまめかしくさせている。
紅は、いにしえの昔か京都の色街の女のように貝殻状の容器に入ったそれを、小指で
風情たっぷりにつけてゆく ・・・・。
彼女は気が浮き立ち息苦しくなる自分を窘めるように、自分の奥を鏡に真剣に覗き込む。
その鏡の中に大きなぼたん雪が重そうに軽そうに,舞っているさまがみえている。
* エッセイ 執筆 中平まみ
* 斎藤 史全歌集所収
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