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カトリック的。
信徒数13億人でも日本では知られていないカトリック。正統キリスト教会を気楽にご紹介します。

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『カトリックの信仰』

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最初におすすめするのは、岩下壮一『カトリックの信仰』(講談社学術文庫)です。

近代日本を代表する思想家であり、神山復生病院の院長としてハンセン病患者のために生涯を捧げた岩下神父が、公教要理(「カテキズム」とも。キリスト教の要諦をまとめたもの)に即してカトリシズムを説明したものです。

師が亡くなってから60年以上が経つのですが、残念ながら、極めて残念なことながら、日本語で書かれたカトリック入門書としてこの本を超えるものはいまだにありません。
そしてもう一つ残念ながら、この本は数年前から絶版状態なんですね。我が家には2冊ありますが、一般にはかなり入手困難のようです。

裏表紙には、次のような紹介文がついています。
西洋古代・中世の哲学的伝統を豊かに取りいれて独自のキリスト教的哲学を構築した岩下壮一が、カトリックの教えを問答形式で要約した公教要理を解説。
霊的実在についての生き生きした経験や洞察にもとづいたカトリックこそが、人間の真の救いと幸福につながる哲学、真の哲学であると説く。
近世哲学にのみ立てこもらんとする昭和の思想界に、カトリックの真理を開示して波紋を投げかけた不朽の名著。

…「不朽の名著」と言うくらいなら絶版にするなよー。頼むよ、講談社さん!!


岩下師自身が序に「そもそも本講義は、直接教師について公教要理を学ぶことのできぬ知識階級の研究者のために執筆したもの」と記していたように、カトリシズムを知らない、あるいはプロテスタント諸宗派の主張を通しての断片的で偏った知識しか持ち合わせていない、日本の大多数の研究者や学生が対象となっています。
岩下師は、カトリック攻撃に対しては敢然として論駁するとともに、カトリシズムとは何かを理路整然と説明しています。
ですからこの本は、現代のカトリック信徒はもちろん、反キリスト教・反カトリックの人にも是非一読をおすすめしたい本です。だって、カトリック教会を批判したいのであれば、そもそもカトリック教会がどのような主張をしているのかを知らなければ話になりませんものね。


ところで、現代のカトリック信徒の中には、「岩下神父はもう古い」と言う人がいます。
岩下師は第2バチカン公会議以前の人だ。カトリック教会は公会議によって刷新されたのだから、公会議前の議論を持ち出すことに意味は無い。そういう意見です。
…でもね、ちょっと無理があるのではないでしょうか。
真理に古いも新しいもありません。真理は永久不変なのですから、カトリック教会がキリストの設立した教会であるならば、教理を変えることはできません。岩下師が解説したカトリシズムと現代のカトリシズムとの間に違いは無いのです。
もしも教理が変わったのであれば、カトリック教会が真理に基づいていない、神によって導かれていないということになります。しかし、公会議文書を読めば分かるように、教理の変更など何一つありません(当たり前ですが)。


もう少し意味のある批判もあり得るでしょう。
『カトリックの信仰』の中で岩下師は、プロテスタント教徒の篤い信仰を称賛し敬意を払いながらも、プロテスタンティズムそのものに対しては、その矛盾点・問題点を鋭く指摘しています。
相手の信奉する教義がキリスト教に反していることを指摘することは、エキュメニズム(教会一致運動)を阻害するのではないか、という懸念を持つ人もいるでしょう。
この点に関して、ホセ・ヨンパルト神父の『カトリックとプロテスタント』から引用したいと思います。

一見するとこのようなこと
(引用者注:カトリックとプロテスタントの差異を指摘すること)は、エキュメニズムの精神に反するものとして批判されるかもしれませんが、私はそうは思いません。むしろ、その相違点を双方がはっきりと認識しないかぎり、真のエキュメニズムの運動は期待できないと思います。
強いて言うなら、もしこのような相違点を無視したり隠したりすれば、たとえエキュメニズムは一時的には成功したとしても、それは結果的にはお互いをだまし合うことになってしまいます。このようなことは、双方が真に仲よくなるためには決して得策とは言えません。
・・・(中略)・・・
人間は、一定の立場をとらないかぎり、寛容というものはありえないのです。
ひと言で言えば、自分の考えが正しく、相手の考えが間違っていることを確信しながら、なおかつその相手の考えを尊重することが、寛容の本質なのです。



さて、いまだ超える本の出ていない本書『カトリックの信仰』ですが、気をつけなければいけないことがあります。
それは、この本はあくまで要理解説書であって、護教論だとか異端論駁を目的としたものではない、ということです。説明されているカトリシズムそのものは永久不変の真理ですが、書中に挙げられているカトリック攻撃の議論は今から数十年も前の論法だということを忘れてはいけません。現代でも次から次と新しい議論が登場していることと思います。護教家たらんとする人は、そういった新しい議論についての知識も持つ必要があるでしょう。

「現代の岩下神父」が待望される時代です。この本を通して、誰か岩下師のように透徹した知性をもって「カトリシズムをして日本の知識階級に市民権を得しめる」ことができるように願ってなりません。
「暁の星なる聖母に対する祈」をもってこの小文を閉じたいと思います。

ああ輝ける明けの星なる聖マリアよ、御身はかつてさきがけとして地上に現れ、正義と真理との太陽なるイエズスの御出現近きを示し給いし者なれば、願わくは御身の温和なる光をもって日本国民を照らし、すみやかに彼らの心の闇をひらきて、永遠の光明なる御子、我らの主イエズス・キリストを正しく認むるに至らしめ給え。アメン。



◆書籍データ

著者 岩下壮一
書名 カトリックの信仰
出版社 講談社(学術文庫)
ISBN 4-06-159131-2


◆関連書籍

半澤孝麿『近代日本のカトリシズム 思想史的考察』(みすず書房、ISBN 4-622-03070-5、3914円)
 岩下神父が生きた時代のキリスト教思想家列伝。

小坂井澄『人間の分際 神父・岩下壮一』(聖母文庫、ISBN 4-88216-141-9、1200円)
 岩下神父の伝記。

モニック・原山『キリストに倣いて 岩下壮一神父永遠の面影』(学苑社、ISBN 4-7614-9109-4、3500円)
 岩下神父の遺稿集と関係者の寄稿。続編もあります。

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