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弟子 キリスト者(キリシタン)という言葉は何から来ているんですか。
師匠 キリストChristusに由来する名前だよ。(注1)
弟 そもそもキリストとはどのようなお方なのですか。
師 真の天主にして、真の人間である方だよ。(注2)
弟 真の天主というのはどういう意味ですか。
師 全能の父なる天主の、真の御ひとり子ということ。
弟 真の人間というのはどういう意味ですか。
師 終生童貞なる聖母マリアの、真の御独り子ということ。 つまり、天主としては天に母を持たないように、人間としては地に父を持たないということなんだ。(注3)
弟 では、どういうわけでキリストと呼ばれるのですか。
師 キリストとは、尊い香油を塗られた者という意味(注4)。むかし、王rex、司祭sacerdos、預言者prophetasの三者は香油を塗られたんだ。主イエズス・キリストは人性において王の上の王、司祭の上の司祭、預言者の上の預言者(注5)であり、聖霊の恩寵をあふれるばかりに持っておられるので、キリストと呼ぶんだよ。
注1 キリシタンという名称の由来
キリストChristusに由来するChristianusという語が、信徒の名称となった。日本では、ポルトガル語経由で伝わり(Christao)、「キリシタン(吉利支丹、切支丹)」と称された。
なお、古代・中世から多くの異端者が、また現代でもプロテスタント教徒が好んで自らを「キリスト者(英:Christian)」と称するため、正統キリスト教の信徒は「カトリック」と自称することが多い。日本でも同様で、カトリック信徒が「クリスチャン」と自称することは絶無と言ってよい。
注2 キリストは真の天主にして真の人間
「みことばは肉体となって、私たちのうちに住まわれた」(ヨハネ1・14)
「キリストは本性として神であったが、神と等しいことを固持しようとはせず、かえって奴隷の形をとり、人間に似たものとなって、自分自身を無とされた」(フィリッピ2・6-7)
天主自らが人類の救いのために地上に降り、人間の肉体と霊魂をとったものがキリストである。
キリストにおいて、無限の天主性(神性)が有限な人性を損なうことなく、混合・変性することなく包摂している。このことを天主の「託身(受肉)」と言う。
キリスト者は、キリストが偉大な人物であったとか立派なことを説いたとかいう理由によって彼を(神格化して)崇めているのではない。彼を天主と認めるがゆえに、彼の説いたことに従うのである。
注3 御託身の玄義
そもそも人類が救いを必要とする状況に陥ったのは、人祖アダムがエワの教唆によって天主に背いたからであった。女性を通して罪がもたらされたのであるから、罪の贖いもまた女性を通してもたらされる。こうしてキリストは第二のエワたる聖母マリアから人性(人間の肉体と霊魂)を受けたのである。
前注の通り、キリストにおいて天主性と人性は分離しているのではなく(天主としてのキリストと人間としてのキリストのふたつがあるのではなく)、不可分に結合(天主性が人性を包摂)しているので、マリアは「天主の母Dei Genitrix」である。(エフェゾ公会議、DS.272)
注4 「キリスト」の語義
救世主と訳される「メシア」というヘブライ語は、文字通りには「香油を注がれた者」という意味である。これをギリシア語に訳したものが「クリストス」であり、そのラテン語形が「クリストゥスChristus」となる。
注5 塗油と聖別
旧約時代から、ある者を王・司祭・預言者として聖別する(神聖な事柄で用いるために世俗的な用途から切り離すこと)ために塗油が行われた。
「王の王、主の主」(黙示録16:19)
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