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信徒数13億人でも日本では知られていないカトリック。正統キリスト教会を気楽にご紹介します。

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カトリック紋章探訪の第1回は、現教皇ベネディクト16世の紋章である。
といっても、聖下の紋章の詳細については中央協をはじめ各所で説明されているので、ここで改めて述べるまでもないだろう。ムーア人の頭と荷を負った熊とは聖下にゆかりの深いフライジング教区に由来し、ホタテ貝と思われる貝殻は聖アウグスティノの故事と、聖ヤコボ巡礼のトレードマークであることから前教皇ヨハネ・パウロ2世の巡歴の生涯とを記念するものである。
(ご存知でない方のためにアウグスティヌスの故事を説明しておこう。彼は教会博士の一人で高名な神学者だが、彼が三位一体の玄義を解き明かそうと思索にふけりつつ海岸を歩いていると、童子が貝殻で海の水を汲んでは地に掘った穴に注いでいた。海の水をすべてその穴に移しかえるのだと言う。アウグスティヌスが無謀だといって笑うと、童子は「至聖三位の秘義を知り尽くそうとする汝の企てこそ無謀である」と言ってかき消えたということである。この童子は天使ともイエズス・キリストご自身であるとも伝えられている。)


さて、ここでは聖下の司教枢機卿時代の紋章および歴代教皇紋章との比較に的を絞って見てみよう。

聖下がラッツィンガー枢機卿として教理聖省の長官を務めていた時代の紋章は、地が金と青の4分割で、図像は現在と同じモチーフである。教皇登位後はこれが赤と金の3分割に変わる。
聖下はなぜ地の色を青から赤へ変えたのであろうか。青といえば、前教皇ヨハネ・パウロ2世の紋章が、青地に金の十字架とM字であった。あえて青を止めたのは、前教皇の方針を踏襲しないという意思表示だろうか!?

ベネディクト16世の教皇紋章が発表された時、業界には激震が走った(かもしれない)。紋章に付随する装飾が、伝統的な教皇紋章のそれと大きく違っていたからだ。
サポーターは交差する金銀の鍵で、これは教皇紋章の伝統に沿っている。使徒聖ペトロがキリストによって初代教皇に任じられる際に、天国の鍵(人を断罪しまた赦免する権能のこと)を与えられた歴史的事実に基づくものだ。(もっとも、昔は鍵以外のサポーターを用いた教皇もいたようだ。)
目に付くのは、楯の上部の冠である。教皇が三重冠をかぶる伝統は、今から40年ほど前に教皇パウロ6世によって廃止されたが、教皇位を示すシンボルとして紋章には描かれ続けてきた。これが、ベネディクト16世の紋章では通常の司教と同じ司教冠になったのである。三本の装飾が入っており三重冠を想起させるものの、教皇に特異的な冠でなく司教と同じ形の冠を選んだということは興味深い。
もうひとつの興味深い点は、装飾としてパリウムが描き込まれたことである。パリウムとは司教が着用するY字型の帯で、古くは司教叙階の際に司教位のシンボルのひとつとして授与されたものである。


これらのことから、ベネディクト16世の紋章は、唯一最高の権威者、キリストの代理者である教皇としてよりも、使徒たちの後継者である司教団の頭、第一位の司教としてのローマ司教(=教皇)という意味を強調したかったのだと考えることができるだろう。

司教紋章 1

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カトリックでは、司教に叙階されると紋章を持つ習慣がある。
紋章coat of armsとは11世紀頃に始まるヨーロッパの慣習で、数種類の原色と金属色で個人を示すものである(日本の家紋と異なるのは、家ではなく個人を示す点である)。もともと戦闘中に互いを識別するために考え出されたとされているが、その便利さから、平民、聖職者、法人などにも広まり、全ヨーロッパで広く使われるようになった。

紋章はしばしば、紋章本体と装飾部分から構成される。本体は楯であり、その中に個人を示す図像が描かれる。装飾として、楯の上部には地位を示す冠や兜、楯の左右や背後には楯を支える図像(サポーターという)、下部にはモットーを記した帯などが配される。
司教の地位を示す伝統的な装飾は、楯の上部に司教冠もしくは帽子を置き、帽子の場合は紐についた房の数で細かい位階(司教、大司教など)を示すものである。サポーターは司教杖もしくは十字架で、楯の背後に斜めに、もしくは直立して置かれる。
教皇の場合は楯の上部に三重冠、サポーターは金銀の二本の交差した鍵である。

紋章は過去の遺物ではなく、現在の私たちも個人の紋章を作ることができる。その際に気をつけねばならないのはたった二点で、ひとつは他人の紋章と同じであってはならないこと、もうひとつは紋章のルールを守ることである。
紋章の規則については紋章学入門書などを読んでいただくとして、紋章が国際ルールに則って世界中で通用している以上、そのルールを逸脱しては紋章を作る意味がないということはお分かりいただけるだろう(ルールを逸脱した紋章を違反紋章といい、その数は決して少なくないのである)。

この連載では、主に日本の司教紋章を中心に色々な聖職者紋章を見てみようと考えている。
最初は、教皇ベネディクト16世聖下の紋章を取り上げるつもりである。

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