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旅人は歩いていました。
すると、向こうのほうに森が見えてきました。
旅人は森へ入りました。
そこは、アティスの森でした。
旅人は考えました。
アティス・・?
それは何のことだろう?
すると、旅人の前に可愛い女の子が現れました。
女の子は言いました。
「こんにちは、旅人さん」
旅人は答えました。
「こんにちは。あなたは誰ですか?」
女の子は言いました。
「あたしはアティス。この森でお花さんたちを育てているの」
見ると、森の中にはたくさんの花が咲いていました。
赤、黄色、緑、青・・・色とりどりの花です。
旅人は言いました。
「これを、あなた一人で育てているのですか?」
アティスは答えました。
「ええ、そうよ。だって、こんなにかわいいお花さんを、あたし以外の人になんか任せられないわ」
旅人は言いました。
「それはすごいですね。あなたは本当に花が大好きなんですね」
アティスはにっこり笑って答えました。
「ええ、すっごく大好き!お花さんは綺麗だもの。だから、あたしの手で育てたいの」
旅人は感心してアティスを見ました。
アティスはふと足元の花に気付きました。
「まあ!こんなところにあったのね!どこに種を植えたのか忘れてしまっていたの!」
旅人も下を見ました。
足元には、枯れた白い花が一輪ありました。
アティスは言いました。
「枯れてしまっているわ・・かわいそうに」
旅人は言いました。
「そうですね。もう元には戻れないのでしょうか」
アティスは言いました。
「それは無理ね。仕方ないわ。忘れてしまったんだもの。一輪くらいかまわないわ。それに、こんな枯れたお花、綺麗じゃないもの」
アティスは言いました。
「そういえば、この前植えた赤い花にまだ水をあげていないわ!ごめんなさい、旅人さん、それではまた」
アティスは去っていきました。
白い花のことなんて、忘れたかのように。
残された旅人は枯れた白い花にそっと触れました。
「完全に咲く前に、死んでしまったんですね・・」
旅人は白い花を綺麗に摘み取り、土の中へ埋めました。
「こんなことしかできなくて、ごめんなさい・・」
旅人は歩き出しました。
しばらく行くと、赤い花がぽつんと咲いていました。
赤い花は言いました。
「なあ、旅人さんよ・・さっきはありがとうな」
旅人は驚きました。
花は、話せるのか・・?
さっきは・・とはどういう意味だろう?
赤い花は言いました。
「驚かせてごめんよ。この森では、花も話せるんだ。まあ、あの女は知らねえだろうけどな」
旅人は尋ねました。
「あの女とは、アティスさんのことですか?」
赤い花は答えました。
「ああ、そうだ。あんなやつ、話しかける価値すらない」
旅人は尋ねました。
「それはなぜですか?」
赤い花は答えました。
「あいつは、俺達を物みたいに扱う。俺達が死んだところで、何も感じねえんだ。さっき、あんたも見ただろう?」
「白い花はあいつに殺されたんだ。白い花は、ずっと苦しがっていた。干からびていくのが辛い、苦しいと言っていた。自分は綺麗に咲くことができるのだろうかと。不安がっていた」
「俺の頭の中にずっと白い花の叫びが響いていたよ。俺達は花同士、離れていても会話ができるんだ」
「それでも、白い花は、あの女を憎んでいなかったよ」
旅人は言いました。
「優しい子だったんですね。白い花さんは」
赤い花は一瞬驚いたような顔をして、言いました。
「ああ。本当に優しい子だったよ。・・あんたも優しいな。さっきは、白い花を埋めてくれて、ありがとな」
旅人は言いました。
「いえ、あんなことしかできませんでしたが・・」
赤い花は言いました。
「あんなことなんて言うな。普通なら、何もしてもらえず、そのまま朽ちていくだけだったんだから」
「あの女は、そんなことしねえ。枯れたらもう、見てもくれなくなるからな」
赤い花は辛そうに言いました。
「俺は思うんだ。次は俺なんじゃないかって・・次は俺が死ぬんじゃないかって」
「枯れて、見向きもされなくなって、そのまま朽ちていくんじゃないかって」
「俺は、怖いんだ」
「なぜ自分の人生を人間が決めるのか」
「なぜ自分達の命を人間が握っているのか」
「なぜ・・なぜ・・なぜ」
「俺達の人生は、命は、あの女が楽しむだけの、そんなちっぽけなものなのか?」
「あの女がが手を抜けば、すぐに俺達は死ぬ。水をもらえなければ、すぐに俺達は死ぬんだ」
「ただ生かされているだけの存在なのか」
「人間は何様なんだ。俺達の人生を奪う資格のあるやつらなのか?」
「この森の世界で一番なのはあの女なのか?俺達の命を平気で奪うやつらが、一番なのか?」
赤い花は憎らしげに言いました。
「そんな世界、消えちまえ!!!」
赤い花はそれから一言も言葉を発しませんでした。
旅人は、赤い花に一礼すると、歩き出しました。
森は静かです。
しかし、耳を澄ますと、あちこちからすすり泣きが聞こえてきます。
旅人は思いました。
彼らは、ずっと死の恐怖と戦っているのか・・
旅人の脳裏に、さっき別れたアティスの笑顔が浮かびました。
旅人は思いました。
あの子は、これから先も、たくさんの命を奪っていくのだろうか。
あんな笑顔で。
この世界では、それが当たり前になっているのだろうか。
仕方のないことなのだろうか。
何もできない自分がもどかしい。
そう思いながらも、旅人は歩くことしかできないのです。
世界は、一人では変えられないのです。
旅人は、歩き出しました。
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すっごく久しぶりに書きました!
これは、深夜の3時くらいにふと思いつきまして、
ケータイにメモしたやつをさっきまとめて書きました。
これからも、こんな感じに更新遅れるかもしれないですが、
どうぞお付き合いください^^
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