不妊治療病院の院長 福田愛作のブログ

IVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

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8月20日の朝のNHKニュースで新出生前診断に関するものがありました。

山梨県の病院での新出生前診断に関する遺伝カウンセリングの重要性に関するものでした。番組の説明では以下のように掲載されていました。

 出生前検査を受けるか悩む夫婦が訪れる山梨県内の病院では基礎から詳しく説明を行う。1組につきおよそ2時間のカウンセリングを行い、納得のいく決断ができるまで中立の立場から丁寧に説明を行う。取り組みの背景にあるのが新型の出生前検査をめぐっての危機感。十分な説明がないまま子供に染色体異常がある結果を受け止めきれず精神的に追い込まれたり、中絶後に後悔するケースが増えている。訪れる夫婦の多くが不安に感じているのは子供に染色体異常が見つかった場合の対応。新型出生前診断を受け染色体異常が確認された妊婦の98%は中絶を選択している。
 この病院ではダウン症のこどもが日々どのように生活して成長するかを詳しく説明している。この病院でカウンセリングを受けた夫婦は説明を聞いて出生前診断の検査を受けないことを決断した。妊娠13週の時、自分たちで育てられるかについて漠然とした不安を感じていたが、家族で協力して育てることを決め不安も払拭されたという。日本医学会は新型出生前検査について、充実したカウンセリング体制があるなど一定の条件を満たした施設を全国で90箇所認定している。

 最初の方を見ていなかったので私の捉え方に間違った部分があるかもしれません。私が少し疑問に感じたところは、ご夫婦が「自分たちの両親にも話をして、何かあっても子育てに協力してもらえるので、安心して出産できます」というものでした。私の考えでは、遺伝カウンセラーは、何かの疾患があれば、その疾患が出生児にどのような影響をもたらし、今後どのような成長をするのかを、客観的に説明するべきだと思います。周りのサポート体制はもちろん重要ですが、それに関しては遺伝カウンセラーが説明するパートではないような気がします。子供たちは親より後まで生活しなければなりません。小さい時に祖父母の手助けがあることは力強いかもしれませんが、もっと長い目でその子の人生、またその子の周りの人々(兄弟姉妹など)の人生も考える必要があります。多様な情報を総合して、最終決断をする必要があるのではないかと感じました。生まれてくる子供だけではなく、その周りの人々にも影響を与える非常に重要な事象をカウンセリングする、遺伝カウンセラーとはそれほど責任の重い役割だ、と感じたニュースでした。

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 NHKのドキュメンタリー 透明なゆりかご を見る機会があったので私なりの感想を書いてみました。
NHKで8月11日夜遅くに“ドキュメンタリー 透明なゆりかご”と題して、東京の練馬にある成増産院の実録が放送されていました。私が東京に少しいた時に、成増にある他の産婦人科医院のお手伝いをしていたことがあるので、懐かしさもありチャンネルを合わせました。途中から見ましたので、番組すべてを見たわけではありませんので、感想として不適切なところがあると感じられれば、ご了承ください。

 NHKのホームページには以下のように内容が要約(原文のまま)されています。
16歳カップルの妊娠そして出産、18歳の中絶手術、37歳の出生前診断など、都内のある産婦人科病院で、小さな命の現場を見つめたドキュメンタリー。
小さな命が生まれる場所、そして時には小さな命が消えてゆく場所。そんな産婦人科の日常を描いた漫画「透明なゆりかご」が今、女性たちから圧倒的な共感を集めている。そうした産婦人科病院の日々をドキュメンタリーで描く。そこにある幸福、喜び、悲しみ、不安、葛藤、ゆれる思い。命をめぐるさまざまな選択を見つめ、女性、男性、その家族、それぞれの思いに耳を傾ける。

 実際の番組では、妊娠初期に胎児心拍が消失していることを患者様が告げられる場面や、人工妊娠中絶の手術を行っている実際の場面などが収録され、そのまま放映されていました。実際にそのような場面に身を置く者として、こういうシーンを見せることが必要なのかどころか、人工妊娠中絶の場面を見せていいのだろうか、と首をかしげたくなりました。人の人生には、誰しも、悲しい場面や苦しい場面、また他人には絶対に見られたくない場面、があると思います。この放送の中のいくつかのシーンはそれに相当すると思います。私の勝手な想像では、ドラマ“透明なゆりかご”を放映するに当たり、実際にこのような事実があり、それを基にしたドラマであることを、NHKが示したかったのかもしれません。みなさまいかに感じられたでしょうか。
 私は産婦人科医療に携わる人間として、命の創生や喪失は神聖なものだと考えています。そのような神聖な現場を公にお見せすることには賛成できません。患者様の心により沿う医療ではありえないことですし、産婦人科の現実を知っていただくための番組であっても、見せてよいものと、そうでないものの区別は必要だと考えています。これはあくまでも私個人の感想です。個々により考え方は違います、このドキュメンタリーが有意義であると考えられる方もおられることは承知しています。でなければNHKがこのような番組を放映することはないと思います。産婦人科医療を実践する者としての私の感じたことを書きました。みなさま、それぞれの思いで見て頂ければと思います。

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「産んでなくても我が子 瀬奈じゅんさん夫妻の選択」という題の新聞記事が目に留まりました。不妊治療と大いに関係があるので、皆さんにも見て頂こうと取り上げてみました。

寝返りにつかまり立ち、初めての離乳食――。その日の最高の1枚を保存してきた写真が「365枚」を超えた。女優の瀬奈じゅんさん(44)が、生後5日の小さな赤ちゃんを初めて抱いた日から1年がたった。不妊治療を経た後、特別養子縁組で迎えた待望の我が子だ。 風呂場で泡まみれになってはしゃいだり、得意げに手押し車を押して歩いたり。「この子が私たちに幸せを運んできてくれた」と目を細める。
との書き出しの新聞記事が8月4日の日本経済新聞に載っていました。
 この記事によりますと、瀬奈さんは10代から宝塚歌劇で活躍し38歳で結婚。その後7回の体外受精を受けられたが妊娠に成功されませんでした。2016年に特別養子縁組のことを知り、この制度による養子縁組を決意されました。2017年の夏に生まれてすぐの赤ちゃんを迎えられたそうです。

その記事の一部を原文のまま以下に引用します
 そして17年初夏。いくつもの名前の候補を考え、産院へ迎えに行った。哺乳瓶でミルクをうまく飲めなかった赤ちゃんが、瀬奈さんに抱かれると器用にゴクゴクと飲んだ。「ママを待っていたんだね」。見守った看護師らは涙を流し、新しい家族の誕生を祝福した。子供を手放した女性に抱いていた複雑な思いは、子育ての日々が消し去っていった。「子供の命の恩人。勇気をもって産んでくださったことを100%感謝している」。
「すごい決断をしたね」「えらいね」という反応に、養子が一般的でないと痛感する。「出産おめでとう」と同じ感覚で捉えられるようになってほしいという願いから、今年2月、あえて公表に踏み切った。我が子が与えてくれた幸せを、広く伝える活動をしていきたいと思っている。

わたしは日常診療でも、不妊治療の先を見据えた場合には、卵子提供や特別養子縁組は患者様に提示すべき一つの選択肢だと考えています。ですから当院では”Next Step"と題した勉強会を患者様と共に開催しています。この文章を見て、特別養子縁組も不妊治療の一環として、我が子を腕に抱く治療法の一つではないかと改めて感じました。

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卵子提供をよくご存知だと思います。今日の報道について少し付け加えます。
OD-NETと言って、病気(染色体異常や早発閉経など)により卵子が得られない女性に対して、すでにお子さんをお持ちの女性からボランティアとして卵子提供をしていただく、というプログラムです。私も学会にOD-NETの理事長をお呼びしたことがあり、IVF大阪クリニックからも患者様をお願いした経験があります。今回の妊娠例に含まれているかどうかは分かりません。ただ、この組織は高齢の患者様や不妊治療で子供さんが出来なかった患者様のためではありませんので、現在多くの方が卵子提供を受けておられる患者様達とは対象が異なります。

2018年7月28日のNHKニュースを以下に記載しました。
病気などが原因で、不妊に悩む女性に第三者の卵子を無償で提供する取り組みを進めているNPO法人は、取り組みを利用して去年1月に初めて子どもが産まれたことを公表したあとも、さらに3人の子どもが産まれたことを明らかにしました。
病気などが原因で、不妊になった女性とその家族などで作るNPO法人「OD−NET」は、病気で不妊に悩む夫婦に第三者から無償で提供を受けた卵子を仲介する取り組みを行っていて、去年1月に国内では初めて子どもが産まれたことを明らかにしています。

NPOは27日、その後、新たに3人の子どもが誕生したことを明らかにしました。産まれた子どもは、いずれも健康状態に問題はないとしています。

これまでに、卵子の提供を受けたのは、35歳から43歳の6人の女性だということで、出産した4人のほかは、妊娠しなかったケースと流産したケースがそれぞれ1例ずつだったとしています。

国内には生殖補助医療に関する法律がなく、産まれた子どもと夫婦の親子関係は明確に定められていないうえ、子どもが自分の遺伝上の親を知る権利についての法整備も進んでいません。

NPO法人の岸本佐智子理事長は「現在は、提供を受けたい人の登録を停止しているが、問い合わせは多く、法律の整備を急いでほしい」と話しています。


OD-NETも7-8年前に立ち上げられていますので、出生した子供の数を見れば、必要な患者様の数にはるかに及ばないことは明らかです。まして高齢で卵子提供を受けておられる方は数百人以上おられると思います。このようなボランティア団体に任すのではなく、日本でも公に卵子提供を認めるべきだと思います。そうすることで日本国内での有償の卵子提供も可能となります。多くの患者様が高額のお金を払い、アメリカや台湾、タイなどに行かれています。必要な患者様が卵子提供を受けられるよう、国内での体制を作ってほしいものです。

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遺伝子キャリアー・スクリーニング
アメリカでは不妊治療のために外来を初めて受診すると、ルーチンに(もちろん費用が掛かることですので"No"と言えば受ける必要はありませんが)遺伝病の保因者でないかどうか、現在DNA配列の分かっている病気についての保因者検査をします。通常、多くの人は一つや二つの珍しい病気の遺伝子を持っています。ほとんどのものは数万分の一ぐらいの頻度で発生する非常に珍しい病気です。ただ、もしカップルの二人ともがある特定の遺伝子を持っていると(常染色体劣性遺伝なら)、二人の間から生まれた子供には25%の確率でその珍しい病気の子供が出現する可能性が起こります。ですから、もしこのような組み合わせのカップルであれば受精卵着床前診断(PGD)をすることで、その病気を避けることが出来ます。こうすることにより、数万人に一人というような病気の発生を予防することができます。こんなことがアメリカでは不妊クリニックで普通に行われています。皆さん、どう思われますか?

 PGS(着床前受精卵スクリーニング)の話をすると、スクリーニングという言葉が共通するため、この遺伝子スクリーニングと混同される方がおられるため、最近はPGSのことをPGT(着床前受精卵テスト)と呼ぶことが提唱されています。流産や着床障害を起こす染色体の数に異常のある場合(異数性:Aneuploidy)をチェックする検査をPGT-A(PGTの中で染色体の数の異常を調べる検査)と呼びます。PGS(PGT-A)はスクリーニングとはいえ、この場合は病気やがん遺伝子などの存在を検査するのではなく、あくまでも流産しやすい胚や着床しない胚の原因となる染色体の数の異常を調べる検査です。

 遺伝子スクリーニングにしてもPGT-Aにしても病気を予防するという点で変わりはないと思います。科学技術の進歩により、このようなことが可能になっているのですから、希望する患者様は、科学技術の進歩の恩恵を受ける権利があると思います。日本以外の国ではこのような検査が希望する患者様には普通に行われています。何十年か先には、数万分の一の珍しい病気は日本にしか存在しないというような、珍しい病気のガラパゴス化のようなことが起こっても不思議ではありません。

 残念ながら、この分野では日本の患者様だけが置き去りにされています。日本独特のさまざまな問題のあることは理解できますが、その点を日本的に解決して、一日も早く日本でもこの分野の医療や検査が通常の検査として可能になることを心から祈っています。

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