不妊治療病院の院長 福田愛作のブログ

IVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

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 IVMと呼ばれる未熟卵体外受精のワークショップを2月に当院で行います。これは不妊治療専門の医師を対象としたもので、患者様向けではないのですが、これを機会に患者様にも当院のIVM(未熟卵体外受精)を知っていただきたく書いてみました。
 患者様の中にも多嚢胞性卵巣(PCO)またはPCO気味だと言われている方が結構おられると思います。当院では1999年に我が国で初めてIVMによる妊娠を得ました。当時は主要新聞すべてに大きく掲載されましたし、大阪ではNHKニュースでも報道されました。何が画期的かというと、卵巣刺激をほとんどしないので卵巣過剰刺激が起こりません。PCOの患者様では卵巣刺激をすれば、多かれ少なかれ過剰刺激を避けることはできません。PCOの患者様では人工授精などでも過剰刺激を経験された方がおられると思います。今や過剰刺激の症状もかなりコントロールできるようになったとはいえ、やはり体外受精の重篤な副作用に変わりありません。
 そこで体外受精の必要なPCOの患者様にとって大きな力になるのがIVMです。IVMは患者様の身体にも優しいのですが、お財布にも優しいのです。排卵誘発剤の量が少ないのでその費用も少なくなります。採卵前の夜間注射も要りませんから時間的拘束も少なくて済みます。
 当院でも既に100名以上のお子さんがIVMで生まれています。またIVMはリピーターが多いのも特徴です。これはPCOの方にとって優しい治療なので、一人目をIVMで授かれば、二人目は過剰刺激を伴う通常のIVFは考えられないようです。昨年は妊娠率も良好で胚移植当たり40%以上になりました。
 多嚢胞性卵巣と診断を受けられている患者様でIVM希望の方は、一度外来を受診ください。

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 1月6日(土)7日(日)に東京都すみだリバーサイドホールにて第23回日本臨床エンブリオロジスト学会が開催されました。私は長く日本臨床エンブリオロジスト学会の顧問をしている関係で参加しました。学会では資格試験の試験官や発表の審査員などの仕事や学会理事の方々と今後の会の運営方針などについてのアドバイスも行います。臨床エンブリオロジストとはヒトの精子や卵子、受精卵を扱う職業を言います。別名、胚培養士とも呼ばれます。名前が二つある理由は、臨床エンブリオロジストは日本臨床エンブリオロジスト学会が認定した資格であり、胚培養士は日本卵子学会が認定した資格です。同じ仕事をするのに二つの資格があります。国家資格ではないためどちらの資格を持っていても仕事はできます。一番古いのはこの臨床エンブリオロジストの資格です。
 この学会の学術集会に今回初めて患者会であるFine(ファイン)のメンバー(皆さん不妊治療経験者です)が演者として登壇し、患者さまの気持ちを自ら語られました。当日話をされた方は最終的にお子さんのできなかった方でしたが、聴衆は涙ながらにお話を聞きました。その中で、エンブリオロジスト/胚培養士からの胚に関する説明が有益であったことを何度も話され、治療を受けて初めてエンブリオロジスト/胚培養士の存在を知り、その役割と重要性を認識したと話されていました。

 ところがです。昨年12月9日に日本産科婦人科学会からの通達で、エンブリオロジスト/胚培養士は精子、卵子や受精卵について患者様に説明してはいけない、との指摘がありました。あくまで医療行為の一部であるから医師法違反に当たるというものでした。
 現在の生殖医療(体外受精)はエンブリオロジスト/胚培養士抜きでは成り立ちません。我々が体外受精を始めたころは採卵から卵子の培養に至るまですべて医師がやっていましたが、今や臨床(外来診察や採卵/胚移植などの外科的手技を伴うもの)と培養室(精子、卵子や受精卵を扱う仕事)の分業が明確になり、培養は100%エンブリオロジスト/胚培養士が担当しています。近年、培養や胚についてはあまり知識のない医師も増加しています。ですから精子、卵子や胚については担当しているエンブリオロジスト/胚培養士が一番よく知っているのです。彼らが卵子や受精卵について説明するのが一番妥当なのです。アメリカでは20年以上前でも精子、卵子や受精卵についてはエンブリオロジスト/胚培養士が説明をしていました。日本で何があったのか分かりませんが、時代を20年以上逆行させるようなことが行われようとしています。
 着床前胚スクリーニングでもそうですが、どうして日本ではこんなにも保守的になるのでしょうか。体外受精の一翼を担うエンブリオロジスト/胚培養士に国家資格を与えないどころか、患者さんとの接触も断とうとする理由が分かりません。すべての行為が医師の監督のもとに行われているのですから、エンブリオロジスト/胚培養士が自分の領分の仕事をするのは当然だと考えます。

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25年前に凍結された胚が、26歳の女性に移植され無事出産まで至ったというニュースです。
よく患者様から「受精卵って凍結してどれくらいの期間大丈夫なのですか?」と聞かれます。「何十年と大丈夫ですが、日本では受精卵を作り出した女性が閉経を迎えたところで廃棄することになっています」といつもお答えしています。とは言え今まで何十年も凍結してから胚移植をした経験がないので、動物での記録などからそうお話をしていました。またアメリカでは養子の代わりに、余剰の凍結胚を提供胚として、まったくの第三者に提供することが行われています。生物学的には繋がりはないのですが、胚移植から出産までお母さんとなる女性が行いますから、母子の繋がりには、出産後の赤ちゃんや乳幼児を養子にするより障害は少ないかもしれません。
ニュースは以下のようです(原文のまま)。
米テネシー州から科学史上初とされるニュースが飛び込んできた。26歳の女性が25年前に凍結した胚(受精卵)を移植し、妊娠に成功。11月に待望の赤ちゃんが誕生した。『Inside Edition』『CNN』『The Independent』などが伝えている。
テネシー州東部に暮らすティナ・ギブソンさん(26歳)と夫ベンジャミンさん(33歳)は、子供を授かることができなかった。ベンジャミンさんは不妊の原因となる嚢胞性線維症を患っており、夫妻は養子縁組を考えていたものの、たまたま「受精卵(胚)の里親(embryo adoption)になる」というニュースを目にしたことから今回の決断に至った。そして今年(2017年)3月13日、「National Embryo Donation Center(胚提供センター)」にて凍結胚移植を行った。
夫妻は2週間で300の提供者のプロファイルの中から、健康で自分たちと似た身長や体重などのバックグランドを持つ受精卵(胚)を選ぼうとした。たどりついたのが25年前の1992年10月14日に1組の匿名カップルから提供され、凍結された受精卵(胚)だった。25年という長いあいだ凍結されていた胚を移植することについて、ティナさんは「そんなに長期間凍結されていた胚で、ちゃんと着床するのだろうか」とかなりの不安を感じたという。
ところが見事着床し、ティナさんは出産に至ったのである。11月25日、エマ=レンちゃんは6ポンド8オンス(2948g)で元気に誕生し、ティナさんとベンジャミンさんを喜ばせた。
同センターでティナさんに胚移植を行ったキャロル・サマーフェルトさんによると、過去には20年前の凍結胚を移植した女性が妊娠・出産に成功したケースがあるという。今回、25年前の凍結胚が出産をもたらしたという事実は科学史上初。
しかしティナさんとベンジャミンさんにとっては、記録うんぬんよりも娘が健康で元気に誕生してくれたことが何より嬉しいようだ。ティナさんは「私は26歳ですが、この子はすでに25歳なわけでしょう。私たち、きっと親友になるわってジョークで言っているんです」と笑う。またベンジャミンさんも、エマ=レンちゃんと遺伝子上の繋がりこそないものの「自分の娘という以外に考えられませんよ。周りにはクリスマスはどうするのと聞かれるのですが、ただ娘を見つめて過ごします」と明かしている。
「本当に我が子が欲しかったから、娘が授かったのは本当に奇跡」と喜ぶ夫妻のニュースを知った人からは、「本当に良かったね!」「25年前の胚っていうのがちょっと奇妙な感じがするけど、出産成功して良かった。おめでとう!」「産まれた赤ちゃん、タイムトラベルしてやってきた感じだね」「家族でお幸せに」といった祝福の声があがっている。

私にとってこのニュースで個人的に嬉しい点があります。最初に書かれている東テネシーというところは、私が10年近く住んでいたところなのです。このニュースの発信源であるKnoxvilleにはよく行っていましたし、今回胚移植が行われたUniversity of Tennesseeの産婦人科とは共同研究もしていました。今回凍結胚を提供したNational Embryo Donation Centerは私の友人のJeff Keenan医師が立ち上げた組織です。今でもアメリカ生殖医学会で彼に会うと話をします。今年の学会ではこの話題になりそうです。
皆さん、数年間胚を凍結することはまったく問題ありませんからご心配なく。

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大切:2018年の基本理念

 明けましておめでとうございます。
2018年1月元旦は目の覚めるような美しい天気でした。いつも元旦の朝はお雑煮を食べる前に走るのですが、今年は走り出してすぐに「こんなにきれいな空はここ数年見たことがない」と感じるほどきれいな空でした。お正月の気持ちがそう思わせたのかもしれませんが、正にすがすがしい気持ちにさせてくれた空の光景でした。今年はいい年になりそうな予感がしました。
 毎年、私は院長としてその年のはじめに、今年の守るべき原則、理念のようなものを設定しています。私が当院の院長となった翌年の2005年1月から続けていますから、本年で14回目になります。もういい加減に止めたらという意見も聞こえてきそうですが。本年の基本とすべき理念を“大切”としました。医療面では患者様を大切に、もちろん精子、卵子や胚を大切にというのは当然のことです。それ以上に患者様の気持ちや心も大切に思い接してゆきたいと思います。個人的には、私も人生の後半です。この年になると感じるのですが、自分自身を大切にすることも重要だと感じています。自分を大切にできない人は、他人も大切にできないと言います。もちろん、自分の家族を大切にすること、自分の周りの人々を大切にすること、人ばかりでなく物を大切にすること、などなど大切にしなければならないものはいっぱいあります。目に見えないものでは、時間を大切に使うことも重要だと思います。私にとっては若い人のように多くの時間は残っていないのですから。人生にはいろいろ大変なことや大事なことがいっぱいあります、そのなかでも大切なことを忘れないようにしたいと思います。皆様にとって、大変な1年ではなく大切な1年となるよう、精一杯努力したいと考えております。

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昨日(12月15日)の奈良家裁での凍結胚移植の判決にかんする報道で感じたことがあります。
報道では、夫に無断で胚移植された結果出生した子供であっても、夫の子供と認められる、というものでした。これは至極当然の話で、一般常識と相容れるもので、万人に違和感はないと思います。結婚されていた当時のご夫婦の配偶子(卵子と精子)で作られた受精卵ですから当然の話です。報道では、この部分ばかりに関心が集まり、肝心の”凍結胚移植を実施するに当たって夫婦の同意を得たかどうか”に焦点を当てた報道が少なかったと思います。先日のブログにも書いたように、そもそもご夫婦の同意を得ていれば、この問題は起こらなかったはずです。この裁判が報道されたときは、医師が同意を取らずに融解胚移植を実施したことに対する訴訟だと報じられていました。その結果として、夫が(現時点では元夫となりますが)生まれた子を自分のことして認める自信がない、というものでした。
判決後のコメントとして、いわゆる有識者が、生殖補助医療の法整備の問題へと話を発展させていますが、そんな問題とは少し違うと思います。全ての医療の前提となる、患者様の同意を得なかったという、単純な手続きの問題です。生殖補助医療の法的な問題については、適切な場面でコメントしてほしいものだと思いました。我々生殖医療に従事する者は、目の前におられる患者様についてのみでなく、将来生まれてくるであろう子供についても十分な考えをもって医療に従事すべきである、と改めて考えさせられる機会となりました。

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