北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」91―95

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(九十三)

                      (九十三)



 私はメールを返した。

 「人類滅亡のシナリオは、人間だって待ち倦ねているかもしれな

いね。『南斗聖拳の伝承者達』だけは強かに生き残り、来たるべき

世界の終わりを、つまりは新たな世界の始まりを歓喜で迎えるに違

いない。もしかしたら、人類滅亡こそが新しい生物にとっての大い

なる遺産かもしれないね。恐竜が滅んでからでないと人類が誕生し

なかった様にね。戦争でも何でもして、幸いにも自分が生き残った

世界を想像すると、今よりは遥かに思い通りに生きられるんじゃな

いかって思う時がある。たとえ飢えに苦しんでも、何千万人もの人

が殺されたという事実を知ったら、生き残った幸せを感じるのかも

しれない。不謹慎な言い方をすれば、戦後の明るさにはそういう安

堵感があったのかもしれない。ところが今の我々はと言えば、流れ

に取り残された岩場の窪地に追い遣られた魚の様に、ジリジリと干

上がっていく淀みから焦って跳び出そうとする者も出てくるだろう。

すでに我々に残された自由は自殺する事くらいしか無いのかも

しれない。それでも自殺は最も社会を乱す行為だと言って、いずれ

それも禁止されて「自殺する者は極刑に処す」って事に為るかもし

れない。こんな時に、あんたが言うように、原因は何であれ仮に戦

争に為れば、『派遣』兵募集なんて派遣会社が破格の厚遇で徴兵

案内すれば、炊き出しに列を為すホームレス達を簡単に兵士にして

、上手くいけばきれいに片付けることが出来るだろうね。世界中に

溢れた失業者達が、かつては会社だったんろうが、国家の為という

生き甲斐を見い出し、救われた恩に報いんと『命を惜しまず働く』の

を戦争と言うのだろう。つまり、軍需と雇用と治安を産む戦争こそが

これからの成長産業なのだ。

 宇宙はビッグバンが起こって、ノーベル賞を受賞した小林・益川

理論で脚光を浴びた『対称性の破れ』によって、消滅を遁れた素粒

子から誕生した。エネルギーの大爆発で、素粒子と『反』素粒子が

生まれ、僅かの素粒子は法則に従わずに『反』素粒子との消滅から

遁れて偶然にも取り残された。つまり、この世界は法則に反して生

まれた。そして小さな素粒子は大きな宇宙へと拡がった。大きなエ

ネルギーとは小さなエネルギーの集合だ。あんたが言う様に、もし

も世界を変えようとするならば、小さな力から変えなければ為らな

いかもしれない。そして、小さな力にこそ大きな変革の可能性が秘

められているのだろう。世界は対称性の破れという絶対の破綻から

生まれたのだ。だから世界は相対的で不安定なのだ。絶対に背いた

宇宙は膨張を止めるわけにいかない。宇宙は『反』宇宙を求めて彷

徨っているのだ。宇宙の膨張は我々にも変化を強いて時間を進め、

我々もまた立ち止まることが許されない。つまり、過ぎ去った時は

戻すことが出来ない。膨張する宇宙とは、昨日の宇宙と明日の宇宙

は違うということだ。昨日は正しかったからといって明日も正しい

とは限らない。此処で正しいからといって他所でも正しいとは云え

ない。宇宙は相対的だ、たとえ我々がぶれなくても世界がぶれるの

だ。

 我々の不安や孤独は、我々を形成する素粒子の生い立ちに由来す

るのではないか。存在とは摂理への反逆なのだ。もしも神が在らせ

られるとするならば、摂理に抗って存在するこの世界では無く、摂

理に従って消滅した『反』世界に在らせられるに違いない。それっ

て『あの世』のことなのかな?この世界を支配するのは、『反』絶

対であり『反』秩序であり『反』神タイガースなのだ。神は、余り

にも我々の都合で存在していた。我々の秩序とは我々の秩序でしか

なく、それを担保するのもまた我々しか居ない。つまり、我々は我

々によって認め合うしかないのだ。それには、温もりを失って久し

い神の御座へ、『反』神を据えて、存在することの絶望から再び愛

を見直すべきではないだろうか。ニーチェは、愛は憎しみと同じ感

情から生まれるみたいなことを云った。愛こそが憎しみを生むのだ

。それは、誰よりも国を愛すると自認する愛国主義者のほとんどが

、その思いを表す為に決まって隣国を蔑むのを見れば解る。国を愛

する心情が相対的に隣国への憎しみを生むのだ。そもそも国を愛さ

ない国民などいない。つまり、わざわざ語る必要の無いことを説い

ているのだ。国を愛せ!と言われても、愛は意志からは生まれない

。強制された愛は憎しみを生み、憎しみは差別を生む。愛だけでは

どうにもならない現実的な絶望こそがより明るい社会を築くことが

出来るのではないか。神の救済など無い!だからこそ我々は助け合

わねばならない。つまり、神の不在こそが、ペシミズムこそが我々

の救済の拠り所に為るのではないだろうか。恐らく、その絶望こそ

がかつて神を生んだのだろうけどね。」

 だらだらと長いメールを作成していた為に、メールを返送する随分

前からバロックのメールが届いていた。

「ごめん、もう寝る」

                          (つづく)

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