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(九十)
バロックからのメール。
「元気?(赤)木ヶ原の樹海は、赤城山の裾野を絶望に打ちひ
しがれて彷徨っている時に、たまたま『赤城原』という地名を見
つけたんで、富士山の青木ヶ原の樹海の向うを張って俺が名付け
たんや。樹海と呼べる程ではないけど山に行けば樹木はあった。
ゆーさんによると、やっぱり温暖化は明らかで、今年は世界的
な干ばつや異常気象によって、今度は食糧危機がグローバル化す
るやろうと言った。食物連鎖を考えると、機械化と農薬で飛躍的
に農作物の収穫が増え、それによって人間の数も爆発的に増加し
た。その人間が経済のグローバル化によって、それまでの自然の
暮らしを捨て、世界中が近代的な豊かな暮らしを望むようになっ
た。ところが、その豊かさとは循環的な生態系を破壊して異常気
象をもたらし、遂には廻り回って、我々の糧にまで影響を及ぼそ
うとしてる。人は経済危機ではそう易々とは滅ばないけど、食糧
危機が続けば間違いなく滅ぶ。何故なら、幾ら金があっても無い
物は買えんから。我々は経済成長ばかりに気を取られ、その成長
を支えてきた大地は、成長がもたらした異常気象によって循環を
歪め恵みを失い、生命を育めなく為っている。人間は頭上ばかり
を気にして足下の崩壊に気付かずに滅んで行くのやろうか。自然
はそうやって増えすぎた生き物を始末するのかもしれん。恐らく
、その前に人間は不安に耐えられなくなり、正当な権利を主張し
あって戦争を始めるに違いない。争いの背後にはそういった苛立
ちや焦りが存在する。食糧の多くを輸入に頼っている日本にとっ
ては、経済危機よりも更に深刻な世界的な食糧危機こそ危惧する
べきや。そんな訳で、今年は穀物の作付けを大幅に増すつもりや
が、減反補助などで護られた農家は、伝来の田畑が荒地になって
も困らないから、ヨソ者を嫌って借そうとしないんや。そこで、
山の斜面を開いて斜面に畑を造ろうと提案したら、ゆーさんも面
白いと言ってくれた。もし上手いこと行ったら山だらけのこの国
で多少役に立つかもしれん。もちろん段々畑やないから日照時間
や斜面の保水力など問題は山積みやけど今勉強しているとこや。
これを俺達は、『斜面農法』と呼んでいる。何れは『斜面水田』
にも挑戦するつもりやけど。」
(つづく)
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「パソ街!」86―90
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